異世界転生したSAVEポイントの擬人化の話
@akuamu717
プロローグ
その日、一人の新人冒険者が死んだ、それ以外は何も不思議の無い日だった。
遠くの裏山には変わらず群れから離れたドラゴンが住み着いておりその討伐依頼は紙が黄ばんでいる程に放置されているし
市場には売れ残りの半分ほどに折れた直剣達が九割引きのセールをされているし、
逆にショーケースに飾られた騎士甲冑には新人達が張り付きながら声をギリギリと唸っている
表通りの娼婦達は毎日変わらず何もしらない無知な者を食い物にしながら次の得物を選んでいるが
逆に裏通りには全裸にひん剥かれた食い者達が満足気な顔をしながら山になって警邏の者に引きずられていく
新人冒険者の街と呼ばれているニューの街は変わらない様子だった、
違う所と言えば一つの身、ただ一人だけの新しい冒険者がその日冒険者ギルドと呼ばれる組織の扉を叩き開いた
「いってぇ!木の屑刺さったんだが!?」
カッコつけで扉をグーパンで開いたのだろう男の手には木屑が数本ぶっ刺さっており
想像の余地がある者が見ればしかめっ面をするに堪えない痛さを夢想させるだろう、実際血だらけとは言えないが血は垂れている
新人冒険者とは大体がこんなものだ、最初のイメージさえキャッチ出来ればあとはとんとん拍子に進んでいく、と冒険者以外の者達には思われているが実際はそうではない
ある程度のボランティア精神と命をブラックジャックにポーカーにベット出来る狂気性か最後に残った手立てという追い詰められた必要性がある者達
表で言えばドラゴン種族を殺す力と技術、そして勇気を持つ蛮勇が人の形を取った英雄…が数は少ないが存在する場所だが…
裏で言ってしまえば人に似た形の化物を殺し続けられる狂人が大半の冒険者とも言える者達だろう、大手宗教の神殿に所在する精神神官たちが休まる日はない。
とあるベテラン冒険者は言った『冒険者に一番必要なのは精神神官だ、武器でも防具でもないし回復薬じゃ精神は癒せないからな!』
実際その通りなのだろう、一昔前には冒険者という職業が殺人鬼と同じ職業と思われていた時代もあったのだ、先代ギルド長が神殿の大主教と協力を取り次がなければ今も同じだっただろう
その裏役の偉大さを想起させるためか冒険者ギルドの目の前には先代のギルド長と今も生きる大主教が握手している銅像がある
無論態度を見るにこの職業はそんな銅像と偉業なぞ知らず知らずのうちにスルーしているだろう、銅像であろうとベテランを敬う事を知らぬ獣の様な新人冒険者は大体無法者か精神が未成年か
もしくは貴族の三男以下の存在か未成年で村を焼かれた悲劇の存在か…確実なのは人間種という事だろう、だが冒険者に貴賎なく誰もが狂人の第一歩を始めるのだ
「冒険者ギルドっていうのは金がねぇのか!?なんだあの変に脆い扉!?」
受付嬢に突っかかる部分でもう新人冒険者ポイントマイナス百点って所だろうか?主人公にしては名も知らぬし言葉使いが粗雑すぎるのではなかろうか、だが主人公である。
だが仕方なかろう、彼とていきりながら扉を開けようとしたら扉の一部分の身を叩き壊してしまい木屑がクリティカルヒットしたのだ、八つ当たりもしたくなるものだろう
そしてそういう本人の性質を見極めるのも冒険者ギルドの受付嬢と言うものだ、絶賛人手不足のブラック企業でありながら全員が毎日家から出て勤めに徹している、
「そりゃ貴方の様な馬鹿の技量や力を見極めるための罠ですので、まぁちゃんと扉を開ける礼儀がある方が新人冒険者としての評価は高いですがね」
「畜生納得のいく説明だ!壊れやすいし壊す奴がいるから複合装甲みたいに木の板を適当に張り付けてるわけか!バァーカ!いてぇわ!」
「力あり技量なし度胸あり考える頭ありの馬鹿ですか、お水でも飲んで頭でも冷やしたらどうです?それとも頭全部水に突っ込みますか、それならこの下水ネズミ退治がオススメですがその前に登録ですね」
「新人冒険者に対するあんたは冷静沈着なベテラン受付嬢ってところか?」
「残念ながら私は有能な新人です。」
受付嬢がスラスラと紙に書ける場所が数百か所あるであろう場所の殆どを埋めていく、力、技、精神、速さや体力などの欄を基本にしながらも細かくジャンル分けされたソレ
その数は膨大であり中には所属や国や生誕地という情報もあったが有能な新人と言うのは一目見ただけで主人公の全てを理解したらしい
有能な新人すぎるだろうと言える、見ただけで本人の情報全てを理解するなど本来であればあり得ない、だがここはそういうのがあり得る世界線なのだろうか?
いや、違うな、理論だけで言えばとある有名な探偵は服についた汚れの位置と着流しの仕方のみで本人の名前まで言い立てたというし、目の前の有能な新人もそういう技術を持つ人間なだけだろう
だってさっきまでいた街の掲示板に鑑定魔法研究中!って書いてあったし、そういう魔法が使ええるなら既にそういう機関に言っているだろう
目の前の受付嬢だけは敵に回してはならないなと考えているところで、ふとテーブルを見るとペンが机に置かれており
さてこれはプロローグでありとりあえずは楽しい場面まで時を飛ばそうか
とある山の中央にて奇妙な双方が対決していた、仮にとはいえ双方とは言ったモノの片と片はあまりに姿かたちが違いすぎているだろう
片方は背中に数えるのも面倒な程に折れた直剣を生やされ片目を潰され片腕をもぎ取られたドラゴン族であり
もう片方は盗んだ当時はあらゆる攻撃を跳ね返すと言われていた騎士甲冑に身を包んでいたが、現在のその鎧は見事な半壊を呈しており
肩当ては粉砕され脇の鎖帷子はひどく血に濡れておりフルフェイスであったソレは既に見事な三本戦の穴が出来ていた
おっと飛ばし過ぎた
おまけ
有能な新人「そういえばあなたの名前はなんて書けばよろしいので?」
主人公「じゃあ適当にアザトットサヴェージで頼むわ」
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