だるま

第1話 愛

「ま、待ってよ!」

ああ......いってしまった。


黒いマフラーを首に巻いた金髪の少年、雅也まさやはすっかりクリスマスムードの商店街で一人、悲しみにくれていた。また、彼女を失った。もう何度目になるかわからない。


いつもそうだ。僕が好きになった女の子は、すぐに僕から去っていく。どうして?まだ何もしていないのに。何も......出来てないのに。やっと、勇気が出てきたとこなのに。


僕も僕だ。彼女を失った次の日には、もう新しい娘を好きになってるんだから。好きな子が変わるたびに思う。ああ、前の女の娘への愛情は、こんなにも薄っぺらいものだったんだな、って。


今回も、明日にはまた違う女の娘を好きになっているんだろうな。


死にたい。きっと僕はこれからもずっとこの調子で、結婚なんて出来ないんだろうな。


「あの、道に迷っちゃって。この場所って、どこにあるかわかりますか?」


ふと視線を上げると、そこには艷やかな銀色のツインテールをした、言葉に出来ないぐらい可愛い女の娘がいた。

雅也は、瞬きするのを忘れてその少女を見つめていた。


しばらくして視界がぼやけてくると、ようやく気づいて瞬きをした。その瞬きをする時間も惜しかった。


「あの、どうか......しましたか?」

自分が話しかけられているんだと気がつくまでに、数秒かかった。彼女の美しさに気を取られていたためだ。


「ああ、いや......なんでもないついてきて、案内するから」

「ありがとうございます」

「いいよ、これぐらい。カバン持とうか?」

「ああ......いや、遠慮しておきます。そんなに重くないので」

「いいって。気にしなくてほら、貸して。」

雅也は半ば強引に彼女のカバンをもった。

「可愛いカバンだね。君が選んだの?」

「ああ、いえ、彼氏が」


ん?今、彼氏っつったか?彼氏いんの?えっ!?じゃあほんとに迷っただけ?逆ナンじゃないの?......まじか。悲しい。


「ああ、少し疲れたな、あそこで少し休憩して行きませんか?」

雅也が指したところは、ピンク色のホテルだった。

雅也は決心した。彼氏がいたって関係ない。奪い取ろう、と。


「あ、じゃあここまでで大丈夫です。あとは自分で行きますので」


え!?休憩しないとかいう選択肢あるの?今までの女の娘は皆、俺と休憩したのに。


「あ、ああ。やっぱり疲れてませんでした。行きましょう。」


こうなったら何がなんでも奪い取ってやる。

















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だるま @sanufute

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