真逆の世界に命を捧げて
@adjtpjmx1334
第1話
「すみません…。お水を少し分けていただけませんか?」
僕は驚いた。それは、その男の子が家に来たからじゃない。全身を覆うぐらいの真っ黒な服を着ていたからだ。この国シテン国では、服屋さんは全部白い服だけしか売っていないし、家も車も全部真っ白だ。だから、最初見た時はでっかい鴉が来たのかと思った。
怖かったけど、その黒い服から時々見える腕がとても青白くて細長くてかわいそうだ。
僕はそんなことを思いながらお水と、あまりもののパンを1つ用意した。
「これで足りる?君、ご飯食べてないみたいだし!!おうちは⁇帰れる⁇」
「…ありがとう。……クアマ国はどっち?」
「クアマ国⁇うーんたしかあっちだよ!気をつけてね!!」
男の子が去っていくのを見送った後、僕ははじめての人助けにとても嬉しくなった。このことをお母さんとお父さんに褒めてもらおう。両親の帰りがいつもより長く感じた。
なのに…どうして…
「あんた!どうしてクアマ人に食べ物をあげたんだ⁈どうして親切にしてやったんだ⁈」
「デル、お前は自分が何をしたのかわかっているのか⁈重大な罪を犯したんだぞ‼︎この悪党め!!出て行け!!」
自然と涙が溢れていた。
僕は悔しくて家を出た。
ただひたすら遠くに遠くに走った。
…褒めて欲しかった。
どのくらい走ったのだろうか。あたりはすっかり暗くなっていた。気分のせいだろうか。いつもよりいっそう暗く感じるのは。もう家には帰りたくない、今日はもうここでいいや。
草むらに横たわり朝を待った。
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