幼馴染の安心
宵闇(ヨイヤミ)
第1話
今年もこの季節がやってきた。外には腕を組んで歩くカップルや、子供にプレゼントを買い与える親などがあちこちに居た。
「どうせ俺は今年も1人だ……」
そう口を零し、寒夜空の下を1人で歩いた。手は冷えきり、息は白い。空からは白い雪が降ってきている。それに光が当たり、キラキラと、それはもう美しい光景だった。
「クリスマス、ということはもう年末ってことになるのか……今年も早かったな…」
「え、急に何言ってんの?」
そう言ってきたのは幼馴染の楓だった。こいつとは結構長い付き合いだ。物心ついた時から一緒に居て、小学校・中学校は勿論のこと、高校と大学までもが同じだった。
「俺が居るお陰でお前は一度もクリぼっちになってないもんな〜」
「だから俺はクリぼっちなるものを一度経験したいと思っている訳でして」
「そんな悲しいこと言うなよなぁ……?それはそれで寂しくなるんだぞ?」
「お前もクリぼっちになった事ないだろ。この際だから来年はお互いクリぼっちになろう」
「だからそんな悲しい事言うなってー!」
こんな会話が日常だ。去年も同じような会話をした覚えがある。どうせまた来年のこの時も、俺は楓と過ごすんだろうな。
「なぁ、楓」
「ん?どうした?」
「 𝙼𝚎𝚛𝚛𝚢 𝚇'𝚖𝚊𝚜 」
「お前もな」
「楓、飲みに行こう」
「急にどうした!?まぁ、いいけどよ」
今年のクリスマスは、何故だか例年よりも楽しく感じた。その理由は分からない。でも何故だろう。心が奥から暖かくなる感じがする。
俺には何故か、このクリスマス、そして年末が、特別に感じられた。
その理由を適当に言うなら、楓とこれからも一緒に過ごせることが分かって安心した。というのが理由になってしまうのかもしれないな。
幼馴染の安心 宵闇(ヨイヤミ) @zero1121
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます