第3話 年末年始の変

いよいよ1年も残りわずか。

大晦日なのにたまたまシフトであって。


俺「店長、暇っすね。」

店長「まぁな、大晦日だしな。」

俺「帰っていいっすか!」

店長「はっ?あと30分だろ?」

俺「早くそば食いたいっす。」


大晦日の夕飯時なので道ゆく人もぽつらぽつらって感じで。

当然客は少ない。


俺「あっ、時間なんであがります。」

店長「お疲れ様。」

俺「うーっす!」


お腹がすいたのでダッシュで帰宅。


母「おかえりー。」

俺「うっす!そば!」


食卓には寿司、そば、天ぷらが。


妹「あっ!!」

俺「えっ?」

妹「いや、早い者勝ちって事で。」

俺「はっ?」

妹「なんでもなーい。」

俺「なんだよ〜?」

母「もー、なんでもないから食べなさい。」

俺「いただきまーす。」

妹「おー、食え食え〜!」

俺「おっ、寿司!やべー!!」

妹「フッ、お前がヤベー。」

俺「えっ?」

妹「いや、なんでも。」


…そばに天ぷら。いい組み合わせだ。イカ天にかき揚げ、さつまいも、……んっ!


俺「ときに母よ。」

母「な、なによ…。」

俺「このシッポはもしや?」

母「…んっ?なんの事かしら?」

俺「エビでは?」

母「そ、そーかしら?」

俺「んー。なぜ、シッポだけなのか?」

俺「んー。しかも8尾。んー。」

母「…カルシウム!…よ。」

妹「いくらバカ兄でもそれくらい…」

俺「なるほど。」


パク パク パク


俺「食わないなら全部もらい!」

母「ど、どーぞ…。」

妹「…信じてるし。」

俺「ん?欲しいのか?」

妹「…いや、全然。」

俺「いゃ〜、食ったぁー。」

俺「すまんねー、エビ全部食っちまった。」

母「…いいのよ。全然。」

妹「おめでたいやつ。」

俺「バカだな。おめでとうは明日だぞ。」

妹「………。」

俺「んじゃ、良いお年を!」


母「今年も最後まで、」

妹「バカだったな。」

妹「でも、カルシウムはないわ。」

母「苦しまぎれに言っちゃったのよ。」

妹「信じたな。あいつ。」

母「あなたが全部食べちゃうからー。」

妹「いいじゃん。本人シッポ食って超幸せそうだったし。結果オーライ!」

母「そうだといいけど。」


…いや〜、シッポは意外と美味かったな。

それにしてもシッポ天とは斬新。

さすがうちの母だ。

さて、明日は正月!


母「あけましておめでとう。」

妹「おめでとう。」

俺「うっす!」

母「はい。お年玉。」

妹「あ、ありがとう!」

俺「……。」

妹「なに手だしてんの。」

俺「……。」

母「仕方ない。」

俺「ありがたき幸せ、なり〜。」

妹「お前いくつだよ。私はギリ20歳。」

俺「俺はギリ…」

妹「ギリじゃないし!」

母「来年はないわよ!」

俺「な、なっ!」

妹「当然でしょ。」

俺「な、なにゆえ!」

妹「だからさー、いくつだよ、お前。」

俺「これにて、ドロン!」


タッタッタッ


妹「いいの?あいつにあげちゃって。」

母「中身はあなたの10分の1よ。」

妹「ま、まじっ!」

母「当然!あの歳でもらえるだけありがたいってものよ。」

妹「さすが我が母。」

妹「…私で五千円って事は?」

母「ふふふっ。」

妹「…母恐るべし。」


…うーむ。

ご、ご、五百円…

去年は確か千円だったはず。

うーむ。

来年もらえたとしても…

うーむ。

この計算だと来年は…

に、に、に、二百五十円!…

恐るべし我が母!


母「初詣行くけど〜。」

妹「いいよ、あいつは。」

俺「行くでやんす。」

妹「誰だよ!」

俺「神社にてお願い事がありんす。」

妹「あ、ありんす?」

母「遊郭かっ!」

俺「さっ、ささっ。」

妹「離れて歩けよな!」

俺「そちらこそ。」


徒歩五分の神社も今日は人も多い。

新年の不思議な時間の流れの中。


母「ちゃんとお願いするのよ。」

妹「もち!」

俺「……。」


…お願いはひとつ?

いやふたつは大丈夫だろう。

いや待てよ、

欲張るとなー、

うーむ。

っとなると今年はお願いをふたつ聞いて下さい!というお願いはどうだろう。

よし!

天才!俺!


カラン カラン

パン パン


妹「早くしなよ!」

俺「おっ、うぃっす!」

母「ちゃんとお願いした?」

妹「うん。かっこいい彼氏ができますようにって。」

俺「フッ、絶望的な願いだな。」


ドカ!バキバキ!


俺「なっ、暴力反対!」

母「自業自得ね。」

妹「どーせあんたは悩んだあげく変なお願いでもしたんでしょ。」

俺「フッ、完璧なお願いだ!」

母「あら、なにかしら?」

俺「願い事をふたつ聞いてくれというミラクルなお願いだっ!!!」

妹「んで?」

俺「?」

妹「だから〜、そのふたつの願いは?」

母「ふたつもなにをお願いしたの?」

俺「だから…願い事をふたつに…」

妹「だからなにをお願いしたのよ?」

俺「……。」

妹「まさか、願い事をふたつにしてくれって事だけ?」

母「意味なくない?それ。」

俺「…ま、まだ間に合う…」

妹「あー、あんなに並んでる〜。」

母「また来年ね。」

妹「頭悪いくせに欲張るからよ!」

俺「な、なっ…。」

妹「おみくじどうだった?」

母「末吉。でもいい事書いてた!」

妹「私大吉!」

母「あら!いいスタートね。」

妹「バカ兄おみくじは?」

俺「フッ、誰よりも高い所にしっかりと結んできたのさっ!」

妹「じゃなくて、何書いてあった?」

俺「…はっ!」

母「見ないで結んだとか?」

俺「……。」

妹「こりゃ今年もダメだな、こいつは。」

母「ホントね。」

俺「…だから、願い事ふたつとかは発想的にミラクルだったっていうかー。」

妹「超ミラクルバカ!」

母「同感。」


こうして新しい年が始まってくのである。





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