史上最高の霊術士 〜最高だの最強だのと持ち上げられていますが平穏にいたいです〜

batao

第1話 最高の霊能力者


魔の者や妖怪、あやかしといった存在が一番出現し活発化する時間帯。


古来より、人間は夜の闇を恐れ炎という明かりを灯し必死で身を守ってきた。それは闇の中に潜む妖怪や悪霊などから自分たちを守るすべであった。それは現代になっても同じである。むしろ、人工の明かりが煌めく反面、夜の闇がことさらに強調されるようになった。


そうして夜の闇に紛れ人々を喰らうために異形は出現するのだ。しかし、それらから人々を守るものたちが人知れず存在する。彼らは霊能力者と呼ばれ、秘密裏に異形を退治し世の中に貢献している。霊能力者たちは組織に所属して戦う。組織の役割は異形の情報や出現位置などを予測し霊能力者に伝え、バックアップをすることである。


その組織の中で最高の霊能力者と称えられているのが御影竜夜(みかげりゅうや)なのである。



――――――――――――――――――――――――――――――――――――――




深夜、時計の短針が12時を超え建物の明かりが軒並み消え、代わりに金色の満月が町並みを照らす東京の市街地を一匹の異形が全力で走っていた。


(やべぇ!やべぇ!捕まっちまう!)


それは背が低く、下っ腹だけが異様に大きく頭に一本の角が生えた奇怪な姿をしていた。その異形の名は餓鬼といい、地獄で常に飢えと渇きに喘ぐ亡者である。生きている人間を喰らい少しでも自身を満たそうとする危険な悪霊の一種。その餓鬼が全速力で


(何なんだあいつは!!人間とは思えないほど強すぎる!!!)


そう、この餓鬼は人々を喰らうために地獄を抜け出し現世に現れたもの直後に襲撃を受けここまで逃げてきたのである。餓鬼自身も霊能力者の存在は知ってはいたもののそれを取るに足らないものと一蹴し現世にやってきた。その油断が今の状況を招いたのである。


(とにかく、どこかに逃げ込まねぇと!)


餓鬼がそう考え行動に移そうとしたその瞬間


「さっさと地獄に帰りな。」


その言葉とともに餓鬼の首と胴体が真一文字に泣き別れた。まさに一瞬である。餓鬼はそのまま何が起ったのかわからないまま地獄へとまた送られていった。


「ふう、楽勝だった。これなら俺が出るまでもなかったかな。」


餓鬼が地獄へと帰ったその場所で一人の青年が剣を片手にそんなことをつぶやいた。スッと長い長身は遠くから見ても引き締まっているが線が細く、漆黒の着物を着て闇に紛れる様子はまるで影のようでもある。


彼の名は御影竜夜(みかげりゅうや)、異形対策組織 通称

SMO《サモン》(Shaped measures Organization)の最高戦力と呼ばれている。


「何を言うか。餓鬼は腐っても地獄の亡者、簡単に倒せるような相手ではないのじゃよ。竜坊がおかしいだけじゃ。」


竜夜の呑気な声に反応するように空中から現れたのは狐耳と尻尾を生やした幼女だった。身長は見た目相応に130センチくらい、顔立ちも身長に同じく幼さを多く残している。肌の色は雪のように白く、クリクリとした大きな目は青色に染まっている。巫女服を纏い、愛くるしい顔立ちをしているがその容姿に見合わず古臭い言葉を使う姿は老婆のようでもある。彼女の名は九尾の玉藻(たまも)と言う。玉藻は竜夜に幼い頃から取り憑いる妖怪である。ちなみに竜坊というのは玉藻が竜夜を呼ぶ時に使う名だ。


これは端から見たら明らかに不自然だが竜夜にとってはこれは日常の一つだ。組織の最強戦力である彼は連日のように戦いに駆り出される。だからこそ、彼は常々こう言っている。


「はあ・・・平穏に生きたいなぁ。」


この物語は心に傷を負った霊能力者がもう一度戦う理由を見つけ出し、その理由のためにあらゆる異形たちと戦っていくお話である。



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