第二部:一次創作の物書きさんに100の質問

1~10 好きだけれどうまく書けないジャンルや舞台設定はありますか?

1. 主な創作のジャンルは何ですか?(恋愛、SF、ファンタジー、推理、ホラー、冒険…など)

▼主にローファンタジー、現代ドラマ、ヒューマンミステリなどです。カクヨムで公開している作品のジャンルにはSFや童話などもありますが、SFは作品の世界観が未来である必要性が取り立てて存在しない場合は基本的に書きませんし、ジャンルとして設定しません。SFに関しては物語の主軸が未来的なガジェットやアイデアに立脚していたり、または文化的・社会的な背景が現在を起点として構想されているかがそのジャンルとして執筆したり設定する目的となります。童話に関しては読み口が平易なもの、または主人公が非人間、あるいは世界観が子どもでも理解可能なものであるという点で設定します。ですので少し残酷な描写があっても『科学博士のスキゾフレニア』が童話なのはそれが理由になります。また、『青い魔女の通過儀礼』に「大人の児童文学」というタグを付けているのは、世界観が子どもでも理解可能であっても物語展開や登場人物の関係や心情が複雑であるということから付けています。


2. どのような雰囲気の作品が多いですか?(シリアス、コメディ、ダーク…など)

▼基本はシリアス、ときどきコメディです。自分が理解可能な範疇では「ダーク」を書いているという自覚はありません。どうにかコメディを書こうと懸命になると、『ターミナル』のような「相手が神妙な理由が理解できないまま茶化したような言動で場を和ませようとする性格破綻者」のような語り口になってしまいます。文体しだいで作品の雰囲気を操れるような作者になりたいです。


3. 表現媒体は何ですか?(ブログ、サイト、同人誌…など)

▼過去にはブログ、個人サイトなどをやっていましたが、現在は小説家になろう、カクヨムといった小説投稿サイトに落ち着いています。同人誌はアンソロジーの企画などがあった場合にご縁があって何度か参加させていただいた経験がありますが、自らアンソロ企画を立ち上げたりはしませんし、また今後はその機会があっても積極的に参加はしません。同人誌としてまとめて自ら組版して頒布することもありません。ここでの「表現媒体」を「主戦場」とあえて言い換えるならば、万年負け戦ではありますが、小説投稿サイトはまさしく「主戦場」だと思います。読まれなければ意味がないと叫ばれるウェブ小説界隈ではあるものの、まだ見ぬ未来の読者をも見すえて書くならば、異世界転生やステータス系ファンタジーといった流行や特定の括りに縛られず、純文学やハードミステリなどにも広範にひらかれたウェブは主たる表現媒体に容易になりうると考えます。諸外国ではすでにその傾向があるようですが、国内ではまだまだ……と思うところが多いです。


4. 創作するのに得意な(好きな)ジャンルや舞台設定は何ですか? そのジャンルや舞台設定は、読むことにおいても好きですか?

▼得意なジャンルは現実をわずかに屈折した見方で描いたローファンタジー、好きなジャンルは現代ドラマとヒューマンミステリです。これは読むことにおいても同様です。第一部の回答のとおり、1に設定、2に文章、3にキャラクター、4に物語、という順位に準拠すると、ジャンルが自分の好みに与える影響はかなり大きいと思いますが、これも絶対というわけではありません。例えばファンタジーは絵本や童話などでよく手に取りますし、SFやミステリは小説で手に取る場合が多いです。割合で考えると表現方法になにを工夫しているかという点も関係してくるかもしれません。


5. 創作するのに苦手な(嫌いな)ジャンルや舞台設定は何ですか? そのジャンルや舞台設定は、読むことにおいても苦手(嫌い)ですか?

▼恋愛、歴史、異世界転生で主人公最強などは書くのも読むのも苦手です。恋愛に関してはどう考えてもアブノーマルでドロドロのこじれた関係しか書けそうにないですし、小説よりも映画が飽和状態であるというのが大きいです。歴史はNHKや考証系番組の再現VTRなどで楽しんでいます。また書くにあたってはそれこそ史実と照らし合わせて場面を楽しませるというのができませんし、考証不足で読者におかしな誤解を与える可能性を考えるとうかつに手出しできないなと思います。例えば司馬遼太郎や塩野七生さんの歴史小説は、事実その作中で披露した知識が大きな誤謬として作用している節がありますし、FGOといったソーシャルゲームでも実際の文献と異なる書き方で間違った知識が定着してしまうといった事例を見かけたことがあります。いずれにせよ歴史ものは史実の年号としての流れではなく、その具体的内容を取り扱う限り殊更センシティブにならざるを得ず、要らぬ心配が増大するので書くことはないと思います。異世界転生はアニメでじゅうぶんかなあと思っているので積極的に「書く」「読む」という意識が上がってきません。


6. 好きだけれどうまく書けないジャンルや舞台設定はありますか?

▼ガルシア=マルケスの『百年の孤独』や、ミハイル・ブルガーコフ『巨匠とマルガリータ』等に代表されるマジックリアリズムの手法です。よりわかりやすいところで例えるなら森見登美彦さんの『四畳半神話大系』や『夜は短し歩けよ乙女』などが当たります。つまり、「日常のなかで不可思議な超常現象が起こるけども、登場人物たちがそれを当然のこととして物語が進行する」たぐいの設定の作品が書きたいのですが、なかなかうまくいきません。雨が降る理由も太陽が眩しい理由も子どものころはそれらは理解不可能な超常現象に等しいのに、なぜだか受け容れてそれが当然と思って生活していますよね。あの感覚が想像上の超常現象にも同様に感じられればもっと書けそうなのですが、大人になって凝り固まった先入観が強いと難しいようです。『共犯者の死せる影 -Ты- 』で一部そのような手法を試してみましたが、かなり無理やりだったので歪な読み心地になっています。また挑戦したいです。


7. 作品は長編、短編、掌編など、どれが多いですか? また、どれが書きやすいですか?(何を以て長編・短編とするかの判断はお任せします。)

▼やはり短編・掌編が多いです。カクヨムに公開していないものも含めれば無数にあります。長編もカクヨムで公開していないものを含めると6作あります。書きやすいのは1万字~4万字程度の短編になりますが、書こうという意志が強いのは長編です。


8. 番外編や後日談を作成することはありますか? また、続編を書いたり、シリーズ化したりしている作品はありますか?

▼よほど気が向かない限り番外編や後日談といった話を書くことはありません。この場合おそらくその話はショートショートの形式になると思うのですが、ショートショートを書いたことがないというのが一番の理由です。続編やシリーズものに関しては完結済の『青い魔女の通過儀礼』三部作を筆頭に、『共犯者の死せる影 -Ты- 』で世界観を共有した別の作品を執筆する予定です。10万字程度でひとつの世界や物語を過不足なく書ききれる人はすごいなあといつも思っています。どうしても展開や文字数がかさんでしまいがちになります。


9. まったくの新作(既存作品の続編やシリーズではない作品)を作成する際の、手順を教えてください。ネタやテーマ、キャラ設定、 舞台設定、ストーリー(あらすじ)などを、どのような順番で作成しますか?

▼『カース・メイカー』を書いたときの流れがいちばんわかりやすいと思ったのでこれを用いて説明すると、まず現実から「if」を想像するかたちでネタを膨らませます。「テーマが人工知能というなら舞台は未来だな」「人工知能を取り巻く状況はどうなっているだろう」「今でも法律が追いついていないけど、未来で人工知能を対象とした法律ができるならどんなものがあるか」「人工知能を人のサイズに押し込めるのは無理だな」「IT企業の巨大サーバーで管理しよう」といったように、まずはどんどん物語の外堀(=登場人物たちを取り巻く状況)を埋めていくかたちで世界観を固定化します。その上で作品の世界観における「問い」を明らかにします。『カース・メイカー』本編をお読みいただくとその「問い」はストレートかつあからさまに描かれているのですが、この作品での場合は「権利の所在」です。次にこの「問い」をいかに作中で屹立させるか、その「解」となるストーリーラインを構築し登場人物を構成します。すなわち、裁判での証言という作風において一連の「父イサ」と「息子アル」の関係性を説明する流れで登場人物たちの人となりを決定しています。ここは逆転する可能性や同時並行で進めることもあります。ここまで来たら満を持して執筆開始になります。


10. 既存作品の続編やシリーズを作成する際は、新作を作成する場合と手順は異なりますか? 異なる場合は、その手順を教えてください。

▼先の質問で完全新規作品の手順については、①世界観の固定化、②「問い」の明確化、③「解」となるストーリーラインの構築、④登場人物の構成、⑤執筆という流れでしたが、既存作品やシリーズ作品に関しては、世界観が既に固定化されているので②「問い」の明確化から始めます。

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