歓迎とこれからについて─

イーグルを取り囲んでいた魔物の軍勢はほとんどが全滅し、新たな南からの軍勢のみが僅かに生き残り撤退した。


「奴らは生きて帰せ。首謀者の元に帰して次の動向を探る」

「かしこまりました」


西側の入口に戻ると、イーグルの城門が少し開き、複数の人物が出てきた。


「カウス・グリーンウッド様でよろしいでしょうか?このイーグルを救って頂きありがとうございました!」


「いや、気にしないでくれ。それより、今のこの国の現状を知りたい」

「………わかりました。歓迎したしますぞ!私は、このイーグルを預かる領主パン・ダ・イーグルです」


パン……ダ?

領主さんはパンダの獣人でした。


モフモフしたーーーーい!!!!



イーグルの街に入ると大歓声で迎えられた。


「ユグドラの英雄バンザーイ!!!」

「街を救ってくれてありがとう!」

「助かりました!ありがとうございました!」


大勢の人々が歓迎してくれた。城壁から戦いを見ていたからだろう。嘘偽りない実力で魔物の大軍を退けたシオン達に惜しみ無い拍手と声援が沸き上がった。


「凄いな…………」

「ほら、シオンも手を振りなさい♪」

「ええっ~こう?」


お母様以外は圧倒されていましたが、なんとか領主様の屋敷に着きました。


「また魔物が来る可能性があるので、見張りはしっかりと立てて下さい。それ以外はゆっくりと休ませて疲れを癒して下さい。それと外の魔物の解体はお任せします。自由に刈り取って下さい」

「かしこまりました。その様に手配致します。それではこちらに………」


「あ、南にいたオーガキングの魔石だけ頂きたい。肉や骨はいらないので」


「ほ、本当にそれだけでよろしいのですか?」


カウスは頷くと、領主の屋敷にある応接室で話し合いが始まりました。


「話の前にお怪我やお疲れではありませんかな?」

「いえ、全員大丈夫です。それより、我々はただの旅の途中に立ち寄っただけなのですが、この国で何が起こっているのですか?」


領主のパンダさん………失礼、パンさんは重い口を開いた。


「実は一般の者には知られていないのですが、1年前ぐらいに、ここから南の森の中でダンジョンが発見されました」


!?


「ダンジョン…………それだけで、だいたいの事情がわかったよ」


パンさんも悲痛な表情で頷いた。


「恐らくグリーンウッド家のみなさんの考えの通りです。ダンジョンは『上手く』運用すれば希少な素材の宝庫です。ジャガー王家は一般の者には秘匿し、ダンジョンの生み出す素材を独占しようとしました。しかし、それは帝国に対抗するためもありましたし、決して私利私欲の為ではありませんでした」


パンさんは一息入れて続けた。


「最初の頃は上手く言っていました。いえ、最近までは騎士団を使い、一部の高位冒険者と一緒にダンジョンを探索して、かなりの希少なアイテムや素材を発掘していました。しかし、数ヶ月前から急に魔物の数が増えて、ダンジョンを抑え切れなくなったそうです」


「そして溢れた魔物が、この国の村や街を襲っているという訳だな?」

「その通りです………」


その話を聞いてシオンが呟いた。


「スタンピード(魔物の氾濫)が起きたのね」

「そうね。ダンジョン攻略は冒険者に任せるのが筋よね。一部の高位冒険者だと、雑魚を倒しても放置して奥に進むやり方をしていたのでしょう」


その言葉にパンさんは尋ねた。


「それはどういう事ですかな?」

「ダンジョンは生きているのよ。どんな弱い魔物でも核である魔石を取らないと、ダンジョンに吸収されてダンジョンの力が回復するのよ。ダンジョンは中に入っている生物の魔力や生命力を少しずつ吸収すると言われているの。多少の希少価値の高い素材だけ狩って、他は放置していたら暴走もするでしょうね」


!?


パン領主は知らなかった事実に驚愕した。


「そ、その話は有名なのでしょうか?」

「うん?少なくともうちの領地では常識だったが?だから収納バックを持ち込んで魔物の解体や魔石を時間が掛かっても持ち帰るようにしていたな」


パン領主は知らなかった事実に項垂れるしかなかった。


「パン殿、貴方は交易都市であるこの街イーグルでダンジョン産の素材の売買を王家から指示されて卸していたな?」


!?


「そこまでお気付きでしたか!」


まぁ、パンさんも真っ白ではないだろうが、この方だけが悪い訳でもないだろう。


「………すでに近隣の村3つが滅んでいる」

「そう………ですか……」


罪悪感もあるのだろう。俯いて拳を強く握っていた。


「さて、貴方ならダンジョンの場所を知っているのでしょう?この事は秘密にするので教えて下さい」

「知ってどうするのですか?」

「無論、元凶を絶つのですよ」


カウスは当たり前のように言うのだった。






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