第二章第6話 残された問題

「164 点で 10,000 マレとなります」

「はい」


 俺はガチャから出てきた不用品を買い取ってもらったのだが、たったこれだけにしかならなかった。これでは百連すら引くことができない。


 中古になっていて少し痛んでいたものもいくつかはあったが、それでもほとんどは新品だ。それでもこの程度にしかならない事を考えると神引きできなかった場合のガチャを引きすぎるのも考えものだ。


 やはりセリアさんの言う通り、きちんとお金を貯めるという事を考えた方が良いかもしれない。


 ちょうどコンプできたのだし、しばらくはガチャ禁したほうが良いかもしれない。そしてコツコツとお金を貯めて、それで無理なくガチャを引くようにしよう。


「ディーノさん?」


 少し考え込んでしまった俺をセリアさんが心配そうに見つめている。


「あ、いえ。ありがとうございます。やっぱりギフトはあまり使いすぎないようにしなきゃなって思っていただけです」


 俺がそう答えると、セリアさんはニッコリと微笑んだ。


「はい。そうしてくださいね」


 こうして俺がセリアさんのカウンターから離れると、今度はカリストさん達が声を掛けてきた。


「ディーノ君。元気になったんだね」

「あ、はい。助けてくれたそうですね。ありがとうございました」

「いや、僕たちは見ていただけで何もできなかったからね。せめてこれくらいはしないと罰が当たるさ」

「そんな……」


 恐縮している俺をカリストさんは奥へと誘ってきた。


「ちょっと話があるんだけど、いいかな?」

「俺にですか?」

「ああ。病み上がりで申し訳ないけどきちんと話をしておこうと思ってね」

「はい」


 こうして俺はカリストさんと共にギルドの建物の奥へと向かい、小部屋へと入った。するとそこにはメラニアさんにルイシーナさん、そしてリカルドさんという『蒼銀の牙』のメンバーが勢揃いしていた。


「あ、ディーノ様! よかった」

「ディーノくん!」

「おう。目を覚ましたか!」

「ご心配をおかけしました。それと、ありがとうございました」


 俺は皆さんに感謝を伝える。この人たちが居なければトーニャちゃんも俺もあそこで死んでいたはずなのだ。感謝してもしきれない。


「そんな。ディーノ様があそこであれだけ勇敢に戦ってくださったおかげですわ。それに、ディーノ様がいらっしゃらなければ飢え死にしていましたわ」

「そうよ。ディーノくん。もっと自信を持っていいと思うわ。私たちの方こそ、ディーノくんにお礼を言わなきゃならないわ。あそこで戦って、あの悪魔を倒してくれてありがとう」

「おうよ。ディーノのあの勇気に俺たちは助けられたんだ。ありがとよ。それにな。お前が戦ってる間、カリストなんて震えてたんだぜ」

「おい! それは言わない約束だろう? それに僕だけじゃなくてリカルドもそうだったじゃないか」


 良かった。いつもどおりの『蒼銀の牙』だ。


「いえ。全部装備と、それからトーニャちゃんや皆さんのおかげです」

「その装備は君のギフトの力なんだから、君の力だよ」

「……はい」


 褒められ慣れていないせいかやはりどうにもこそばゆい。


「さて、それで本題なんだけどね」

「はい」


 カリストさんが真剣な表情になって話を切り出してきた。


「アントニオさんが引退してしまった以上、サバンテ支部で最高ランクのパーティーは僕たち『蒼銀の牙』だ。だからその責任を果たすため、僕たちは『悪魔の迷宮』の攻略に挑むつもりなんだ」

「はい」


 どうやらあの迷宮にはそんな名前が着いたらしい。


「そこで、『断魔』の二つ名を持つDランク冒険者である君に協力をお願いしたいんだ」

「僕が協力……ん? 二つ名ですか?」


 何やら耳慣れない言葉につい本題とは関係ないことを聞き返してしまった。


「ああ。アントニオさんがあちこちで吹聴して回っていたからね」


 うわぁ。滅茶苦茶恥ずかしい!


「それで、どうかな? 君のそのギフトを使うにはかなりのお金がいるみたいだしね。迷宮を攻略すればかなりの報奨金を領主様から貰えるだろうし、悪い話ではないと思うよ」

『わぁっ。いいね。いいね! ディーノっ! やろうよっ! ガチャが引き放題になりそうだよっ!』


 なるほど。ガチャが引き放題というのは確かに魅力的……いや、俺はしばらくガチャ禁すると決めたのだ。


 だがそれは別にしても、冒険者としてカリストさんたちと一緒に迷宮攻略の経験が積めるというのはすごいチャンスなのではないだろうか?


 まだ冒険者デビューして半年も経っていないルーキーの俺が町一番の冒険者パーティーに誘われているのだ。


 よし!


「やります! やらせてください!」

「そう来なくっちゃね。それにアントニオさんの恋人のディーノ君なら妙な問題も起こさないだろうしね」

「え?」


 何だって? どうしてそんな話が?


「おや? 秘密だったのかな? 大丈夫。僕たちはまだ誰に話していないよ」

「ちょ、ちょっと待ってください。どうしてそんな話になってるんですか! トーニャちゃんは師匠ですが、断じてそういう関係じゃないです。俺は普通に女の子が好きですから!」

「あれ? おかしいな。セリアちゃんがディーノ君はアントニオさんとベッドを共にしているって言っていたよ。本人たちの口から聞いたって顔を真っ赤にして話してくれたんだけどな」

「違いますから! それ、絶対に違いますからね! トーニャちゃんが勝手に言っただけですから! ちょっと俺セリアさんの誤解を解いてきます!」


 俺は大慌てで部屋を飛び出すとセリアさんのところへと向かったのだった。


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次回の更新は 2/11(木)21:00 を予定しております。


3/15 発売予定の拙作「町人Aは悪役令嬢をどうしても救いたい」第一巻の書籍化作業が想定以上に時間がかかっているため、三日間更新をお休みさせていただきます。

いつの間にか Amazon などでの予約も始まっていてお尻に火が点いていまして……(汗)


何卒、ご理解いただけますようよろしくお願いいたします。

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