宇宙人と異変
空の不思議な力がみんなの目に触れて数日が経った。あれから、赤波さんは私の椅子を使わなくなったし、無視もしなくなった。それと同時に、他のクラスメイトとも普通に話せるようになった。空を含めた数人で放課後どこかへ寄ったり、教室内で談笑したり。普通じゃない出来事が起こって、普通の生活が始まった。
それでも、赤波さんのグループとは気まずいままなのは変わらず。ぎこちない笑み浮かべて挨拶をする程度。前に比べたらましなのだけれども。
そして、そんな普通の日常に、また普通じゃないことが起こった。
午後の授業中。突然、校庭の方から爆音がして、教室内にも一気に煙臭さが広がった。何事かと、クラスの大半が窓辺に駆け寄る。私も空と共に窓の外を見ると――
「何あれ……」
変わり果てた校庭の様子に私は唖然とする。校庭の真ん中に、大きな円形の穴ができていた。さっきの衝撃の影響か、まだ土煙が上がっている。隣の空を見ると、いつになく表情が険しかった。
「空、どうしたの?」
「もしかすると……」
そこで一旦言葉を切ると、今度は悲しそうな表情で言った。
「迎えが来たのかもしれない」
その様子を見て、嫌な予感がした私は空に尋ねる。
「どういうこと……?空、帰っちゃうの?」
口にすると、途端に実感がわいてきて泣きそうになってしまう。まだちゃんと空から何か聞いたわけでもないのに。
「帰らなければいけないかもしれない。……でも、私は帰りたくない」
空の綺麗な瞳と目が合う。
「私はまだ、瞳といたい」
それを聞いて、とても嬉しかった。征服したいからとかじゃなくて、私といたいと言ってくれたその言葉が。
その夜。どうしても眠ることが出来なかった私は、空の寝る部屋に枕を持っていった。空は何も言わずに迎えてくれた。そんな空に、私はずっと気になっていたことを聞く。
「何で急に迎えが来たの?」
空はここに来た理由を、征服したいからと言っていた。それは宇宙人全体の総意で、空がここにいることは代表してやって来たようなものなのだと思っていた。
でも、あの校庭の惨状を見る限り、そうではなさそうだ。
「私は、独断でこの地球に来たんだ。それを良く思わない奴らが、仕掛けてきたんだと思う」
「どうして地球に来たかったの……?」
「それは……」
そこで一旦言葉を切った空。何かを迷っているように見える……薄々感じていたけど、やっぱり目的は征服じゃないのかもしれない。
「明日話す。だからもう、瞳は寝ろ」
そう言うと、空はこちらに背を向けて、掛布団を思いっきり頭までかぶってしまった。呼び掛けても全く動く気配がない。諦めた私は渋々自分の部屋へと戻ったのだった。
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