迷宮探索 7

 俺達の目の前に立ちふさがるように現れたモンスター。


 全体像はサボテンに近い形。だが、俺達の二倍ほどの大きさ。


 体中には針のようなとげを持っている。


 手にはサボテンとは違う別のツタを持っておりそこには針とは違うバラのようなとげが付いている。


 頭の上にはバラのような花が咲いている。


 全体的に黒く染まった緑色で少し不気味に見える。


「全員止まれ!」


 テイルの大声で全員が急停止する。


 全員の表情が絶望へと染まる。


「レナにテイルさん皆の事お願いしてもいいですか?」


 この相手なら目的も達成可能。


 今回の俺達の目的はこの世界でどこまで元の世界での力を使えるのかどうか、それを試すにはうってつけの相手である。


「何を言っているんだ! こいつは中級層で出てくるモンスターだ! まだ初心者の君たちには無理だ!」


 予測通りの反応。


「テイルさん! 言いましたよね。この階層は俺の判断に任せると!」


「ああ」


「なら、任せてください」


「分かった。だが、俺が危ないと判断したら助けに入るからな」


「分かりました」


 俺とテイルさんとの会話を待ってくれるほどモンスターは優しくない。俺が正面に向き直るとそこにはモンスターの手から伸びるツルが俺の目の前まで来ていた。それをギリギリのタイミングで避ける。


「ふ~~~」


 後ろから安堵のため息が聞こえた。


 さてどうするか?


 力加減を間違えれば一撃でやれる。だがそれだと意味がない。


「二パーかな」


 能力にかなりの制限を掛けて挑むことにする。


 宝物庫から剣を取り出す。


 相手は体中にとげがあり、接近戦より遠距離戦が有利に見える。


 俺が踏み出して正面から攻めようとした時、


「そいつに接近戦はやめておけ」


 後ろからテイルさんの声が飛んできた。


 だがそんな言葉気にしない。


 俺は真っすぐにモンスターへと向かう。


 だがそんな俺を待つほどモンスターも甘くはない。俺に目掛けて体のとげを飛ばして来て。


 それに合わせて、


『ウェント』


 正面に風魔法で風を起こし、とげを吹き飛ばす。


 だが、モンスターからしたらそんな事お構いなし。連続でとげを飛ばす攻撃を行ってくるので、こちらも風魔法で吹き飛ばしながら距離を縮めていく。


 だが、剣の届く距離まで近づいた所で、てから生えているツルによる攻撃が俺目掛けて飛んでくる。


 それを剣で防い具と、正面よりとげを飛ばしてくる。


 これは危ないと背後で見守っている他のメンバー達は思った。だが一人レナだけは違う。


『イグニス』


『ウェント』


 風魔法と火魔法を放つ。風魔法はとげを吹き飛ばすために、火魔法はモンスターの両肩元を狙って放つことでツルを引かせる。


 俺はその隙をつき、左手を斬り落とした。


 ここまでは想定通りに戦闘が進んでいる。


 片手を切り落とされたことで怒り始めると、体の色が黒く染まった緑色から真っ赤な色へと変わっていく。


 だがそんなことお構いなし。


『フムスバインド』


 土魔法を使いモンスターのあしを拘束し動きを止める。


『アクアショット』


 手で銃の形を作り、水魔法で指先より小さな水の弾を数発モンスターに向かって放つ。


 だが効き目は薄い。


 さすがに植物系のモンスターに対して水属性は相性が良くないのはどこの世界でも変わらないようである。


 だがこれでこの世界でも問題なく基本四属性の魔法が使えることは分かった。


 俺がこの世界で確認したかったことの半分は達成された。


 後一つ、これが確認できれば今回の目的は達成と言えよう。


 俺は、


『アーカイブ』


 このスキルは、魔力などを消耗することなく使用することが出来る俺専用スキル。


 元の世界でも俺もくは現神のトップしか使えず、使い手次第でのその価値が変わってくる。


 今、俺の目の前には数個のモニターが表示されている状態になっている。一つには現在のモンスターの姿が映し出され、他のモニターには俺とモンスターと戦闘が最初から流されており、相手のデーター分析を行っている。


 このモニターに映し出される映像に関しては、好きに変更可能。数も好きな数表示させることが出来る。


 そして、このスキルを使う上で最も必要なのは、使い手の情報処理能力になってくる。


 目の前に敵の情報、それに自分の今の状態、これら全て把握し、敵の弱点から行動パターン、攻撃前の予備動作の微妙な違いまでを情報として得ることができる。


 俺にとってはこの世界でこのスキルが使えるか使えないかで全体の戦力として雲泥の差が生じる。


 そして、アーカイブよる目の前にモンスターの攻撃パターンから癖までの分析が全て終了した。


 それは。この戦闘の終了を告げると同義である。


 モンスターが仕掛けてくる攻撃。だがその攻撃来るのは動き出しの瞬間にどこを狙っているのかまで分かっている。そんな攻撃を躱すのなどいとも簡単。


 俺は、一歩その場より左に動くことで躱すと同時に、正面へと向かって行く。それに合わせてとげを放とうとするが、その前に、


『ウェント』


 風魔法を発動してとげを飛ばせないようにする。モンスターまで後数センチ、剣がとどくギリギリのところまで近づくと、地面をけり、モンスター上へとジャンプする。


 俺よりもサイズの大きな相手を切り伏せようとするとこうするしかなかった。


 そしてそのまま剣を振り下ろすことでモンスターは真っ二つ。


 俺の無傷、ノーダメージでの勝利で終わった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る