第一章 第二話 名付け

 まずはコンビニに着いた。なにがいいかなぁと思いつつ、お弁当コーナーに向かった。お弁当はいろいろな種類があった。かつ丼・親子丼・牛丼・豚丼・かつ弁当など。おにぎりも数種類ならんでいる。フライドチキンやフライドポテト・チキンナゲットなどもあり、決めるのにまよってしまう。パンやカップ麺もたべたいな。怜にたのまれたお茶もペットボトルのを三本買い物かごに入れた。


 結局、豚丼とフライドポテトと僕もペットボトルのお茶にした。買い物を済ませたあと、自宅に向かった。秋だからか暗くなるのがはやい。いまは午後四時ごろで、すでに陽がしずみかけている。十分ほどでついて寝室にむかい、ダブルベッドのうえに置いてある名付けの本を持って再度病院にもどった。


 妻の部屋に行ってみると、ねむっていた。赤ちゃんは怜のとなりにレンタルしたのだろうちいさなベッドのなかでねむっていた。僕は妻が自然とおきるまでお弁当をたべながら待つことにした。女性にとって出産はとても大変だが、人生で一大イベントなのだろう。怜は普通分娩で僕は出産にたちあった。出産は数時間かかり、怜は僕の手を終始にぎっていた。妻は出産のとき、奇声にも似た声を発していた。よっぽど大変なのだろう。テレビで観たときは出産の痛みは男性には我慢できないだろうと言っていた。きっとそうなのだろうなと思った。


 お弁当を食べ終えて、名付けの本を見ていた。さまざまな名前が男女別にのっている。心愛(ここあ)という名前もかわいいな。葵(あおい)はなんだか神秘的な気がする。でも、いいと思う。紬(つむぎ)は上品な感じかするな。まあ、僕ひとりで決めるわけじゃないのでとりあえず見るだけにしよう。


 病院の自販機で僕は微糖の缶コーヒーを買った。外に出てたばこに火をつけた。怜はたばこは吸わない。お酒は多少飲むが。僕はたばこはやめなくちゃいけないかな。でも、換気扇のしたならいいだろう。怜もそれならやめてほしいと言わないと思う。


 名付けの本を見たり、赤ん坊や怜の様子をうかがっていた。一時間くらいして怜は起きた。

「おはよう」

 と、やさしく微笑みながら僕は言った。

「あ、わたし寝ちゃってた。起きるまで待っててくれたんだね」

「起こすのも悪いしさ。大変な出産のあとだから」

 妻は笑みを浮かべた。

「ありがとう。名付けの本持ってきてくれた?」

 僕はゆっくりと本を差し出した。

「なかなかいい名前があるよ。かわいいのやいろんなの」

 彼女は起き上がり本を開いた。じっくりと見ながら、

「亮はどれがいいと思った?」

 僕はニコニコしながら、

「心愛か葵かな」

 と、言うとふふっと笑った。

「心愛の意味はそこにも書いているけれど、やさしく温かい心があるみたい。葵はなんか神秘的な感じがしていいなぁと思った。植物の名前みたいだよ」

 怜はうんうんと、うなずきながらそれを見ている。

「いろんな名前があるのね。亮が言うように、心愛、いいわね」

「だろ? 人気がある名前だし」

 妻はうなずいた。

「でも、こんなに簡単に決めてしまっていいの? 怜が気に入った名前はないのか?」

 彼女はこちらをじっと見ながら、

「わたしが思うのは人様に迷惑をかけずに生きてってくれればそれでいいと思っているから特別なこだわりはないよ」


 僕は立ち上がり、

「じゃあ、役場に出生届出して来るわ」

「わかった、よろしくね。名前は看護師さんに言っておくから」

今は午後五時ごろ。役場はたしか五時三十分までやっているはず。

【田島心愛】

 いい名前だ。そう思うと嬉しくなった。

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