戦争は参加者全員が主人公である!

エリザ姫殿下が騎馬で西の城塞砦に向かった頃、シオン達グリーンウッド家も残り1日ほどの距離まで向かっていた。


そこに、脚に手紙を巻き付けた伝書鳩がやってきた。


「お父様、緊急の知らせですか?」

「うむ、中央の砦に向かう予定だったが、ここから北にある西側の城塞砦に帝国軍が押し寄せてきたので、そちらに向かって欲しいとの事だ」


お父様の言葉にお兄様のカストルが呟いた。


「おかしいな?中央に3万もの帝国軍が攻めてきているのに、どこに同数もの兵力があったのだろうか?」

「多分、他の国境の兵を引き上げて投入したのでしょうね」

「帝国も危ない橋を渡って、攻めてるってことか」


こうしてグリーンウッド家は進路を変更し、西の城塞砦へ急いだ。


その頃、砦では必死の攻防が繰り広げられていた。


「弓隊!一斉射撃!!!!」


砦の上から100人が横一列で一斉に弓矢を放った!


「ぐわっ!!!!」


突然の大部隊による強襲で、浮き足だった砦の兵士達もすぐに反撃へと転じた。


「将軍!このままでは!?」


側近の1人が3倍もの敵の数に青ざめて報告していた。


「わかっている。だが、慌てた所で状況は変わらん!落ち着いて対処するのだ。如何に3万の帝国軍と言っても、この堅牢なる城塞砦は易々と落とせん!」


この砦を預かる将軍ブリガンは、守りの名将として名高かった。浮き足だった兵士を、すぐにまとめ上げ、即座に反撃に転じたのだ。


「それに、これはチャンスなのだぞ?」

「はっ?チャンスですか?」


三倍の敵に攻められて何がチャンスだとは…………


「ここはユグドラ王国に近い砦だと言う事だ。堪えしのげば、援軍がやってくる!その援軍がやって来た時、討ってでて挟撃するのだ!」


ブリガン将軍の言葉に希望を見出だした側近は、敬礼をして将軍の言葉を伝えに出ていった。


「…………問題は、間に合えばよいが」


将軍のみ、嫌な不安を抱えていた。かつてない程の大軍勢での侵攻に、帝国軍が何の準備をしてない訳がないと。


将軍のその予感は当たった。帝国軍は3日掛けて攻城兵器を用意したのだ。『攻城塔』と呼ばれる移動式階段で城壁へ隣接し、直接乗り込んできたのだ。


無論、ローズガーデンの兵も黙って見ていた訳ではなかった。3個あった攻城塔の2つを破壊したのだが、残りの1つは破壊できず隣接させてしまったのだ。


「早く攻城塔を破壊しろ!帝国軍が乗り込んでくるぞ!」


すでに帝国軍は城壁の一部に乗り込み、王国軍と激戦を繰り広げていた。


「よし!先頭に続けーーーー!!!!!」

「おおおっ!!!!!」


帝国軍も、ようやく乗り込んだ一角を死守する為に精鋭を送り込んでいた。


「おらっ!」

「ぎゃっ!!!」


「ガリバー隊長!前に出過ぎです!」

「馬鹿野郎!今が攻め時だ!これ以上、俺達も犠牲者を出す訳にいかん!一気に攻め落とすぞ!着いてこい!」


「「はっ!!!」」」


攻城塔から次々に帝国軍が乗り込んできて、城門を開こうと向かっていく。それを防ごうと王国軍も必死に死守していた。


「俺の名はガリバー・グスタフ!帝国軍の将が1人だ!死にたいヤツから前に出てくるがいい!」


ガリバーは1部隊を預かる将兵として、確かな実力を持っていた。次々にローズガーデンの兵を屠っていった。


ガギィーーーーン!!!!


「ぐっ!?」

「そこまでだ!帝国の将よ!」


そして、ローズガーデンにも将は居るのだ。


「へっ、やっと骨のあるヤツが出てきたな?」

「私はこの砦の守備隊長の1人、クリフト!帝国軍の好きにはさせない!」


ギンッ!ギンッ!!!


二人の斬り合いは周りとレベルが違っていた。


「ちっ!やるな!?」

「はぁはぁ……貴公もなっ!」


恐らくクリフトは個人としての強さは砦の中では1、2位を争う腕だ。最高責任者の将軍ブリガンは軍の扱いに長けている。どちらもローズガーデンには必要な人材である。


「もう少し、遊んでいたかったが時間切れのようだぜ?」

「なにっ!?」


ガリバーがそう言うと同時に、城門が破られたのだった。









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