第14話 第二章 『さあキスをしよう! 話はそれからだ』(5)
そのなかでも特に神殿の丘というものは、中心的な役割を果たしているので、何度でも足を運びたいくらいだ。
まあ、これから神殿の丘まで行って戻ってきたって、時間的には何の問題もない。むしろ再度集中力をアップすることができるだろう。
最近はおおむね毎日通って、神殿の丘を中心とした調査を始めている。
キャンパスを出ると、エルサレム旧市街の中心部を抜けていく。
そろそろ夕方なのだが、まだかなり日差しも強く暑い。
吹いてくる風も砂の匂いを含んでいて、いかにも中東っていう風情だが、俺は嫌いじゃない。
旧市街は、古代から続く煉瓦積みの家屋や中東戦争以前からの古いビルが多く、いかにも歴史を感じさせる。
メインストリートには人が多く、両脇の露店やビルに入る店舗は飲食する人で賑わう。
俺はその人込みを抜けながら、神殿の丘の麓にある門を潜り抜け、神殿を見上げる。
神殿は二重の城壁に囲まれており、今潜った門は外壁にある。
外壁は巨大な石が高く積み上げられており、ここから内側は外界とは異なる場所である・・・ということを主張している。
門の内側から内壁に至るところまでは、巡礼者や観光客でごった返しているが、そこかしこにイスラエル国防軍の軍人が治安維持のため、自動小銃を抱えて目を光らせている。
物騒な光景なのだが、二千年前のイエスの時代から、ここは中東屈指の火薬庫なのだ。まあ、三大宗教が聖地として重なり合っているので無理もない。
さらに、内壁のほうに向かって歩いていく。
その時、
十メートルほど向こうに、漆黒のフードを被った陰鬱な感じの人影が見えた。
フードの奥にある顔は見えないし、不気味な感じがするだけだったんだが、
俺の本能か何かが危険を察知して、咄嗟に反対方向に走った。
特に何かされたわけではない。
だが、『されてからでは遅い』気がした!
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