第70話 第三章 『護衛するのだぞ? 同居生活は当然であろう!』(29)

「それより、クレオ」

「ん?」

「家事など覚えなくとも、王宮の時と同じように・・・すべてわたしがやってあげるから・・・心配しないで、ね?」

 うーむ、いつものセクメトらしく、甲斐甲斐しくしてくれるのはありがたい・・・のだが、少し過保護ではないだろうか?

「でもなあ、この時代ではもはやファラオも侍従長もないだろう? 妾も自ら生活する力をつけないとな」


 あれ? セクメトが悲しげな表情になっている・・・なぜだ?

 ここは弟子が成長を見せようとしているワケだから、よろこぶところじゃないの?

 美味しそうに、パンは頬張っているが。

「クレオ・・・もしかして、わたしはもう不要なの?」

 食べながら喋らないほうがいいぞ、セクメト。

「いやいや! そうじゃない! そういうのとは違うだろ?」

 ・・・そこへ唐突にハチが横槍を入れてくる。

「いや、出会った時から二人を見ているけど、その・・・セクメトナーメンは『クレオ大好き』が全開なんだなぁ」

 なんだか、困ったように笑っている。

 うーむ、やはりバレていたか。

 というより、そりゃ見てれば一目瞭然って奴なんだろうな。

 ホント、セクメトは侍従長としても騎士団員としても、超が付くほど有能なのだが・・・妾への執着が凄いからな・・・。

 幼少期から姉妹のように育った中なので、こうなったのかな?

 しかし、三人でわあわあ騒ぎながら食べていると、本当に楽しいものだな。

 こういう楽しさは、いつ以来だろう?

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