これより、地球侵攻を開始する。
朝乃雨音
第1話”ディザスター”
「このゲームも随分人が減ったよなぁ」
パソコンのファン音が静かに響く部屋で、俺はヘッドセットに付いているマイクを使ってモニターの先にいる仲間に向かってボイスチャットで話をしていた。
『まあサービス開始からもう八年ほど立つしな。しょーがないでしょ』
画面にはオンラインゲーム《ディザスター》が映し出されており、通話の相手は昔から一緒にこのゲームをプレイしていた〈あいろん〉というハンドルネームのフレンドだった。
「同接三百万を超えてた覇権ゲーだったのに今じゃ廃課金者しか残ってねぇし、ギルドバトルも同じ顔ばっかりだ」
『つまんねぇか?』
「あぁつまんねぇ。でもこのギルドでギルドランクトップの
『言ってもお前は初期の頃に
「あれはギルマスとかの初期メンが強すぎただけだって。俺は何もしてなかったのに気付いたら最強のギルドになってたからな。俺は俺の作ったギルドでそれを達成したい訳よ。」
『なるほどねぇ』
「まあそれはさておき、これからどうする? ギルメン誘ってマラソンでもするか?」
俺は言いながら大きく伸びをすると同時に、少しばかり過去を思い返していた。18歳の時にこのゲームを初めて現在もう26歳だ。大学へ行きながらバイトで溜めた金も、就職してからの給料も全部このゲームに注ぎ込んだ結果、大学の友達と作ったこのギルドを全国ランク5位まで上げる事が出来たが、逆に言えばそれだけ金と時間を注ぎ込んでも3強に勝つ事は出来なかった。
「あームカつく」
マイクをオフにして一人呟く。このゲームは言ってみれば俺の全てであり、もしもこのゲームのサービスが終了してしまったら俺には何もなくなってしまう。だからこそ一番になりたいと思い全てを尽くしたが、4位の白うさぎはともかく上三つには歯も立たなかった。
悔しいがレベルが違う。
俺がそう思ったその時だった。急に地面が揺れたのである。まるで嵐に巻き込まれた船の上にでもいるかのような激しい揺れは徐々に勢いを増し、慌ててヘッドセットを外し立ち上がった俺はその場で尻餅をついた。
「やばいやばいやばい!?」
パニックになった頭で事態に対しての対応を考えるが口から頭の悪そうな言葉が出てくるばかりで何も思いつかない。唯一分かるのは大地震が起きていると言う事だけであった。
そしてついに天井が崩れ落ちて来る。
あー俺死んだかも。
そう思った次の瞬間、俺の意識は途絶えたのだった。
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