ユリドル
越山明佳
第1話
私、りんはアイドル活動をしています。アイドルと言ってもテレビで報道されることがないマイナーな――いわゆる地下アイドルです。高校二年生の時にデビューして、高校を卒業してからもアイドルを続けてます。
ライブを行うのはイベントホールはもちろん。ショッピングモール、フェス、CDショップのイベントスペースをお借りして
グループのメンバーを紹介させて頂きます。メンバーは全員で5人。イメージカラーは髪の色と同じです。
同い年であることからか、メンバーの中で私が一番気を許してるあかりちゃん。3月生まれの18歳。赤髪のボブヘア。ライブ前のメイキングではいつも寝癖を付けてきてます。そこがあかりちゃんのかわいいところ。元気活発で太陽的な存在。メンバーだけでなく、観客にもその元気を撒き散らしてます。
小柄でキュートなのがくるみちゃん。4月生まれで今が11月であることから、今年度の誕生日はすでに過ぎた24歳。最年長です。金髪ツインテールで素直になれない
おっぱいが大きく、雰囲気は胸の大きさに比例するようにえろいのがすみれちゃん。12月生まれの21歳。紫髪で肩まで伸ばしたミディアムヘア。一緒に夜を明かさないかと堂々と誘われた時は驚きました。
知性溢れるメガネっ
そして私、りん。2月生まれの18歳。ピンク髪を胸下まで伸ばしてます。ハーフアップで白色のリボンが特徴です。上品なお嬢様って雰囲気で近づき
最後にメンバーとは違いますが、マネージャーのかおるこさん。8月生まれの29歳。ライブ日程の調整、宣伝活動、現場への送迎などしてくれます。この前なんか、くるみちゃんにぬいぐるみがないと落ち着かないと買いに行かされていました。持ってくるのを忘れるのが悪いのにね。
グループはもうじき3年目を迎えようとしていたある日。かおるこさんから念を押されました。その内容は……
「この前、某メジャーアイドルがゴシップ報道されました。知っていると思うけど……アイドルは恋愛禁止よ!」
ダンスレッスンが終わった後に連絡したいことがある。そう呼び出されて何事かと思ったら、恋愛禁止だと言います。私は大丈夫。なんたって女の子にしか興味がないのだから。恋愛は男性との話でしょ? なら問題ありません。
「もしゴシップ報道なんてされたら、こんなマイナーグールプ即解散なんだから、よろしく頼むわよ!」
かおるこさんの言葉は真剣そのものでした。距離に見合わない声量で釘を刺してきます。アイドルグループのマネージャーという仕事が好きなんだなと、このグールプが好きなんだと感じさせられました。
かおるこさんの話が終えた後の着替え中。メンバー内でかおるこさんが言っていたことを話しました。
「ゴシップ報道なんてされるわけないじゃん。こんなマイナーアイドルのメンバー個人の情報なんて誰が欲しがるっていうの?」
ゴシップ報道なんてなるはずないと声高に話すのはあかりちゃん。確かにCDが発売されようと、ワンマンライブをしようと、メディアの主題歌を任されようとも、テレビで報道されないグループ。そんな時だけ報道されるなんてありえない。
「そう? なにもゴシップはテレビだけに限らないわ」
あかりちゃんの意見に反論するのはしずくちゃん。どこかで入手した知識を披露します。
「そうなの? 他に何があるの?」
「ネットね。私たちのグループの2ちゃんねるだって存在するわ」
「2ちゃんねる?」
あかりちゃんが小首を傾げて頭にはてなを浮かべてます。さながら、「2ちゃんねるとは」を脳内検索している模様です。ちゃんと脳内の記憶という名の引き出しに閉まってあるのでしょうか。
「個人であげることができるネットの電子掲示板のことよ」
あかりちゃんの検索結果を待たずして、しずくちゃんが2ちゃんねるについて端的に説明しました。
「それはわかるけど誰がそんなの作るの?」
「さぁ、そこまではわからないわ。ただ、そこに書き込まれれば十分ゴシップと言えるんじゃないかしら?」
「ふ~ん。ところでさ。恋愛ってどこからどこまでなのかな?」
あかりちゃんがそれはもういいからと、話を次に進めようとしました。その質問に真っ先に答えたのはすみれちゃん。豊満な胸を軽やかに揺らして昼間だというのに誘惑してきます。頼んだら揉ませてくれるだろうけど、恥ずかしがり屋の私にはできません。
「それはベッドで一夜を明かしたらじゃない? 当然ヤることやってるはずだから」
「昼間からなに言ってるの⁉」
しずくちゃんの発言にくるみちゃんが突っ込みを入れました。ふたりとも
「なにって、いいじゃない? なんなら今、する?」
「しないわよ!」
「いいじゃない。この前の遠征では気持ち良かったでしょ?」
「……き……気持ち良くなんか……ない……私は小っちゃい女の子が好きなの! 大きいおっぱいなんか眼中に……ないんだから! ……あ」
「そんなこと言って、しっかり感じてるじゃない」
「だからやめ……あん……だめ……そこは……ん……」
すみれちゃんがくるみちゃんを後ろから抱き着いて、服の中に手を入れてます。どこを触っているのかは服で見えません。だけど、くるみちゃんが
「え~っと、ふたりはほっといて」
「ほっとくな! 助けなさいよ! ……あん」
あかりちゃんが、すみれちゃんとくるみちゃんは、もうこの場にはいないかのように続けます。
「
「あるね。女の子同士の恋愛のことでしょ?」
「そう! それ。女の子同士の恋愛。恋愛って言うからには女の子同士でもアイドルの恋愛禁止に入るのかな?」
「それはどうかしら? もし入るんだとしたら……」
しずくちゃんは言葉を続けず、代わりにそっとお楽しみ中のすみれちゃんとくるみちゃんを指差します。
「あのふたりは該当することになるのでしょうか?」
「それは……」
「……あん! ……だめ……そこは本当にだめ~……」
「メンバー同士だから入んないんじゃない? ……たぶん」
驚きです。女の子同士でもアイドルの恋愛禁止に抵触する可能性があるんですね。どうしましょう。もしかしたら私は、アイドルの恋愛禁止という規則を破っているかもしれません。
「りんちゃん? なにしてるの? もう行くよ」
考え込んでいるうちにみんなは帰る準備ができていたようです。慌てて荷物を持ってメンバーの元へ駆け寄ります。
「待って~」
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