イーグルでは─

何日も都市防衛に徹していた兵士や冒険者達も限界が近かった。


「もうダメかも知れないな…………」

「ああ………城壁が破られたら終わりだ」

「クソッ!どうして援軍が来ないんだ!」


すでに街の青年達も動員し、城壁から石を落としたりと総力戦の構えであった。

イーグルは交易都市として多くの商人で賑わい、防衛の兵士も多く配備されていた。しかし、それの大半は盗賊から商人を守るためで、街道の巡回などが主な仕事で、魔物退治は冒険者の仕事とうまく別れていた。

しかし、数ヶ月前から急に魔物の数が急増し、兵士達も魔物退治へ駆り出される事になった。

近隣の村や街の確認など、半数以上が出払っている時にこのイーグルに魔物の軍勢が攻めてきたのだ。

無論、近くに出払っていた兵士達はイーグルが襲われている事を早馬で知り、急ぎ戻って連携して対応した。


しかし、魔物の援軍は増えるばかりで外での迎撃を諦め、籠城戦に変更した。


彼らは知らなかった。遠くの村など視察にいった小隊が全滅しており、国境砦まで伝達が行ってない事に。

ただ、王都には連絡は行っていた。だが、王都でも魔物の軍勢が押し寄せており、援軍が出せないでいたのだ。

ここ数日は情報が遮断され、イーグルに住む人々の不安は最高点に達していた。


今日一日、乗り切れるかどうか不安を抱えながら魔物を迎撃している時にそれは起こった。


!?


「お、おい!あれを見ろ!!!!」


1人の兵士が空を見ると、そこにはおびただしい数の火球が浮かんでいた。


「な、なんだ!!!」

「は、ははは…………もう終わりだ」


諦めにも似た感情が伝播したとき、空の火球が一斉に落ちてきた。


─魔物の方にだ!


!?


激しい爆発音と共に西側に陣取っていた魔物の大半が吹き飛んでいた。


「な、何が起きたんだ?」

「え………援軍なのか?」


その時、少ししてイーグル全体に声が届いた。


『私の名前はカウス・グリーンウッド!ユグドラ王国で英雄の称号を頂いている者だ!このイーグルに攻めてきている魔物の軍勢は私達が受持つ!もうしばらく耐えて欲しい!』


イーグルの民や兵士カウス・グリーンウッドの名前など知らなかったが、先ほどの大魔術を見て強力な援軍がきたと歓喜した。


多くの兵士達が城壁へ登り外の状況を見た。

そこには次々に魔物が屠られている所であった。


「すげぇー!!!」

「あの数を数人で………」

「なんて強さだ!魔術師だけじゃないぞ!?」

「ああ、剣士の方もとんでもない強さだぜ!」


イーグルの人々は目の前の戦いから目が離せなかった。北側の魔物はどうやら水と雷の魔術で殲滅したようだった。


そして、残りは南からくる魔物の軍勢のみとなった。


「スピカ様!」

「ええ、任せて!」


迫りくる魔物の軍勢に、キャタピラ・ゴーレムを先行させた。


「露払いは任せて!行きなさい!ゴーレム!」


スピカは言った後、少し考えた。


「ゴーレムってなんか可愛くないわね。今回は愛称でも付けましょうか?」


何か神の声(啓示)が聞こえた気がするわ。

目の前でゴーレムが体当たりで魔物を吹き飛ばし、両腕で魔物達を千切っては投げ、千切っては投げと虐殺………こほん、奮闘していた。


「ゲッタ○3と命名しましょう♪」

「なんですかその名前は?しかも、伏せ字が入って上手く発音できてませんよ?」


護衛のカイが呆れて言った。


「なんか神の意志が働いているのよねー?どうしてかしら?」


「二人とも、無駄口はそこまでだ!どうやらこの軍勢の親玉の登場のようだぞ!」


軍勢を率いていたのはオーガキングであった。

それが目の前に出てきたのだ。


「ちらほらと、普通のオーガもいますね。これがこのイーグルを攻略する主力部隊なのでしょうか?」


体格が大きく、力の強いオーガなら城壁の破壊も不可能ではないのだ。


「カウス様!私が周辺の魔物を引き付けます!その間にオーガキングを頼みます!」


カイも小型の魔物を切り捨てながら、スキルを放つ構えを取った。


「………いや、大丈夫だ。すぐに終わる」


カイはえっ?と、カウスを見るとすでにオーガキングの下へ走り出していた。


「か、カウス様!?」


まだ周囲に魔物が多く存在し、カウスに向かっていった。


キンッ!


「無駄だ」


カイの目にも見えない斬撃で一瞬で魔物が細切れになる。そして、オーガキングが鋼鉄のこん棒を振りかぶって、振り落とす所で─


「お前はもう死んでいる」


ザシュッ!!!!!


オーガキングの首が落ちて血が吹き出した。


しばしの間、魔物達も何が起きたのかわからず茫然としていた。


「カイ!ボサッとしない!チャンスよ!」


スピカはゲッタ○3を操りながら魔法を放った!カイも我に返り、すぐに周囲の魔物を倒していった。


魔物達は指揮官を失い、戸惑っていたが慌てて逃げ出したのだった。






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