第16話 ☆5☆4確定十連冒険者ガチャ

「ありがとう! 本当にありがとう!」

「いえ。お役に立てて何よりです」

「それでお礼だが、いくら払えばいい?」

「じゃあ、 500 マレで」

「えっ?」

「えっ? 高すぎますか?」

「違うよ! そんなに安くていいのかい? それは安い時の金額じゃないか。たしかに君が買った時はその値段だったのかもしれないが、今の状況ならその十倍は吹っ掛けたって僕たちは払うよ?」

「え? そ、そうだったんですか……」

『ディーノったら商売へたくそー』


 フラウは俺をからかうような口調でそう言いながら周囲をくるくると飛び回っている。


「うーん、でも命の危険があったのにそこにつけこんでお金をもうけるのはさすがにちょっと……」

「そうか。ありがとう。お言葉に甘えることにするよ。ただ、それじゃあ僕たちも気が済まないからね。君が困った時はCランクパーティーである僕たち『蒼銀の牙』が必ず手助けをすると約束するよ」

「ありがとうございます。ええと、俺はディーノです。Eランクです」

「ああ、そうだ。自己紹介がまだだったね。僕はカリスト。『蒼銀の牙』のリーダーでCランクの剣士だよ。それでこっちのでかいのがリカルド、そっちの彼女がルイシーナ。それとディーノ君に命を救ってもらったのがメラニアだよ」

「おう。オレがリカルドだぜ。重戦士でDランクだ」

「私はルイシーナ。水属性魔術を使うわ。よろしくね」

「よろしくお願いします」


 リカルドさんはトーニャちゃん程ではないがかなりのガチムチだ。茶髪に茶色の瞳に少し日焼けした肌がよく似合っている。ルイシーナさんはスレンダーな女性で、セミロングの黒髪と茶色の大きな瞳がチャームポイントだ。


 一方のメラニアさんはウェーブがかった長い青髪の女性で背はあまり高くないがとても豊満な女性だ。治癒や解毒、浄化を担当していたらしいので恐らく神官やそれに類するようなギフトを持っているのだろうと思う。


「う……ここは?」


 メラニアさんが目を覚ましたようだ。


「メラニア!」


 カリストさんが一番に駆け寄った。


「メラニア」「メラニアちゃん!」


 リカルドさんとルイシーナさんも続いて駆け寄る。


「わたくしは……?」

「ああ。そこのディーノ君が毒消しポーションを譲ってくれたんだ」

「まぁ。ディーノ様、貴重な品をありがとうございます」


 メラニアさんは上半身を起こすと俺にそうお礼を言ってきた。水色の瞳がとてもキレイな女性だ。そして、豊満なバストにどうしても視線が吸い込まれてしまう。


『ちょっとー! あたしと言うものがありながら他の女を見ないでよね!』


 いや。そもそも俺はフラウをそういう目で見たことはないんだが……。


「いえ。無事で何よりです」

「メラニア。ディーノ君は利益も取らずに原価で譲ってくれたんだ。だから僕たちは――」

「まぁ! ディーノ様。わたくしは必ずこの御恩をお返しいたしますわ。ディーノ様に神のご加護のあらんことを」

「ありがとうございます」


 こうして元気になったメラニアさんたちと共にギルドに戻った俺はセリアさんの立ち合いの下、500 マレをリカルドさんから受け取った。セリアさんにも価格が安すぎると苦言を呈されてしまったが、俺としてはこれでも利益を得ているので必要以上のお金を貰う事にはどうにも後ろめたい気分になってしまうのだ。


 それに、Cランクパーティーがいざという時に味方になってくれるという事だけでもお金以上の価値があるのではないだろうか?


 こうして目標金額を稼いだ俺がやるべきことはただ一つ!


 そう、ガチャを引くことだ。


「フラウ、どうやらついにこの時がやってきたぞ」

「そうだねっ。とうとうこの時がやってきたね」


 ガチャを引けるとあって、酒を飲んでいるわけでもないのに俺のテンションは爆上がりしている。


「見ろ、ここに、1,000 マレの大金がある」

「うん。すごい大金だね」

「これで、俺はっ! ガチャをっ! 引くっ!」


 そう宣言した俺に対してフラウはパチパチパチと拍手を送ってくれる。


「それじゃあ、[チケットを購入する]をタップしてくれる?」

「おう」


 俺は爆上がりのテンションの中購入ボタンをタップする。


「そうしたら、スクリーンにお金を投入して。お金を入れれば大丈夫だよ」


 フラウの案内に従って俺は金貨を一枚ずつスクリーンに投入していく。スクリーンに投入するというのは何とも不思議な気分だが、金貨をスクリーンに触れさせるとそのまま吸い込まれて消えるのだ。まるで硬貨を自動販売機に投入しているような感じといえばわかりやすいだろうか?


 それと何度も同じことを言って申し訳ないが、裏が透けて見えるスクリーンにお金を投入するというのは本当に本当に不思議な気分だ。


 そして十枚の金貨を投入すると[購入]ボタンがタップできるようになったので俺は早速チケットを購入した。


 それから元の画面に戻るとガチャが引けるようになっていた。


────

有償チケット限定!「☆5確定 1 枠、☆4以上確定 1 枠 10 連冒険者ガチャ」!

(残り 1 回、有効期限 9 日)


☆5提供内容:

【火属性魔法】【土属性魔法】【水属性魔法】【風属性魔法】【剣術】【体術】【弓術】【槍術】【杖術】【警戒】


[ガチャを引く]


保有チケット:1 枚


・提供割合

・提供元:アコギカンパニー

────

注)提供割合と提供元は非常に小さな文字で書かれている


「よし、フラウ。準備は良いか?」

「もっちろん。ディーノたいちょー! フラウ隊員は準備万端でありますっ!」


 なるほど。今日はそういうテンションで行くのか。よし!


「フラウ隊員。今日のミッションは失敗することのできない非常に重要なミッションだ。フラウ隊員の奮闘を期待する」

「さーいえっさー!」

「よし。では、こいっ!」


 俺はタイミングを見計らって[ガチャを引く]ボタンをタップした。


 そしていつもの演出が始まり、妖精たちが箱をぶら下げながら一生懸命飛んできた。


 木箱が八つ、そして銀箱と金箱だ。


 これはきっとこの最後の二箱が確定枠なのだろう。だが、木箱だって妖精たちの頑張りでより上位の箱に変わる可能性があるのだ。


「頑張れ、行けっ! 行けーっ!!!」


 俺の気合に応えるかのように妖精がパワーを送り、最初のひと箱が銅箱へと変化する。


「よーしっ! 馬糞回避!」


 割とこれは切実だったりする。本当にあれは臭いのだ。


 そして馬糞を回避した銅箱からは『鉄のスコップ』が出てきた。ええと、何本目だったかな?


 次の二箱は変わらずに『糸』と『皮の紐』だった。


 まぁまぁまぁまぁ。


 このくらいは想定の範囲内だ。☆2が出やすいのは当然の話だからな。この程度で一喜一憂していてはガチャなんて引くことはできない。


「次! 来たっ!」


 次の箱は木箱から銅箱へと変化し、『テント(小)』が出てきた。


 あれ? なんかこれもかなりたくさん出てきている気がするぞ? 何個目だ?


 それから八箱目まで全て木箱のままだった。そして残念ながら最後の木箱で『馬の糞』が出てしまった。


 くそっ!


 馬の糞だけに。って、違う! 俺は何を考えているんだ!


 しっかりガチャに集中しなければ。


 いよいよ次からは確定枠だろう。


 最初のこの銀箱は☆4以上確定枠のはずだ。


 そして俺は知っている。フラウによく似たこの妖精はきっとできる子だと。


「来い! 来い! 来いっ!!」


 残念ながら俺の気合の言葉には応えてくれず銀箱のままだったが、ステータス強化がくれば☆5に匹敵する大当たりだ。


 特に MP 強化が欲しい!


 そして銀箱が開き、中身が飛び出してくる。


『☆4 MGC強化』


「あーっ! 惜しい! でもそれじゃねぇーっ!」


 俺は思わず頭を抱えてしまった。


「えー、いいじゃん。じゃなかった。たいちょー、ステータス強化は良いと思うのでありますっ!」


 いや、まあ、そうだけど。だが【水属性魔法】のスキルを活かすためにもいち早く MP をアップさせたいのだ。


 そして次は☆5確定枠だ。


「このラスイチに全てを懸ける! 来い! 来い! 来いーーーーーっ!!」


 俺の気合に呼応するかのように金箱がゆっくりと開かれる。そして出てきたのは!


『☆5 火属性魔法』


「よーし! よし! よし! ん? あれ?」

「おめでとー! 後は MP を引けばディーノは魔法使いだねっ!」


 ああ、早く MP 強化を引きたいものだ。


 いや、ホント。切実に!

 

────

今回のガチャの結果:

☆5:

 火属性魔法

☆4:

 MGC強化

☆3:

 鉄のスコップ

 テント(小)

☆2:

 糸

 薪

 皮の紐

 藁しべ

 枯れ葉

 馬の糞


================

動物の骨が出なかった(´・ω・`)


ちなみに、鉄のスコップとテント(小)はどちらも三回目です。


筆者としてはもう少し話を都合の良いものが出て欲しかったところですが、ガチャの神様(乱数)に火属性魔法とMGC強化を使えと命じられてしまいましたのでこれで頑張ってみます。

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