探偵喫茶のランチタイム:素敵なクリスマス

新橋九段

問題編

「ク~リスマスが今年もやってくる~」

 寒さも厳しくなる昼下がり。私は台拭きを手にテーブルをせっせと磨いていた。バイト先である喫茶店『パラダイスの針』は久々に閑古鳥が鳴いている。今日は今年一番の寒さを記録しており、予報では雪すら降るのではと言われているほどだ。こんな日は決まって来客が少なくなる。

「楽しかった、思い出を、消し去るようにっ」

「そんな呪いみたいなクリスマス嫌だよ、二三音ふみねちゃん」

 呆れた口調でツッコミを入れてきたのはこの店のオーナー夫妻の夫のほう、紫崎しざき雪垣ゆきがきさんだった。彼は名前に雪が入っているのに寒いのが苦手なのか、ハイネックの白いセーターに顎まで隠して、暖房の効いた店の片隅にいた。客がいないのをいいことに、窓際の特等席に工具を広げてラジオの修理をしている。

 雪垣さんは丸い銀縁眼鏡をくいっと押して顔を上げた。年寄っぽいその眼鏡のせいで三十代くらいに見えるが、これでもぴちぴちの二十五歳だというのが自称である。

「ちゃんとした歌詞わからないんですもん」

「ま、俺も舶来のチキン屋のコマーシャルでしか聞かないけどね」

 いちいち言葉の選び方が古い彼は、ドライバーをテーブルに置いて伸びをした。凝りをほぐすように首を左右に動かす。

「直りました?」

「一応。でも時間の問題だろうね。アンティークものだから」

「ふうん」

 私は彼の座るテーブルへ近づいてラジオを覗き込んだ。小型のクーラーボックスくらいの大きさがありそうなそれは外枠が木で出来ていて、正面には色の黄ばんだ窓がついている。その窓からはスピードメーターのような針が見えていた。

「これでよしっと」

 雪垣さんは後ろの蓋をぱたりと閉じた。彼は重そうにラジオを持ち上げ、元々設置されていた棚の上部へと戻す。

「よいしょ」

「もう買い換えたらどうです? 最近はパソコンとかでもラジオ聞けるみたいですし、それをスピーカーに繋げたら?」

「そっちのほうが楽だけどね」

 私の提案に雪垣さんが頷いた。彼がダイアルを調節すると、ラジオが放送を受信し喋り始める。番組は「血みどろニュースチャンネル~」という不穏な名前だったが。音質が良くないので聞き間違いかもしれない。

「でもね」

 彼は手をはたきながら私のほうを見て続けた。

「喫茶店は合理的じゃないほうがいいんだよ。合理的なコーヒーが飲みたい客ならみんなスタバに行ってる。ここに来るお客さんはコーヒーを非合理性と共に飲みたくて来てるんだ……音質が悪い上にすぐ壊れるラジオとかね」

「サボり気味のコックが作るサンドイッチとかもですよね?」

「そういうこと。だから俺がのんびりしてるのはお客さんのための演出だよ。おあつらえ向きだろ? 古びた純喫茶に昼行燈の店員」

「またまた……」

 私が呆れていると、店の扉がベルの音とともに開かれた。一瞬、真冬の冷気が一気に入り込んでくる。私は身を縮こまらせつつ振り向いた。

「いらっしゃいませー。あぁ、ひとみさん」

 入ってきたのは見知った常連さんだった。近所に住むシングルマザーの大橋ひとみさんだ。普段は仕事が忙しく、昼間に来店するのは珍しい。

 彼女は外の寒さから解放されて、大きなため息をついた。寒風に吹き付けられた頬が赤くなっていて、セミロングの黒髪が乱れてしまっていた。彼女はマフラーをとると慌ただしく手櫛で髪の毛を整える。

「こんにちは、二三音ちゃん。雪垣さんも」

「どうもひとみさん。寒かったでしょう。いま伊利亜いりあ呼ぶから注文座って決めてて」

 雪垣さんはさっきまでの昼行燈ムーブをどこかへうっちゃって、慣れた手つきでカウンター席に彼女を案内した。そのまま足早に店の奥へ入り「いりあー」と声を掛ける。私はお盆を手に取ってコップにお冷を注ぎ始めた。ひとみさんはコートを脱いで隣の椅子に掛ける。

「寒いですね、今日は」

「本当ねぇ。こっちまで来るの大変だったわ。早く温かいコーヒーが飲みたい」

 私はお冷の入ったコップを彼女の前へ差し出した。ひとみさんはもう注文を決めてるのか、メニューは開かず手をさすっていた。

「あら、いらっしゃいひとみさん」

 店の奥から声が響いた。一拍遅れて顔を出したのはオーナー夫妻の妻のほう、紫崎伊利亜さんだった。彼女は紫色のバンダナをリボン代わりにして艶っぽい長髪をまとめ、にこやかにカウンターへつく。

 後から雪垣さんが、長女の初夏はつなつちゃんを抱いて降りてくる。伊利亜さんは二歳になる娘を店の奥であやしていたようだ。

「ご注文は?」

「いつものをお願い。もう寒くって」

「アイスにする?」

「やめてよ」

 二人は冗談を言って笑いあった。伊利亜さんは笑いながら振り返り、カウンターの後ろに備えられたコーヒー豆の瓶を手に取った。

 瓶が開かれる。瞬間、店内にコーヒーの芳香が満ちた。瓶に封じられていた香りは鼻にツンと来るほど濃く強い。だけど慣れると、この一瞬の衝撃がたまらなく癖になる。

「パパ、折り紙」

「うん? はいはいお姫様」

 私の後ろで雪垣さんと初夏ちゃんが喋っている。彼はテーブルの上に備えられていた紙ナプキンを一枚手に取って、それを器用に正方形に切り取っていく。伊利亜さんがお店で仕事をしているとき、初夏ちゃんがよくやる遊びだった。

 一方、伊利亜さんは瓶から掬い上げたコーヒー豆を大きなミルへ入れていく。手で回す大きなハンドルを握り、ゆっくりと動かす。硬い豆を砕く小気味いい音が響いた。

「そうだ、伊利亜さん。あの件なんだけど」

「それなら準備できてるわ。でもまずは温まりましょうよ。そう急ぎでもないんでしょう?」

「それが、もうひとつお願いしたいことができちゃって」

 ひとみさんは脱いであったコートを探り、一枚の紙を取り出した。ノートの切れ端のような紙で、ここからでははっきり読めないが何か書いてあるらしい。

 伊利亜さんはコーヒーを挽く手を休めず、怪訝そうに眉を持ち上げた。

「それは?」

「暗号、って言えばいいのかしら……雪垣さんにお願いしたいんだけど」

「これは蛇だぞぉ~……え? ごめん、なに?」

 初夏ちゃんと遊んでいた雪垣さんは急に名前を呼ばれて困惑した表情をした。ナプキンの切れ端を手にしてそんな顔をしていると随分間抜けっぽく見えてしまう。

 ひとみさんは立ち上がり、手にしていた紙を雪垣さんへ手渡した。四つ折りのそれを彼が開く。ちらりと覗き込んでみると、子供のものらしい字で無数の文字が書かれていた。だが、文字は意味のある言葉の羅列になっておらず読めない。

「これは手紙……かな?」

瞳馬とうまがくれたのよ。サンタさんへの手紙だって」

 瞳馬くんは小学二年生の、ひとみさんの一人息子だ。坊主頭の小さな少年の顔が思い出される。

「ほう、彼が?」

 雪垣さんは面白そうに呟き、手紙をひっくり返したりして観察した。初夏ちゃんは紙ナプキンの即席折り紙で何かを黙々と作っていて、手紙には一切興味を示さない。

「どれどれ」

 雪垣さんが眼鏡の位置を直して手紙に視線を落とす。私も彼の隣に並んで文面を読んでみたが……。

『サンタさんへ

 くりきなすきますのなぷれききぜんなきなとはいきりきまなせんな

 そきのきかななわり

 きおななかあさききんにおななやすきなみをきくきだななさきい』

「……なにが書いてあるのやら?」

「それがわからなくて……このままだと……」

 ひとみさんが初夏ちゃんのほうを見て言葉を切った。まだサンタさんを信じている小さな彼女に気を使ったのだろうけど、言いたいことはわかる。最近のクリスマス商戦は厳しい。瞳馬くんの希望が人気のゲーム機ならば、いまから買いに走っても間に合わないかもしれない。それは親として避けたい事態のはずだ。

 とはいえ、子供にとってクリスマスプレゼントはサンタさんが魔法でひょいと用意するもの。親の苦労はわからない。だからこんな暗号めいた手紙を用意してしまったと。

「もしかしてだけど」

 雪垣さんは呟いて、ひとみさんに手紙を返した。

「サンタさんへの手紙はママが渡すって言ったりした?」

「ええ、でもなんでそれを?」

「やっぱり」

 彼は立ち上がって伸びをした。私とひとみさんは彼の発言の意味がよくわからず、お互いの顔を見合わせる。

「暗号というのは読まれたくない人には読まれず、読んでほしい人には読んでもらえるようにするための手段だからね。サンタさんへの手紙で暗号を使うということは、母親には読まれたくなく、しかしサンタさんには理解してほしい内容が書いてあるんだろう」

「あら、もしかしてもう解けたのかしら。さん」

「まぁね」

 伊利亜さんの言葉に雪垣さんが得意そうな顔をする。彼は初夏ちゃんの頭を撫で、カウンターへと歩み寄った。

「なんて書いてあったの?」

「すぐに答えを出してはつまらない。もう少し考えてみては?」

 ひとみさんは勢い込んで尋ねた。だが雪垣さんはコートを手に取って飄々とかわすだけだった。

「じゃ、俺は竜人りゅうとを保育園に迎えに行ってくるかな」

 竜人くんは紫崎夫妻の長男だ。そろそろ保育園が終わる時間になっている。

「その前にヒントくらい頂戴よ」

 伊利亜さんが淹れ終えたコーヒーをサイフォンからカップに注ぎつつぼやいた。雪垣さんは顎を手で擦りながら考える。

「そうだな……暗号とは言っても小学二年生が考えるものだからね。理屈としてはそう難しいことはしてないよ。自分が小学生ならどんな暗号を作るか、あるいは作れるかを考えてみればいい。基本的には元ネタありきの暗号になるだろうね。児童向けの本とか雑誌とかによく載ってそうなやつ」

「うーん……もしかして」

 ひとみさんは手紙をほとんど睨みつけるようにしながら口を開いた。

「これ……なにか関係があるのかしら」

「どれですか」

 私が覗くと、ひとみさんは手紙をこちらに見せてくれた。彼女が指さしているのは手紙の左隅に描かれている、黒い三つの三角形だった。山のように連なっている。鉛筆で塗り潰すときにぐりぐりと押し付けたのか、そこだけ紙がへこんでしまっていた。

「もしかして、暗号を解くヒントとか?」

「そうかもしれないけど、これが一体何なのかさっぱりわからないのよ。雪垣さんは分かった?」

「いや、それはよくわからなったから無視した」

 雪垣さんはコートのボタンを閉じながら平然と言った。

「ノーヒントで解いたんですか?」

「得意だからね」

「また嫌味言って。さっさと竜人を迎えに行ったら?」

「ヒントが欲しかったんじゃないのか?」

 伊利亜さんに突っ込まれて雪垣さんは肩をすくめた。彼はドアノブに手をかけ、扉を少しだけ開いた状態で止まった。

「そうだひとみさん。過去にクリスマスプレゼントとして瞳馬くんに何を送った?」

「え? そうね……」

 ひとみさんは突然の質問にコーヒーカップを持ち上げる手を止めた。

「確か、去年はヒーローものの玩具だったかしら。その前も似たようなので、それより前は絵本とか……」

「なるほど、全容が見えてきたぞ……」

「ちょっとあなた。寒いから早く行くか扉を閉めるかしてほしいんだけど?」

「おっと。それじゃ行ってきます」

 伊利亜さんに追い立てられて、雪垣さんはぬるっと扉の隙間を通り抜けて店から出て行った。後には謎の暗号と下がった室温が残される。

「……結局、暗号は棚上げね」

「そっちはあの人が帰ってきてからとっちめればいいわ。それよりも当初の問題を片付けましょう」

 伊利亜さんはそう言うと、サイフォンを持ってお店の奥へと姿を消した。ひとみさんがコーヒーを飲みながら手紙と睨めっこを再開したので、私は初夏ちゃんの隣に座って彼女が折り紙を完成させるのを見守った。やっこさんを折っているようなのだが、出来が気に入らないらしく何度も同じところを折ったり戻したりしていた。

 しばらくして初夏ちゃんがようやく次の工程に進んだころ、店の奥から香ばしい香りが漂ってきた。顔を上げると伊利亜さんが店の奥から戻ってきていた。彼女は手にしたお盆の上に二つのお皿を載せている。ひとつは大きな平たいシチュー皿で、もうひとつはおおぶりなマグカップだ

「それは……」

「ひとみさんの悩みの種、クリスマス用のスペシャルメニューの試作品よ」

 匂いにつられて初夏ちゃんが折り紙から視線を外した。私は椅子から彼女を抱き上げてカウンターまで連れて行ってあげる。

「クリスマス用の? うちのお店のですか?」

「そうじゃなくて、私が家で作るレシピを相談してたのよ。せっかくのクリスマスに休みが取れそうだったから、特別な料理を作ってあげたくて」

 ひとみさんは普段忙しいからと呟いた。彼女は女手一つで瞳馬くんをここまで育ててきたが、最近は仕事が大変で彼と一緒に過ごす時間が減っているらしい。事実、彼女が『パラダイスの針』に来店したのも久しぶりだった。

「せっかくメニューを考案したんだから、うちでも出そうかしら。クリスマス限定メニューとして。ひとみさんたちもうちで食べていけばいいのに」

「ありがとう、伊利亜さん。でも、なんだかんだで急にシフトが入るかもしれないから」

「そっか。スケジュールが不安定だと大変ですよね」

「それじゃあやっぱり、お家で作れるほうが都合がいいわね。というわけで、まず試作品一号ね」

 伊利亜さんはお盆の上からマグカップを取ってカウンターへ置いた。マグカップの上はパイで蓋がされている。ふっくらと焼きあがった褐色の生地がパリパリで美味しそうだ。香ばしい匂いの正体はこれだったのか。

「シチューのパイ包みですか。豪勢ですね……でも難しそう」

「見た目より簡単よ。普通にシチューを作って、冷ましてカップに入れてから冷凍のパイシートを被せてオーブンで焼けばいいんだから。やっぱりうちでも出そうかしら。パイシートはいくらでもあるからシチューの材料だけ融通して……」

「冷凍のパイシート?」

 私はマグカップをまじまじと見て言った。私につられて、椅子に座る初夏ちゃんもカップへ顔を近づける。

「……もしかして、お店で出してるパイって全部冷凍の……」

「そう。業務用でまとめて買うと安上がりだし、いちから生地なんか作ってらんないもの」

 突然のぶっちゃけだった。

「……いいんですか、それ」

「いいのいいの。うちはケーキ屋じゃないんだから。旦那もお菓子作りが専門じゃないし、業者の生地のほうが長持ちするしおいしいの」

 哀れ雪垣さん。妻にお菓子作りの腕が認められていなかった。あの人、製菓衛生師の資格も持ってるのに……。

 いや、雪垣さんならへらへら笑って「事実だし」で済ますか。

「シチューはあの人のお手製だから味は保証するけどね。どうぞ」

 伊利亜さんは雑に夫の名誉を回復しつつ、ひとみさんにスプーンを渡した。彼女は受け取った大ぶりなスプーンを、少し位置を迷ってからパイの頂点へまっすぐ突き立てた。パリパリと音を立てながら褐色のドームが崩れ落ちる。パイに封じられていたクリームシチューの甘い香りがふわりと広がって温かい。

 ひとみさんはパイ生地と一緒にシチューを掬った。シチューへ落ちたばかりのパイはパリッとした硬度とシチューを吸った柔らかさを同居させている。一緒に匙に乗るのはかたちのいいホタテ貝だ。

「おぉ、具が豪華」

「試作品だから採算度外視で入れちゃったわ。シチューは中の具材を変えるだけで印象がガラッと変わるから便利よねぇ。うちの人がお肉好きじゃないからこれには入ってないけど、ひとみさんが作るときは瞳馬くんの好みに合わせて具を変えてちょうだい」

 ひとみさんがスプーンを口へ運ぶ。彼女は静かに目を閉じ、ゆっくりと口の中でシチューを味わっているようだった。

「うん……ホタテがあると食感のアクセントにもなっていいわね。具を変えるだけなら手間もないだろうし」

「そうね。旦那は切り方とか炒める順番とかごちゃごちゃ言ってたけど、最悪全部一緒に鍋に入れちゃえば同じよ。ルーのレシピもあるんだけど、正直市販で十分だからいらないわよねぇ」

 雪垣さんのこだわり、まったく尊重されてないっ……。

「なんか、ここでバイトしてから喫茶店のイメージ随分変わっちゃいましたね。もっと手間暇かけてるかと」

「コーヒーは手抜きしてないわよ? でも、全部に本気出したら商売にならないでしょ? 力入れるところと抜くところは見極めないと。ね、ひとみさん」

 伊利亜さんはひとみさんに水を向けた。だが、彼女はシチューをじっと見つめて難しい顔をしていた。

「どうしました?」

「あぁ……えっと、シチューはとてもおいしいし、作ってみようと思うんだけど……」

 ひとみさんはスプーンでカップの縁に残ったパイ生地を撫でた。

「これ、オーブンないと出来ないじゃない? うちにはなくて……」

「そういえば」

 確かに、オーブンのない一般家庭のほうが多いか……喫茶店で働いているとその辺の感覚が分からなくなってしまうが、私の実家にもオーブンなんてなかったし。

「大丈夫よ」

 だけど、伊利亜さんはひとみさんの訴えを予想済みとばかりにもうひとつのほうのお皿を差し出してきた。平たいシチュー皿だ。

 中身はマグカップと同じシチュー。でも、マグカップのほうにはなかったものが入っている。棒状の茶色い物体が。

「……なんです? これ」

 私はお皿を覗き込んで言った。ひとみさんもその謎の物体を見つめて首を傾げている。

「これもパイよ。形状が違うからわかりにくいけど、ただ生地を棒状に切って焼いただけ。この形ならフライパンに並べて焼けばいいからオーブンなしでも出来るわ」

「へぇ、これならうちでも」

 ひとみさんは棒状のパイを一本手に取った。先端にシチューが絡みついている。フォンデュみたいに食べても楽しそうだ。遊び心のある料理でクリスマスにぴったりかもしれない。

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