第125話 第四章 『カノジョ宣言して、なにが悪い!』(43)
「いや、正直なかなかうまくいかなくてな」
先ほどの失態を見せたくなかったので、魔術を発動して料理前の状態に戻したことを話した。
「あちゃー、やっぱ苦戦するよな・・・それにしても魔術で元に戻すとは、すげぇというかなんというか」
「・・・・」
「大丈夫、あまり大きなことは言えないが、お前が家事を学んでいくうえでどんな失敗をしようと呆れることはないし、腹くくってサポートするつもりだ」
ハチは、こちらの気持ちを見透かしたかのように・・・そっと言う。
「・・・ありがとう。なんだか、気持ちが落ち着いてきた」
「さ、俺が付いているから、料理の練習を再開しよう」
ハチよ、ありがとう。
・・・・
さて、練習再開だ。
先ほどの失敗点を考慮しつつ、野菜を刻み、フライパンに油を注いで・・・、
「そう、そこで水をしっかり切っておかないと、炒めるときにパチパチ跳ねて、下手すると火傷しちまう。あとコイツは少し薄めに切らないと、火が通りにくいかもな」
「なるほど」
・・・こんな調子で、何品かの調理を進めていく。
「なあ、今日のパスタソース・・・いきなり自作で行くのか? 缶詰のほうが確実じゃないか?」
「それはそうだが・・・いつも缶詰では、そなたの好みにマッチするとは限らん。いろいろな味付けに対応するためにも、自作を学習したいのだ」
などと格好いいことを言ってしまったが・・・案の定、失敗の連続だ。
「ハチ、貴重な食材を申し訳ない。大丈夫、責任をもって全部妾がいただくので」
彼は笑う。
「だから、今後もなるべく自作でやらせてほしい・・・わがままなのは承知の上なのだが・・・」
「さすがファラオだな」
「どういう意味だ?」
「いや・・・まず、挑戦ありき。挑戦がなければ物事は進まない。そのうえで、失敗の責任はとる・・・これこそ、為政者の資質なんだろう? 心配するな、家事はどれも生きていくうえで大事なスキルだから、ちゃんと身につけるまで徹底的にやろう・・・俺も初心者のころ、失敗した不味い飯を食い尽くしたんで慣れている。ちゃーんと失敗作を食べるのもつきあうから大丈夫だ」
にやりと笑い、妾の肩をポンポンと叩く。
ハチ・・・。
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