幕間 残りの冬休み
EP10:冬休みの【課題】
月日が流れ、冬休みが明ける……前に。
残る冬休みの間、僕と幼馴染である
□
一休みを経て。僕は、まだ冬休みの課題をあまり終わらせていないことに気がついた。
冬休みは残り一週間程しかなく、今から処理しないと大変な目に会いそうだな……
ということなので、
就寝前にも言ったが、一人の時くらいは素に戻らせてくれてもいいだろ?
……まあ、そのせいでまた瞼に込み上げてくるものがあるんだが。
目の付け根を抑えながら、俺は私室の扉を開いた。
……やはり、開けた瞬間に琉依の匂いが鼻腔を
昔は匂いに意識することなく無邪気に遊んだってのに、俺も
……いや、仕方がなくないか?仮にも琉依は異性、かつとびきりの美少女ときた。
俺みたいな男として正直な奴からすれば、二人暮しは困惑はあれど興奮は
……何ナチュラルに変態みたいな考えをしてるんだ、俺は。
こんな素の性格、琉依には見せれねえな。
閑話休題させてもらおう。
自分のデスクの上に課題が入っているバッグがあることに安堵しつつ、それに近づく。
バッグから課題と筆記具をだして、それをデスクの上に広げ課題処理開始だ。
まず俺が取り出したのは数学の課題。紙をまとめた冊子になっており、残り半分くらいのものだ。
さてさて、続きの問題は──
<ポタッ……>
「………」
……が。問題を覗き込めば、その問題の上に不定期に落ちてくる熱の篭った雫。
「……クソッ」
悪態を付きながら、俺はティッシュを抜き取り、それを課題に当てて早急に乾かす。
しかし、その上からもさらに雫は落ちてくるわけで……
俺は黙って、手に取っていたシャープペンシルをデスクの上に置いた。そして、ため息を吐く。
「なんで、止まってくれないんだ……」
……あの日からだ。一人になってから、仮面を外す度に俺はこの感情を抑えられていない。
泣いても泣いても流し尽くすまで枯れることのない涙が、もう嫌になってくる。
「……──ッ!?」
<ガチャッ>
部屋の外側から人の気配がしたため涙を即座に拭うと、その途端扉を開いた。
「氏優くん、何してるの?」
振り返って見てみれば、琉依が扉を支えながら首を傾げている。
ノックは……そもそも琉依の部屋でもあるし、してくるわけないか。
「……冬休みの課題がまだ終わっていないから、それを処理していたところだよ」
冷や汗を感じつつも、
そして、さりげなく開かれていた課題を閉じておく。
すると、琉依は関心げに目を見開いた。
「まだ冬休みまであと一週間だよね?偉いなあ、私後までほっとくタイプだよ」
この量の課題を最後まで放っておくって中々に危険な行為だと思うんだけど……
ん?そういえば……
「琉依も課題あるの?転入生だけど」
琉依は恐らく、三学期に僕が今通っている高校に転入してくる。
これまで転入生の例は……そもそも興味もなかったけど、そこはどうなんだろう。
そう思って尋ねると、琉依は「え?」と素っ頓狂な声を上げた。
「……ああいや、私は無いよ〜」
どうやら、転入生に課題はないらしい。
まあ、よく考えると普通は引っ越しやらで色々と大変なのに出すのもあれなのかな。
そんなことを考えていると、不意に琉依が首を傾げながら近づいてきた。
「課題ってどういう感じなの?」
また冷や汗を感じるけど……慌てず、僕はもう答えが記入されている、そして濡れていないページを開く。
それをズラっと見た琉依は、「うげえ」と顔を引き攣らせた。
「問題数多っ、面倒くさそう……答えとかってないの?」
「……まだないね。始業式の日に渡されて、数日後の初授業に丸つけして提出って感じ」
「この問題数でそれって地獄じゃん……」
先程から正直に感想を零す琉依に苦笑する。まあ、気持ちはわかるんだけどね。
「………」
……それにしても、近くないかな。
琉依が覗き込むように体を寄せてきてるから、匂いが鼻腔をくすぐったり体温が微かに伝わってきたりする。
もう何度かそういうことがあったから慌てたりはしないけど、居心地はやっぱり悪い。
「っとと、邪魔しちゃったね」
そう言って、琉依は体を引かせる。
「じゃ、頑張ってね」
「ああ、うん。ありがとう」
ドアを開けて部屋を出ていく琉依にお礼を言いながら、お……僕はデスクに向き直る。
シャーペンを手に取り、続きの問題があるページを開いて、公式を見る。
その後は、涙を流すことなく問題を解き続けた。
【あとがき】
お久しぶりでございます。更新がかなり遅れてしまい申し訳ございません。
一応お知らせとなりますが、氏優くんの仮面を外した状態を分かりやすくため、全体的に改稿を施しました。ご了承ください。
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