第3話、ヒトガタ

「名前をつけてください」


「ノルン、今までの名前は?」


「エルダです」


「じゃ、エルダでいいね」


「はい」


「よし、エルダ、俺のヘッドセットから情報を引き出してリンクさせてくれ。

それと、ノルンのヘッドセットも同じようにして」


「了解しました。

…………三者同期が完了しました」


「よし、次は……

起動前のデータ領域を復元できるかい?」


「私の情報は復元できませんが、ハウスユニットにデータ領域がありますので、そこからデータを引き出すことは可能です」


「じゃあ最初に、食料はどうなってる?」


「ホムンクルス用栄養チューブに、150年分の貯えがあります」


「じゃあ、ノルンはホムンクルスというわけか?」


「ノルンの出生に関する情報はありません」


「これまで、ノルンはその栄養チューブから栄養を補給されて成長してきたのか」


「はい」


「ノルンは、栄養チューブ以外の食事でも生存は可能なのか?」


「問題ありません」


「ノルンは何の目的でここで生活してたんだ」


「データがありません、回答不能です」


「ここはモニターされているのか」


「データがありません、回答不能です」


「エルダは人間の世話をすることも可能なのか」


「命令があれば可能です」


「ふう、結局のところ、何もわからないということは判明した。

ノルンはこれからどうする?」


「ジャギーと一緒にいる」


「俺と一緒か……まあ、なるようになるか」




それから、俺たちは町へ食料の買出しに出かけた。


肉は自分たちで狩るにしても、麦や葉物は買わざるを得ない。


「初めて街にきました」


「あんまりキョロキョロしてるとカモだと思われるから、程々にな」


「はいっ」


「おっちゃん、麦を二袋と青物一把」


「はいよ22ガル」


「そうだ、スラリンに人型を買って、擬態させてみようかな」


「スラリンって、何者なんですか?」


「うん?スライムだよ」


「学習機能の知識では、スライムってもっと小さくてフニフニしてると思ったんですけど」


「でもな、鑑定でスライムって表示されるし、まあ、色んな種類がいるんじゃないのか」


「そうなんですか……」


「おっ、ここだガラクタ屋。

おっちゃん、動かない人型ないかな」


「ああん、人型だと……

なら一万だな」


「一万は高いだろ5000」


「ばか言うなよ、CPUも残ってるし、バッテリーさえ取り換えれば稼働すんだぜ

9500だな」


「売れてねえってことは、動くか疑わしいってことだろ、5500」


結局7000ガルで購入した。

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