第35話時の狭間2

毛をモフモフさせたたぬきは、ぽん吉と言うらしく、人間の言葉を喋り、人間と二本足で歩く獣人が共に生きるこの世界の荒清神社の最高責任者らしい。


最高責任者と言っても神社自体小さいので、観月が治めるあれ程の規模は全く無く、、昼間は少人数の神職と巫女が従事していると言う。


しかし、縁結びの強力なパワースポットとして女子に非常に人気でマスコミでも紹介され、結構忙しいらしい。


ぽん吉の話しによると荒清の龍神は、優のさっきまで居た江戸時代の荒清神社に過去自分の身体だった剣を置き、霊の本拠地として行動して、三千世界、様々な次元の世界へ行き、又そこでも神として崇められ、鎮座していると言う。


そして龍神はその旅の傍らには、今、観月が治める荒清神社の近くで知り合い、後に伴侶とした美しい男を常に連れていると言う。


以前尋女とは、自分の持つ普通の水晶と彼女のそれを通して知り合ったらしく、流石に次元が違うから行き来はないが、たまたま言葉が同じだったので水晶を通して交流しているらしく、幾度と相談に乗ってもらい大変世話にもなったらしく

、ぽん吉は、尋女を崇め師匠と別名で呼ぶ事もある。


優がたまたまこちらへ飛ばされ、尋女が彼に助けを求めたらしい。


しかし、ここは紛れも無く東京で、西暦も優が川で流された時と一緒。


優は朝霧とぽん吉と話しているうち、あの両親と暮らした似た家もあって、彼等に似た人物が住んでるかも知れないと思った。


だがやはり、仮にそうだとしても自分の事は多分知らないのに、ただの似ているだけでもひと目でもいい、顔を見たいと言うのはバカげているだろうな…


今日はもう遅いので明日行ってみようと朝霧とぽん吉は提案してくれたが、優はそれを辞退した。


ぽん吉は夕刻になり、風呂を準備し、優と朝霧の浴衣や現代の下着も用意してくれていて、優と朝霧に夕飯は何にする?と聞いてきたので、朝霧の主のお好きな物を…というお言葉に甘え、異世界でどうしても、どうしても食べたいと懐かしんだ某チェーン店のハンバーガーのセットを久々に頼んだ。


宅配でやがて運ばれてきた余りに不思議な食べ物に、朝霧は最初は警戒していたが、一口、二口と、やがて美味しそうに食べ進めた。


しかし、いきなり炭酸は無理かもと、優は朝霧のドリンクは向こうにもすでにあったウーロン茶をアイスで頼んだが、朝霧はそれより氷がとても気にいった様だった。


「師匠の世界では、たぬきは四本足で歩くと聞いたが、そんな事…あり得ねぇと思うが…」


「まさか、そっちでは、たぬきを食べたりしないだろうな(笑)」


など、江戸時代ではたぬきは立派な食料なので、たまに返事に困る事を言ってくるが、ぽん吉は、優と朝霧が食事する時もよく喋り、よく笑い楽しいたぬきだ。


夜になり、ぽん吉が布団を引いたと言うのでその部屋へ行くと、広い部屋に、大きい柔らかそうな布団が一組だけあり、そこに生々しく枕が二つあった。


そして、その枕元にはティッシュの箱と

、優が、知識としてだけ知っているセックス用のローション、コンドームが置いてある。


この、エロダヌキ!


と内心思いつつ、優が布団は二組無いと困ると絶句し慌ててぽん吉に言うと、


「同じ部屋で寝るとぅ、朝霧に聞いたからぁ、そのぅ…てっきり、二人はそう言う…関係なのかと…」


と、上目遣いでかわいこぶって言ってきた。


「そ…う言う関係って…」


優は、背後の朝霧を見る事が出来ないまま、赤くなり又絶句する。


「はやとちりして悪かったな。でも、そう言う関係じゃないなら、男同士別に横で寝ても問題ないだろ?明日は別々に用意するから、まぁ、今日はそれで休んでくれ」


ぽん吉はさらっと、事も無げに言うと、右手を軽く上げた。


「じゃ、俺は明日も朝早いから、母屋に帰る。じゃあなぁ、又明日、春光!朝霧

!」


ぽん吉は足どりも軽く、廊下を変な鼻歌を歌いながら歩いて行った。


優は、恐る恐るまた布団を見た。


「主、申し訳ありません。私の説明不足でした。私は隣りの部屋で休みますので」


朝霧が冷静に言ってきているのに、オロオロしてる自分が余りに情け無くて、優は余裕の笑顔を作った。


「そんなのだめです。風邪を引きます!」


「でも…」


朝霧は、視線をすっと優から外した。


「ぽん吉の言う通り、別に何も無い男同士なんだから…」


優のその言葉で、結局、男二人、同じ布団に入った。


結局、眠る体勢にはなったが…


安全の為にとぽん吉が、部屋の端に小さなライトスタンドを点けて置いていき真っ暗にはならなかったし、大きい布団だったが、男二人が横になるとビミョーに身体同士が近くなり、互いに違う方向を向いていたがなんとなく気になって優は眠れなかった。


早く、早く寝ろ、俺!


優は、長い時間心の中で念仏の様に唱えた。


だが、突然、嫌な予感がすると、間もなく優の下半身が熱くなってきた。





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