全てを失った俺は、幼い頃に別れた幼馴染と二人暮しする事になった

さーど

序章

プロローグ

【地獄の人生】

 俺には幼馴染がいる。

 生まれてきた時から家族ぐるみで仲の良かった、女の子の幼馴染だ。


 幼馴染というのは、物語では小さい頃に[結婚]の約束をするのは定番だろう。

 俺たちも、四歳の時に[結婚]の約束をした。


 だけど、現実では[結婚]の約束をしたとしても、果たされることはゼロに近い。

 小さい頃の思い出話として笑って、気にせずに別の人と結ばれることがほとんどだ。


 もちろん、俺たちも例外ではないさ。


 約束をして少しした、幼稚園になる少し前の春。

 多忙な彼女の父親の都合で、彼女が遠くに引っ越したんだから。


 ……でもね。


 どうして今、僕の目の前にその幼馴染がいるんだろう。



 □



 ……僕、楠葉氏優くずはしゆうが幼馴染と別れてからの人生は、僕からしたら[地獄の人生]だった。


 彼女と別れてからすぐ、僕は幼稚園に入園した。

 家から徒歩五分、大きさはボチボチのごく普通といえる幼稚園に、だ。


 入園当時。僕は、幼馴染である彼女と別れた時のショックがしばらく治らなくて、誰とも話さなかった。

 そのせいだろうね。仲間はずれにされたり、それの延長線として悪口も言われた。


 ……まあ、最初はバカにされている、という感覚が幼くて理解できていなかったから、その時はなんともなかったけどね。

 しばらく経って理解した時も、既に慣れていたから本当になんともなかった。


 ただ、小学校に入学してからは違った。


 小学生になっても、幼稚園で一緒だった子達が多くて、いじめは続いていた。

 それも悪口だけではなく、過度ないたずらもされた。

 文房具を奪われたり、黒板クリーナーを落とされたり、トイレ中に水入りバケツを落とされたり、など。


 そして、高学年になると暴力も平気で振るわれるようになった。

 その頃には奴らも賢くなったんだろう。服で隠れたところを中心的に殴られた。


 もちろん、さすがに辛くはあった……けど。

 愛してくれている両親や、親しくしてくれている教師に心配してほしくもなかった。

 だから、相談というのはしたくなかった。


 だけど解決はしたかったから、中学進学を機に僕は行動に移した。

 行動といっても、僕は勉強だけはできたから、私立に受験しただけだけど。


 無事に合格して、無事に入学。

 学費を払ってくれている両親には少し申し訳なかったけど、虐めてきた奴らとは離れ離れになることが出来た。


 でも、それだけで解決した訳ではなかった。


 僕は勉強だけは出来たけど、それ以外は何も出来ない。……つまり、コミュニケーションが下手で友達を作ることが出来なかった。


 当然ぼっちになって、上手く人と喋ることができないからなめられて、中学でもいじめをされることになった。

 ここで本音を言わせてもらうと、本当にふざけないで欲しい。

 

 中学だと、暴力という身体的なイジメも少しはあった。

 だけど主には、言われもない噂を流されたり、悪質な陰口を言われたりと、精神的なものだった。


 背が高いからって、小学生の時に暴力を振るいまくっていた名前詐欺野郎とか……

 そもそも話せないのに、女を遊び道具にしてる苗字通りのクズとか……


 他にもシカトは当たり前。連絡事項のために話しかけるだけで顔を顰められ、数々の女子からはキモがらる……

 幼稚園や小学校低学年とは比にもならないレベルだったよ。


 あとさっきのにツッコミさせてもらうと、前者の名前詐欺はともかく、後者はさすがに楠葉さん全員に謝ればいいのでは? と思う。


 ……まあ、噂は噂で、問題は起こしてなかったため無事に三年間を過ごし、卒業。

 『なんであいつ市立に落ちてないの?』とクラスメイトには言われてたけどね。


 高校受験は……夢もなかったし、中学の時みたいに虐められないようにする行動はもう無駄だと思っていた。

 よって、近所の公立高校に受験、無事合格。そして無事に入学した。


 高校は近所だったから、小学生の時も中学生の時も同級生の奴らもいた。

 まあ、察しの通り虐められたね。うん。


 それから、もう無心でスクールライフを過ごし、家では学校の事を忘れて楽しく過ごす。

 そんな日々を過ごして、今日はクリスマス。


 奇跡なのかなんなのか分からないけど、クリスマスの今日は僕の16歳の誕生日だ。

 クリスマスと誕生日の同時祝いで、毎年恒例の高級レストランで家族全員で食事をする。無駄にウチは金持ちだった。


 事件は、その帰りだった。

 楽しく談笑しながら、家族一緒に車で帰っていたんだけど。


 青信号で横断歩道を渡る際に、横から別の車が信号無視して突っ込んできたんだ。

 そして僕たちが乗る車にぶつかり、その瞬間すごい音がして、僕の意識は一瞬でとだえた。

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