制服したい
「明片」
登校してすぐ、机の上で空のことを思い出してはうなだれていると、赤波さんに突然声をかけられる。
「ただの臆病な奴だと思って、正直あんたのことバカにしてた。でも、遠乃を取り戻そうとする明片、かっこよかったよ」
赤波さんが、私の肩にぽんと手を置いた。
「赤波さん……」
気づけば、赤波さんだけじゃない、クラスのみんなが私の周りに集まっていた。みんな、温かい笑顔で赤波さんの言ったことに同意している。
空と出会って、ほんの数週間しか経たなかったのに、多くのことが変化した。臆病で、ただ見ているだけで何も行動しない私が、動き出すことが出来た。赤波さんやクラスのみんなと打ち解けることが出来た。そして……大切な友達と再会できた。
校庭に視線を向けると、あの巨大な穴は忽然と消えていた。あの日は……空がいってしまった日はまだあった。それから土日を挟んで、今日来たら何事もなかったようになっていたのだ。処理とかそういうことを考えたらなくなっていて良かったのかもしれない。でも、なんとなく、空がいたという痕跡がなくなってしまったようでさみしさを感じてしまった。
先生が入ってきて、開口一番「また転校生くるぞー」と言いながら出席簿を教卓に置く。
一瞬、空が転校生として紹介されたときの光景がよぎる。
やがて、先生の合図で教室に入ってきた人物を見て私は固まってしまった。
「遠乃空だ。よろしくな」
あの時と全く同じ格好で、にっと笑う空に、教室中から歓声があがる。私は、考えるより先に勝手に身体が動いていた。教卓の前に立つ空へ駆け寄ると、きつく抱きしめる。
「どうしたんだ瞳」
不思議そうにしながらも抱きしめ返してくれる手に、涙が出そうになる。また、空と一緒に学校生活が送れるんだ。
「だって……空が戻ってきてくれたことが嬉しくて」
「約束しただろ?必ず帰ってくるって」
そうだった。空は手を振った後、私だけに向けて、外には聞こえない声で言ったんだ。「必ず帰ってくる」と。
「私がここに来たのは、征服したいじゃなくて、瞳と制服を着て生活したい……だからな」
得意そうにそう言う空に、私は笑顔で大きく頷いたのだった。
制服したい! 星乃 @0817hosihosi
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