ver12/29

生姜湯のゆげのむこうにうちのかべ

愛よりも愛に似かよえこたつ布団

音無しのテレビにうつる寒昴

天狼の見えない窓に手を添える

まどろみに霜喰むような名をつけて

道しずか凍蝶として帰りこよ

朝起きるだけでつかれた夜の雑煮

ねこ丸しみかんをのせて鏡餅

白鳥に梅おにぎりをうばわれる

雪うさぎ目はみどりでもかまわぬか

葉牡丹が食べられるかをかんがえる

おひるねを抜けてしまえば結氷期

氷柱割る音をきいても晴れぬ靄

檸檬忌にだれもころさずいきること

花の露やさしくなれる排卵日

霞む目の奥も霞ます菜花道

花曇り月を探してから帰る

夢遊病わずらうように散る桜

ぬばたまとよべない髪にからむ蝶

水ぬるむおたまじゃくしの尾にふれる

けだるさに垂らすミルクは梅雨曇り

桜桃忌わたしは水に浮きますか

五月雨やでんちのきれた腕時計

ねこ長しレモンの皮とマドレーヌ

慈雨の日の夢の水面の辺のみどり

二度逢えぬ変わり朝顔いまきみは

病院の火災としての大もみじ

台風の目のなかプリン買いにゆく

吊り下げを落ちたおたまも秋果かな

秋晴れの引き鉄として栗を焼く

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