第3話 おまじない



春の暖かさに開花する色鮮やかな植物の恵みを少し切り取って大切なあの人にも春の訪れを知らせたいんです



あんずの花や

さくらの花や

すみれの花



花切りバサミを持つ俺を抑える小さな手



「お花さんが可愛そうだから切らないで」

心の優しいあの子は言いました




君が大人になり

いつか父親になった時に役立つだろうか?


腰の高さにある頭を撫でて話した

パパの爺ちゃんから教えてもらったおまじない



一つ切ったら

二つ植えましょう



って言うと許してくれる

花や樹木を切る時には約束をするのさ





もう随分と前の話


おまじないの効果なんか知らない

きっと

気持ちの問題

その行動を後ろから押してもらえる小さな力


 



見る必要のない携帯電話に残るメール


さくらちゃんにすみれちゃん


「お父さん!さくらちゃんって誰ですか!」

「すみれちゃんって誰ですか!」

「もうしないって約束したじゃないですか!!」


なんてお嫁を怒らせてしまったときのおまじない





一つ切ったら

二つ植えましょう




君のひい爺ちゃんが教えてくれた

いつか君が父親になった時に・・・・


 

 

おまじないの効果なんて知らない


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