烏鵲堂日和―事件簿こぼれ話・短編集

神崎あきら

烏鵲堂ー裏ー事件簿

元・極道の女ーある女の独白

あのひは あめがふっていた

たくさんのみずに うれしくなって どてを あがっていった

きがつけば かたいどうろの うえだった


どうやって かえればいいのか ほうがくを みうしなっていた

あかるいひかりが みえて おおきなまるいものが すぐそばを とおりぬけていく

わたしは こわくて うごけなかった


とつぜん からだが ちゅうにういた

ちいさなひでおみさんが わたしを ひろいあげてくれた

わたしたちは それから ずっといっしょ


いつからか 明美 とよばれるようになった

ひでおみさんが つけてくれた なまえ

わたしは そのひから 明美 になった




さむいひが つづいた

ひでおみさんは わたしのすみかのみずを いつも きれいにしてくれる

でも さいきん いそがしいのか あまりおはなしを してくれない


わたしは さみしくなって すみかを ぬけだした

そして ひでおみさんの べっどのしたで ねむってしまった


「明美、お前は一体どこに行ったというのだ」


ひでおみさんが わたしをさがしている

とても かなしそう

わたしは でるに でられなくなった


ひでおみさんの へやに めずらしく おきゃくさんが きた

きんいろのかみの せのたかいひと

ひでおみさんは そのひとが にがてみたい


「英臣、私なら君にこんな悲しい思いはさせない。君を捨てた明美のことなど忘れろ」


わたしのせいで ひでおみさんと きんいろのかみのひとが けんかをしている

わたしは ここにいる

ひでおみさんを たすけないと

ゆうきをだして べっどのしたから はいだした


きゅうに からだが ういた

めのまえに こわいかおの ひとがいる

わたしは くびをひっこめた

てあしを じたばた


「食材かこいつは」


こわいひとに なべにいれられちゃう 

たすけて ひでおみさん


「明美、戻ってきてくれたんだな」


ひでおみさんが わたしをこわいひとから たすけてくれた

きれいな すいそうに わたしはもどされた


そろそろ ながい ねむりのじかん 

おやすみなさい ひでおみさん

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