第2話
「今日は飲んでいいかな。泣きたい。」
ある新宿の夜、かりそめで付き合っていた女性から言われた。
小さい頃からのトラウマ、生まれながらの病気、秘密をとうとうと語り出した。
自分の辛さ、コンプレックス、不安すべてを理解して受け入れて欲しいという気持ちがよく伝わってきた。
彼女は自分とよく似ていた。
どうしようもない傷を抱えていることも、恋愛相手に最初から自分の弱みを丸ごと受け入れてもらおうなんて、そんなことをしてしまう自己中心さも似ていた。
そういうことをしていいのは、相手に多くを与えて、心を許してもらって初めてできることなのに。
彼女は一方的に語って酒をあおりながら、泣き出した。
そんなのオナニープレイじゃないか。
男も女も自分よりも「格上」をつかまえて幸せになりたいと思っている。
だから、心の深い部分のコンプレックや、辛い過去を最初から相手に言って、理解してもらおうなんてできないんだよ。
そんな欠陥商品を買いたいなんて思わないじゃないか。
ひどい言い方をしたら、勝ち組同士は結ばれるけど、負け組は結ばれないんだ。自分が負け組であることを相手に知られてはいけない。
勝ち組と負け組が、くっつくときがあるなら、それはほとんどが勝ち組に下心があるときだけだ。
残酷な世界だと思った。
〜〜〜
彼女は、俺からみてもひどい過去を抱えていた。
せっかく医学部に進学したのに、医師免許をとれずに中退していた。
性格にかわいげがあれば、まだ救われただろう。
でも俺とよく似ていて自己中な性格だった。
俺たちって本当に救いがない存在だよな。そんなこと言えるわけもなく、別れた。
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