第74話 第三章 『護衛するのだぞ? 同居生活は当然であろう!』(33)

 セクメトナーメンは冷静に分析すると、それを聞いたクレオと瞬間眼を見合わせ、なにか口元で呟いた。

 おそらく魔術の詠唱だ。


 ほんの一瞬で、もちろん内容は聞き取れない。

 俺の神秘学の研究では、詠唱は早ければ早いほど、高位の魔術師であることを示している。

 一瞬にしてあらゆる魔術式を繰り出し、敵に先制することが可能だからだ。


 その意味では、この二人は・・・間違いなく最高位に違いない。


 彼女たちが詠唱した直後、俺を引く黒フードの姿が現れた。

 俺はまだぐいぐい引かれていくが、すかさずクレオが黒フードの腕を切り落とす!

 そして、先ほどと同様に胴体もトドメと言わんばかりに、さらに切り裂きバラバラの肉片に変えていく。

 そのクレオの背後から、セクメトナーメンが反対側に躍り出て、別の黒フードを切り刻む。

 ふたりがテンポを合わせ、敵から死角を作らないように、互いの背面から敵を襲っている感じだ。

 ふたりが詠唱を続けると、残りの黒フードも次々と可視化されていく。


 俺はこんな時なのに、二人の闘うさまが・・・あたかも舞のように見えてしまい・・・美しいとさえ感じた。

 そういえば、最初にクレオに助けられた時も、彼女は蝶のように美しく舞っていた。

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