第5話 躾

「しんご! お前、万引きしたんだって?」


しんごは下を向いている。


「何とかいいなさい!」


「だって……だって、さみしかったんだもん……」


担任の先生と同じことを言ってる。入れ知恵か?


息子はグスングスンと泣き出した。


「泣いても駄目だからね!」


私は息子を決して甘やかさない。


大人になって甘えた環境で育って困るのは本人だから。


真っ当な大人になって欲しいから、今から厳しく育てている。


それの何が悪い。


世間の目など関係ない。


これは、私と息子の問題だから。


父親が普段家にいないから、私がいるときは厳しく躾ける。


社会に出ても恥ずかしくないように。


涙を流しているしんごの顔にビンタした。


すると、泣き声はより一層大きくなった。


「わーん! おかあさん、ひどいよ……ヒック……」


しんごは嗚咽を漏らしている。


「すっきりするまで泣きなさい!」


私はもう一発はたいた。


「万引きしたことをきちんと反省しなさい!」


この! この! 


私は何度も躾のために叩いた。


すると、しんごの顔は真っ赤に腫れてしまった。


これは決して体罰ではない。


躾だ。


先生たちには勘違いしてもらいたくない。

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