第4話 兄と妹は同じ気持ち
翌日、俺は謝ろうと妹の部屋に向かった。だが部屋は遊びに来た妹の友達たち女子高生でひしめいていた。
「お兄さん、お邪魔してます~」
「きゃー! お兄さん想像してたのと違う~」
妹の友達は、俺を見てキャッキャッしている。
「いつも妹と仲良くしてくれてありがとうな、ゆっくりしていってくれ」
俺のどんな想像と何が違うのかわからないが…、爽やかに挨拶をしておくことにした。
部屋に戻り、俺は小説を執筆の続きを始めた。隣の妹の部屋からは、きゃ~!と盛り上がっている声が壁越しに聞こえてくる。
「はぁ~若い人たちは楽しそうでいいねぇ…」
◇◇◇
テーブルにはジュースと菓子が所狭しと置かれている。この部屋の主と女子高生たちは、ベットやソファーの思い思いの場所で寛いでいた。
「
「ちょっとカッコよくない、彼女いるのかな?」
スマホを弄る友人たち。その指がスマホをタップし、小説ページを捲っていく。
「彼女いないよ、でもダメ! お兄ちゃんはあげないよ」
「うわ! でたよ隠れブラコン…」
嫉妬を隠そうともせずに頬を膨らませる柚。呆れたように肩をすくめる友人たち。
「お兄さんの作品の評価修正しよ、★★★★★っと!」
友人の一人が呟く。
「いやいや、評価は作品への星で、お兄ちゃんの
それを聞いた柚は、呆れたように溜息を吐く。
「イケメンは正義! わたしはお兄さんの作品にレビュー書こうっと♡」
「イケメンは正義! うちのインスタでお兄さんの異世界ファンタジーのやつ宣伝しとくね♡」
レビュー、評価を新作に入れていく友人たち。
「そんなこと言ってるけど、柚だっていろんなサイトでお兄さんの作品全部読んで、星入れまくってんじゃん」
「そうそう! どんだけお兄さん大好きなんだよ」
「それは…」
友人に指摘され、赤面して言い淀む柚。
「まぁ お兄ちゃんが喜ぶからいいけど、でもお兄ちゃんは絶対にあげないからね!」
ジトリとした瞳で友人たちを睨む柚。「あ~ハイハイ」と可笑しそうに笑う友人。
◇◇◇
その日の夜。ランキングを確認しようとパソコンに向かった俺は、おかしなことに気づいた。
「あれ? 兄妹作品の評価が妙に上がってるぞ、評価人数は変わらないのに?」
暗算で計算すると、「評価1」を「評価5」に変更した数字と一致した。そして驚いたことに、底辺を彷徨っていた新連載作品が日間1位になっていた!?。
「「評価1」を入れた人が、「評価5」に上げてくれたのか? どうして?」
評価を上げてくれた理由はわからないが、俺は思わずガッツポーズする。
「新連載もだけど、兄妹作品の評価が上がるのは嬉しいな…」
両親の再婚で幼馴染の柚と兄妹になったとき、家族でいようと決意し、妹への恋愛感情は封印した。だが成長するにつれて、封印から漏れ出てしまう感情が日に日に増えていった。そんな思いをぶつけたのが兄妹小説なのだ。
ハプニングで読まれてしまったが、妹には生涯見せるつもりのなかった小説だ…
俺が取り付かれたように小説を書き始めたのは、親父が再婚した頃からだった。今思えば、ままならない現実から目を背けるためだったのかもしれない…。
「まぁ、妹にはお兄ちゃんキモイ!って言われちまったけどな…あれは結構グッサリきたな…」
キモくない兄でいるために、俺は今日も自分の心に鍵をかける。
「安心したら、急に眠くなってきた。そういえば最近、新連載の執筆で寝不足続きだったもんな」
俺は少しだけ休むつもりでベットに横になった。だが疲労から直ぐ眠ってしまった。
◇◇◇
深夜の俺の部屋。ドアを開け、そろりそろりと入ってくる妹の足。
「あーあ 布団もかけずに寝ちゃってるよ」
寝ている俺に布団をかけてくれる妹の柚。俺はぼんやりと目は覚ましていたが、まだ惰眠を貪りたかったので、目を閉じてベットに横になっていた。
「本当はお兄ちゃんをキモイ!なんて思ってないからね、恥ずかしくてあんな態度とっちゃったけど…」
妹はそんな俺のことを熟睡していると勘違いしたようだ。寝ている俺に向かって何やら話始めたぞ!?
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