英雄の到着!
城門が破られる少し前─
「カウス様!かなりまずい状況のようです!」
「ああ、見えている。城門が破られるのも時間の問題だな!」
カウスは辺りを見渡し言った。
「先に俺達(家族)で先行する!お前達は後から付いてこい!他の仲間の指揮はジン、お前が取れ!」
「はっ!畏まりました!」
「第一は自分の命を守れ!そして、余裕があればなるべく敵の命を奪うなよ?」
シオン達は馬を降りて、猛スピードで駆けていった。
「…………馬より、自分で走った方が速いって本当に訳がわからん人達だな」
ジンと呼ばれたカウスの部下は、非常識なグリーンウッド一家を見送ると、馬を全力で走らせるのだった。
グリーンウッドの家族が砦に着くとほぼ同時に、城門が破られた。
「間に合わなかったか!」
「いや、まだ大丈夫だ!カストルは攻城塔を破壊し、城壁にいる帝国軍を殲滅しろ!城門前は俺が死守する!」
「了解!シオン、一緒に来てくれ!」
「はい!」
グリーンウッド一家はそれぞれ別れた。
「スピカ、大丈夫か?」
カウスの妻スピカは何も言われなくても着いてきていた。
「ええ、大丈夫ですわ。すでに大規模魔法詠唱は完了しております」
走りながら魔力を溜めていたスピカだった。
砦に近付くと、帝国軍が城門に殺到していた!
「我が命ずる。風の精霊よ!今こそ荒ぶる嵐を起こし、我が前に立ち塞がる敵を吹き飛ばせ!『ウインド・ストーム』!」
砦の城門前に巨大な竜巻が発生し、帝国軍を薙ぎ倒していった。
「なっ、なんだ!?」
城門から仲間が突入してくると思っていたガリバーは、突然の竜巻に吹き飛ばされた仲間達を見て驚愕した。
「ローズガーデンはこんな切り札を隠していたのか!?」
「いや!違う!こんな高位の魔術師など砦にはいない!?」
即座にクリフトは否定した。そして、入口にはとある人物が立っていた。
「スピカ、頼むぞ?」
「ええ、任せて♪」
カウスは大声で叫んだ!
「聞け!私達はユグドラ王国の援軍である!」
おおっ!!!
砦内から歓声が上がった。先程の大魔術でレベルの高い援軍が来たとわかったからだ。
スピカの風の魔法で、辺りにカウスの声が響き渡る。
「俺の名前はカウス・グリーンウッド!ユグドラ国王から『英雄』の称号を与られし者だ!死にたくない者は逃げよ!死にたい奴から掛かってくるがいい!!!」
出発の時に、国王から名実共に『英雄』の称号を与えられたのだ。
「ふんっ!何が英雄だ!」
砦の中から帝国の将ガリバーが飛び出して、斬り掛かった!
「遅いっ!」
「がっは…………」
カウスは剣を使わず、素手で殴りつけそのまま地面に叩き付けた。
「………まったく見えなかった。あれほどの猛者を一瞬で!?」
クリフトも優れた武人である。先程のガリバーがやり手である事は理解していた。
「まだ掛かってくるか?」
カウスの一睨みで、帝国軍はたじろいた。
「怯むな!兵の数は我々の方が上なのだ!数で圧倒しろ!近付けば、先程の大魔術は使えん!」
帝国の指揮官が数で押す作戦にでた。
「カウス殿!援軍感謝する!我々も加勢致します!」
「いや、俺だけで大丈夫だ。砦内の帝国軍を頼む!」
カウスの言葉に驚いた。
「いや、カウス殿!いくら貴公が強くとも、何百もの押し寄せる帝国軍を相手に1人では!?」
クリフトの言葉にカウスは見ていろと言って、飛び出した。
「貴方は砦の指揮官かしら?あの人は大丈夫だから見ていなさい」
その言葉が本当だとすぐにわかった。クリフトはその場を動けなかった。カウスの戦いが凄まじかったからだ。
「ぐわっ!!!!」
「ぎゃっ!!!!」
カウスが剣を振る度に、帝国兵の複数人が吹き飛ばされ宙に飛んだ。
そこに、約50人ほどのユグドラ王国の援軍と思われる集団が後ろから帝国軍に襲い掛かったのだ!
「なっ!?」
多少、兵力が減ったとはいえ約3万近くいる帝国軍に50人ほどで奇襲を仕掛けた所で、通常はほとんど意味がないだろう。
…………しかし、その50人が他国では全て英雄レベルだとしたら話は変わる。
カウスの部下であるジンは、大魔術で帝国軍の視線が砦に釘付けになっている事を知り、迂回して、帝国軍の後方から攻めたのだった。
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