第6話 サキュバスの力


 

訓練室に少し早く着いた俺達は、その広大な広さに唖然としている。


「うっわ、すげーなこりゃ。こんだけ広ければ正直どんなに暴れようと大丈夫そうだな。」


「ちょっと試しに蓮とバスティーの能力見てみたくなーい?♪」


「俺は構わないけどバスティーは大丈夫なのか?」


「はい♡バスティーはいつでも準備万端ですよ♡」


相変わらずのおちゃらけ具合に内心本当に大丈夫なのかと不安になるが


「それでは始めますね………。」


バスティーの表情が一変し眼球の色が真っ赤に染まる。


「これで準備は整いましたよ。蓮様……

何か異常はありませんでしょうか。」


「異常というよりか、身体がすごい軽いというか。何か不思議な感じだ。」


俺の体からは、ほんのりと赤いオーラのようなものが見える。


「よーーーし!じゃあ私とジャイアンが少し相手してあげるから遠慮なく来なさい!」


そういうと芽衣とジャイアンが俺に向かって襲いかかってきた。


「お、おい!いきなりはずるいぞ!」


反射的に俺は後ろにめいいっぱい回避をした瞬間

芽衣とジャイアンが約30メートルほど遠くにいるのが確認できた。


「え?」

芽衣達は一瞬で30メートルもの距離に移動した蓮達を見て驚きを隠せないでいた。

しかし1番驚いているのは俺本人。。


「バスティー……

俺この力使いこなせるかな……。泣」


「蓮様なら大丈夫です♡」


とてもひと事のような言い方をするバスティーを見て

さっきまでの不安がまたちがう不安を生み出してしまった。


「ま、まあなんかすごいってことは分かったな蓮……笑」

小次郎が苦笑いを浮かべながら俺に喋りかける。


「さすがバスティーさんですぅ。」

雫は何故かバスティーに歓喜の眼差しをしていた。


すると時間になったのか。


「よーしお前ら!やる気があるのは充分だが勝手に初めて怪我でもしたら俺の責任になる。」

「その意味わかってるよなー。」


黒乃がちょうどよく姿を現し、俺達に向かって冷酷な表情を浮かべる。


「す、すいませんでした!

バスティーの力がどんなものなのか知りたくて!」


「ふー。お前のパートナーも確か悪魔族だったな、

悪魔は悪魔自身が戦うよりも人に取り憑くことで真価を発揮する種族だ。お前らの力は少し慣れが必要だ。」


「ってことは黒乃さんも悪魔族のパートナーなんですか?」


「ああ、そうだ。俺のパートナーは悪魔の王。サタンだ。」


全員が驚きの表情をしている中バスティーだけは……


「あの伝説のサタン様……。」


真剣な表情で黒乃とサタンを見つめる。



「おい、バスティーとやら、お前、確かテレパシーとやらができるよな、」


「えー、何故知っているのですか?!」


「ほー、正直半信半疑だったが本当にできるとは」


「もしかしてサタンも??」

俺はまさか他にも?と、思ったがどうやら違うようだ。


「サタンは俺としか話すことができない。」

「サキュバスは夢の悪魔だ、人の頭の中に潜り込むのが得意な性質を持つ。」

「まあこれもサタンに教えてもらったことだがな。」


「つまり蓮。」

「お前の力は俺が試験前に少しでも扱えるようにしごいてやるから覚悟しておくように。」


「それとバスティー。お前もだ。と、サタンが言っているぞ」


俺とバスティーは、恐ろしい表情で芽衣達に助けを求める顔をするが


「ま、まあ、私たちもできることがあるなら言ってよね!」


「試験合格のためだ蓮!がんばれ!!」


「怪我してもしずくが祈りで治してあげますからね!」


 なんだか他人事のよう聞こえるぞ。


こうして地獄の訓練が幕を開けるのであった………


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る