双子座の苦悩
嬾隗
血の繋がり
血の繋がり、というものは非常に難儀なものである。それは切っても切れない強固なものであり、ある人はそれを疎ましく思い、またある人はそれを嬉しく思う。僕の場合は前者であり、後者でもある。遺伝子なんてなければ、なんて思ったりもした。でも、それは嫌だな、とも思った。僕の愛する人との繋がりが絶たれてしまうから。
「
「んー、ちょっとね」
今、僕に話しかけてきたのは、妹の
「また、そんなこと考えてるの?」
「うん、まあ、ね」
壱には僕の考えていることなんて筒抜けだ。なぜなら――
「あーあ、なんで双子なんかにうまれちゃうかなー。ぜんぶ、ぜーんぶ、ままならないよ」
「……本当にな」
そう、僕たちは双子である。それも、一卵性双生児である。つまり、一つの卵から、二つの命が誕生したのである。卵が同じということは、細胞レベルで一致しているのだ。顔も同じ、声も同じ、身長も同じ。互いに何が欲しいか、どんな遊びをしたいか、何を考えているか、そして――誰が好きかもわかっている。何もかも、理解している。だからこそ。
「普通の恋愛、にはならないんだよねえ……」
仕方がないことだと頭の中では理解していても、体はどうしようもない。今も壱の手を握っている。もちろん、指をしっかり絡めている。もう片方の手は壱のサラサラな髪を撫でている。いつ撫でても思うが、双子でも違うこともある。やはり、そこは男性と女性の違いだろう。壱の肩より少し下まで伸びた黒髪は、指が引っかかることがなく、触っていて気持ちがいい。そこから下に目を向けると、女性の象徴である膨らみ。平均より少し大きく、同じクラスの男子の視線が集まってしまうのも無理はないだろう。女性として、僕にとってはこれ以上ない体である。
壱の握っている手と反対の手は、僕の頬をすりすりしている。男なんて、ちゃんとスキンケアしていなければ脂ぎっているが、壱と同じ化粧水を使っているため、そこらの男子よりは肌質が良い。肌の性質まで同じなのだから、双子というものは本当に不思議である。
ふと、壱が小さく笑った。
「ふふ、もう、こんなこと考えていてもしょうがないよ。今はお互いのことだけ考えて」
「そうだな」
ぎゅぅっ、と壱を抱きしめる。体が密着すると、感情が溢れて止まらなくなる。目を合わせると、唇をこちらに突き出してくる。そこに、自分のものを重ねる。束の間の、幸福。顔を離すと、二人で笑い合う。
「「今日も二人で乗り切ろう!」」
なんてことない日常の中に、異常な僕たちの世界はある。
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