辺境で魔物から国を守っていたが、大丈夫になったので新婚旅行へ出掛けます!
naturalsoft
プロローグ!我が道を往く!
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
ここはユグドラ王国、その真西に位置する所にグリーンウッド辺境伯爵領があった。
グリーンウッド領地の隣には、魔物の巣窟である深い森『還らずの森』が存在し、そこに蓋をするように、分厚く高い城壁が築かれていた。
無論、日々魔物の襲撃がありグリーンウッド辺境伯の『家族』は毎日の日課として魔物を狩っているのであった。
「そっちへ行ったぞ!」
「任せろ!『土流』」
土の魔法で足の速い魔物は動きを阻害された。
「貰った!」
ザンッ!!!
魔物の首が落ちた。辺りを見渡すと、数十もの魔物が倒れていた。大きさは中型で、人間と同じか、少し大きいぐらいの魔物ばかりだった。
「カストル、無事か?」
「ええ、大丈夫です父上」
二人は軽装の鎧を着ており、その腕には『刀』と呼ばれる東洋の切れ味の鋭い剣を持っていた。
「カウス様、カストル様!ご無事でございますか!」
二人の側に、10名ほどの兵士が駆け足でやってきた。
「ああ、大丈夫だ!ちょうど片付いた所だ」
辺りを見渡して刀を鞘に閉まった。
「余り無茶をしないで下さい!もう少し我々を信用して欲しいですな!」
この二人は、魔物が群れを成してやってくると聞くと飛び出していったのだ。部下としてはいきなり総大将がでていって慌てたという事である。
「すまない。少し気になる事があってな」
「とにかく!素材の回収は我々が行いますので、お二人はすぐに戻って下さい!」
部下にそう言われては反論もできずに、わかったと言って砦に戻ったのだった。
「あら?お帰りなさい」
「ああ、ただいま。今日は早かったな?」
砦に戻ると、カウスの妻であるスピカが出迎えた。スピカは黒いローブに身を包み、杖を持っていた。
「ええ、今日は珍しく魔物が多く襲ってきたからまとめて灰にしてやったの♪」
スピカは凄腕の魔導師である。それも大陸でトップ10に入る。よく見るとスピカの耳は尖っていた。そう、エルフなのだ。
この還らずの森の中に集落があり昔、集落が龍に襲われていた時、カウスが龍を倒して救った事があり、惚れたそうだ。
「もう!お母様!灰にしたら素材が採れないからダメって言っているでしょう!」
「シオン!?ごめんなさ~い!」
娘に叱られてショボーンとするスピカであった。
「シオンも戻っていたんだね。そっちも魔物が多く発生していたのかい?」
「ええ、お兄様。中型がメインでしたが、大型も何匹が居ましたわ」
シオンは少し厳しい顔で伝えた。
「また魔物が活性化してきているのか?しばらくは、念入りに巡回しよう」
「それがいいと思いますわ」
グリーンウッドの家族達は、城壁の中にある砦に入って昼食を取ることにした。
昼食が終わると、執事のセバスチャンが報告してきた。
「失礼致します。先の報告で、兵士や冒険者の負傷者が増えているそうです」
私達のグリーンウッド領に存在する兵士は約5千人ほどいて、他の領地が100~300人ほどと考えるとかなり多い。そして冒険者が約2000人ほどいます。
冒険者からうちの兵士になる者もいますし、ここで鍛えて、他の地域に行く冒険者もいますので多少の変動はあります。
お父様は知らないでしょうが、ここで冒険者を1年も続けると上位冒険者の証であるBランクまで一気に実力と評価を貰えるそうです。
怪我をしても、腕を失くしても、命があれば私が癒しますからね。
おかげで私を聖女と呼ぶ兵士や冒険者が多いのよねー。お母様は聖母様や女神様と呼ばれているわ♪
「魔物の討伐隊の人数を増やして、こまめに巡回させるんだ」
通常、魔物の間引きなど10名ほどで1時間ほど巡回する。深い森では大人数になっても動き難くなるからだ。それを15~20人に増やして30分ごとの巡回に短縮して、1時間で2グループが巡回するようにシフトされた。
「すでにそのように手配させて頂いております。それと、気になる情報が入ってきました」
珍しくセバスチャンはお父様の指示を仰ぎたいみたいだ。
「どうした?」
「王都へ魔石や素材の売買に出掛けていたジェイル殿から先触れがやって来ました」
ジェイルと言うのは家のお抱え商人である。本人もAランク冒険者で、うちで取れた素材をキャラバンを組んで王都へ卸しに行ってくれているのだ。片道3日ほどで、いつも一週間ほどで戻ってくる。
「どんな情報だ?」
「1年前に第一王子の王太子殿が事故死したのは覚えておられますか?」
「ああ、そのせいで何年かぶりに王都へ行ったな」
王太子が亡くなった事で、線香を上げに行ったのよね。
「その後、次の王太子に誰がなるのか揉めているそうで、内乱の空気が流れております」
!?
「あらあら?内乱とは穏やかじゃないわね。どういう対立なのかしら?」
「はい、順当に行けば第2王子のフォーマル殿でしょうが、この王子は貴族至上主義者のため、頭は良いのですが民を蔑ろにする政策をとっており、貴族受けは良いが民からは嫌われております。逆に第3王子のアーク殿は数年前にここに来て、腕を磨かれていった御方です。剣の腕はカストル様には及びませんが、旦那様達が直々に教えるほど優秀で、民の為に王国中の魔物退治に自ら出向かれ、過疎の進んだ地方の村などに、騎士達を動員して田畑を耕したりと、民から絶大な人気があります」
よし!支援する方は決まったね!!!
「そうか。それは大変だな」
お父様の言葉にズコッとなった。
「お父様、大変だな?じゃありません!うちも加勢や支援をするべきでは?」
お父様は腕を組んで考えることしばし…………
「よし、魔物を狩るぞ!」
…………平常運転でした。
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