魔物を狩ろう!
「よし!魔物を狩ろう!」
お父様の言葉に私はジトーとした目を向けるが、お母様がフォローした。
「シオン、お父様が口下手で脳筋なのは知っているでしょう?そんな目をしないの」
「だって~」
お母様はお父様を見ながら言った。
「お父様が言いたかったのは、魔物を狩ってその素材で質の良い武具を送ろうと言っているのです。民から人気があっても、貴族達の権力は侮れないわ。騎士団には貴族が多いし、兵士なら平民が多いけど、権力的に力になってくれる貴族は少ないので、資金繰りには苦労しているでしょうからね」
おおっ!流石はお母様です!以心伝心とはよく言ったものです♪
「流石は母上ですね。父上の想いを数少ない言葉から、そこまで汲み取るとは………」
お兄様も感心しているわ。
「では、どのような魔物を狩りましょうか?武具の素材になり、それなりに数のいる魔物となると限られてきますが?」
ここで皆、少し考えてから意見がでた。
「沼地に生息しているリザードマンはどうですか?結構いますし、あの鱗はスケイルアーマーに最適ですよ」
「そうねー、それなりの数は用意できるわね」
「余り狩り過ぎると生態系が壊れるよ。分散して狩ろうか?同じく、ギガントヘラクレスなども軽くて丈夫な『殻』が手に入るし良いと思わない?」
その名の通り、甲殻類の魔物ですね。その殻は並の鉄の鎧より硬く、そして軽いのが特徴です。
「支援するにしても、王族のアークにはもう少し良いものをあげたいね」
シオンの言葉にお父様が考えた。
「それは、他の魔物を狩りながら考えよう。ちょうど、魔物が活性化している時期だ。良い意味でレアな魔物が現れる可能性がある」
「………一般兵には手に追えませんので、見掛けたら即日撤退を厳命しますわ」
こうして、グリーンウッド領の1日が過ぎていくのでした。
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「おい、聞いたか?」
「ああ、聞いたぜっ!領主のカウス様とカストル様の二人で、デスパンサーの群れを殲滅したんだろう?マジでスゲーよ!」
デスパンサーとは中型の魔物では上位に位置する黒い豹の魔物である。狩りに特化しており、獲物のスキを伺いながら背後から襲いかかる。足も速く、見付かれば倒すまで逃げられない危険度の高い魔物なのだ。一体でも倒せるランクはBランク。しかし、群れとなれば災害級のSランク相当にまで危険度が跳ね上がる。
それをたった二人で倒したのだ。兵士達には酒の肴になる話だった。
「俺達が遭遇したら全滅だったな」
「ああ、悔しいが死んでたな………」
基本的に、この森から現れる魔物は『平均的に強い』。その魔物達を10人前後の小隊を組んで迎撃に当たっているのだ。
故に、ここに在住しているグリーンウッドの兵士達もまた『平均的に強い』のだ。
ここの一般兵が、通常の国の騎士団長くらいには強いのである。
しかし、この場所が当たり前だと思っている領民達は気付いていなかった。あっちこっちに移動する一部の冒険者ぐらいがこの場所を異常だと感じていたが、高ランクの冒険者が集まっているので、ここはそういう場所だと、問題にしていなかった。
「それより、聖母様が凄かったぜ!爆裂呪文で一撃粉砕だからな!…………素材もパーだったけど………」
あははははっ!!!と、笑い声が響いた。
ここは日々、命のやり取りが行われている激戦区。いつ死ぬかわからない所故に、兵士達は生き残れた事に感謝し、大いに笑って楽しく過ごすのだった。
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