エピローグ~シーソーゲーム・勇敢な恋の歌~④

「ツバ姉が、それを言う? 他人の好意を利用するだけ利用しておいて……私が知ってるだけでも、吉野さんと坂野クンの周りにヒトが集まり始めて、放送で注意した時に、躊躇なく有間を犠牲にしてたし――――――。他にも、色々とあったと思うけど……だいたい、ツバ姉は、自分を追いかけて高校に入学して来た坂野クンのことについて、どう思ってるん?」


 従妹の思わぬ角度からの斬り込みに対しても、翼は動じる様子もなく、


「えぇ~。あきクンは、すごく優秀で放送部の役に立ってくれる後輩やと思うけど~。私は、あきクンに、直接ナニかを言われた訳じゃないから、答えようが無いよ~」


と、悪びれることなく語った。

 一方の舞も想定の範囲内、といった感じで、


「そっか~。有間は、ツバ姉のことを警戒して油断ならない先輩と思ってるみたいやから、坂野クンは、《友人の評価はイマイチでも、シー・ソー・キュート》って、思ってるかも知らんなぁ?」


と、ニヤニヤしながら、カウンター・パンチを放つ。

 一瞬、ムッとした表情で、


「こんなところで、ミスチルの歌詞を引用せんといて~」


反論する従姉に、


「先に、他人の恋愛事情について、『シーソーゲーム』を引用したのは、ツバ姉やろう?」


と、牽制しながら、


「まあ、コッチは今のところ何か進展があるわけでもなさそうやし、シラを切られても仕方ないか。それにしても、有間はともかく、坂野クンは、普通に女子に人気があるのに、イバラの道を進むなんて、ホンマ勿体ないなぁ~。ツバ姉も、そう思わへん?」


 わざと、昭聞の名前を出し、従姉を煽ってみる。

 従妹の挑発にも無表情で、


「私には関係ないことやから~」


と、受け流した翼に対して、舞は、続いて別件についての持論を展開した。


「それはイイとして、吉野さんのことで思ったことがあるんやけど――――――。これは、あくまで、私が話しを聞かせてもらった雰囲気から感じただけやけど、吉野さんは、有間と今の関係をキープしておきたい、というよりも、『このまま、有間に世話になりっぱなしなのは、悔しいから、恩を返すまでは関係を終わらせたくない』と思ってるみたいやねんな~」


 全く別の方向に話題が変えられたため、


「舞ちゃ~ん、急に話題を変えんといて~」


翼が声を挙げると、舞はニヤニヤしながら、


「いや、どうせ坂野クンの話しを振っても、ツバ姉は、何も答えてくれへんやろう? それなら、有間と吉野さんのことについて、聞いてもらおうと思って! それとも、坂野クンのことについて、何か話したいことがある?」


と、従姉の感情を刺激する様に、たずねる。

 気のおけない関係の従妹に煽られっぱなしの翼は、


「今日の舞ちゃん、イジワル~」


少しふてくされ気味に反抗し、続けて


「私の話しは、どうでも良いんやけど~。有間クンと吉野さんの関係については、わからないことが多すぎて、聞きたいことがあるかな~」


と、話題の変更に便乗した。

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