第39話 第二章 『さあキスをしよう! 話はそれからだ』(30)
「ようやく、妾が真のクレオパトラ七世だと分かったようで、なによりだ・・・と、そなた、大丈夫か? 顔色が優れぬようだが・・・」
クレオパトラは、心配そうに俺を覗き込む。
気が付くと、俺は椅子にへたり込み、沈痛な面持ちを晒していたようだ。
いまさらながら、『紀元前五十年からタイムリープしてきた、魔術師クレオパトラ七世』という事実(と俺は確信している)に向き合うと・・・いろいろなこと(たとえば身に着けている装飾品や衣装が高価な点)に説明がついてスッキリするが、
それでも正直・・・消化しきれないぜ・・・。
「大丈夫か?」
「・・・ああ、なんとかな」
だが、言葉とは裏腹に俺は困り果てている。
本物ということであれば、もちろん行くアテは無いだろうし、そもそも国籍すら持っていないので現代では『存在していない人間』扱いだ。
もちろん現地警察に保護を頼んでも、相手にしてくれないし、そもそも彼らに話したところで信じてもらえるワケがない!
せいぜい精神病棟で、隔離されちまうのがオチってもんだ。
いろんなことが、アタマの中をぐるぐる巡っている。
クレオパトラは、コーヒーのおかわりを飲み干した後、部屋の中をいろいろ興味深そうに眺めて回っている。
昨晩、現代テクノロジーについていろいろ話したので、部屋の中にある家電とか、いろんなものに一層の興味を覚えているのだろう。
・・・困った。
いまからでも彼女たちを追い出せば、この悩みから解放されるだろうが・・・そんなことはとても出来ない。
命の恩人なのだから。
それに、場所も時代さえも違うところにいきなりやって来て、頼れる人間も一人もいない・・・。
普通なら取り乱してもおかしくないのだけれど・・・彼女たちはいっさい取り乱したりしない・・・本当にたいしたモンだ。
そんな彼女たちを、純粋に助けたいとも思う。
それに・・・俺を狙った不気味な連中。
とても俺だけで奴らを撃退出来っこない、こちらとしても助けてもらいたいくらいだ。
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