僕の夢に向かって

NOTTI

第1話:僕の夢に向かって

康太朗はアラサーになって久しぶりの同窓会に参加した。同級生は家庭を持っている子も離婚してシングルマザーやシングルファザーになっている子もいた。その中の数人は中学校を卒業してから疎遠になっていた。理由は当時のいじめグループのリーダーとして学年に君臨していた番長的存在の生徒だった。しかし、今は家庭を持って、五歳になる息子と二歳になったばかりの娘の父親になっていた。いじめていた人でも幸せになれることを肌で感じていた。しかし、康太朗も家庭を持って、子どももいる。ただ、今は奥さんになっているが、まだ彼女だった時にはだいぶ迷惑をかけてしまった。


一五年前の高校一年生の夏のことだった。康太朗は学校の屋上にいた。理由は度重なる不運が積もりに積もってしまい、自分の生きたい気持ちがどんどん低下していき、ここから身を投げようとしていたのだ。当日は複数の友人と出かける予定だったが、グループチャットに「ごめん。今日は急用が入っていけなくなった。」と送信して、そこからスマホの電源を切った。僕は誰も気が付いてくれないだろう、そっとしておいてほしいと心の中でつぶやいた。


しかし、当時一番面倒見が良かった剛志だけは異変に気が付いていた。というのも、彼は以前にも同級生の拓都が電車に飛び込もうとした時にも異変に気が付いて助けに来たことがあった。連絡を送ってから一時間後に剛志が自分の家に来たが、僕はいなかった。そして、剛志から連絡を受けた康二が学校の正門の前に着いた。康二が屋上を見上げると誰か人が立っているように見えた。康二は誰かが学校に勝手に入っているのだろうと思った。しかし、何かあってからではまずいと思い、先生に連絡をして学校に来てもらった。すると、そこに立っていたのはなんと康太朗だった。実は剛志も康二も僕がいじめられていることは知っていたようだが、彼等には相談をしたことも現場に出くわしたこともなかったため、それが事実なのかあいまいだったのだという。


 そして、僕は屋上から飛び降りようとした。その時に背後から人の気配を感じた。そして、身体が柵とは逆の方向に倒れていった。康太朗は「なんで邪魔するの?ほっといてよ。」と言って振り返ると同級生の心優しい番長である正寿がいた。彼はラグビー部で力には自信があった。彼はグループチャットには参加していないが、クラスと学年のグループチャットには参加していたため、剛志が個別に連絡を取っていたようだ。


 そして、約二年掛かったが、僕は少しずつ以前の状態を取り戻していった。そして、彼には新たな夢が見つかった。それは、「いじめを受けた人を救える場所を作りたい」という夢だった。そして、高校二年生から受験勉強と経営学とマネジメント論などを少しずつ勉強していた。その姿を見て、他の同級生は「大学行っても留年するんじゃないの?」、「今更そんなに勉強していても無駄だよ」と言われたことがあった。そして、大学受験を間近に控えた最後の登校日に先生からこう言われた。


 「康太朗、自分の力を信じて、みんなを見返してやれ。そうすればお前はヒーローだよ」と。


 僕はその言葉を信じて大学に合格して我が道を進んでいった。


 すると、今まで見たことのない世界や幸運が次々と訪れた。


 まず、大学のクラス分けで一番上のクラスの一員としてスタートできたことで、来年度以降の必修クラスは一番上のクラスが確定した。そして、成績もトップ二〇には入れたことで、選抜クラスの優先履修権が得られた。


 そして、一番の幸運は人生初めての彼女が大学出出来たことだ。当時一度も付き合ったことが無かったため、普通に大学とバイト先とアパートを行き来する生活だった。しかし、その生活が一変する出来事が突然起きた。それは、大学の同じ授業に出て、グループディスカッションをしていた時にいろいろ発言をしていた。そして、その授業の終わりにある女子友達から「孝太朗君に会わせたい子がいるんだけど」と言われて、後日近くのファミレスに行った。すると、自分にはもったいないくらいの美女が女子友達と一緒に座っている。康太朗は何度も目をこすり、頬をつねっていた。それぐらい信じられないミラクルチャンスだった。


 彼女(後の奥さん)と初めてあった印象はまるで女優さんのような顔立ちに端正なルックスと無邪気で明るく、前向きな感じだった。当時の僕とは正反対でどうしたら良いのか分からなかった。とりあえず、友達に会い、彼女とも会った。ファミレスに入って数時間が経っていたが、楽しい時間が過ごせた。


 その後、彼は彼女とデートや食事を重ね、お互いにお互いを知りながら愛を育んでいった。


 しかし、大学三年生で人生最大の挫折を味わった。それは、就職活動が始まり、周囲が就職活動一色になっていたが、最初は不安しかなかった。というのは、学業面は問題なかったが、教養面で問題がいくつかあった。しかし、それを乗り越えなくてはいけないという気持ちが大きくなってきた。


 就活を始めて半年が経った頃、僕は心を病んでしまい、就活が出来なくなってしまった。一方で、彼女はスムーズに就活が進み、なんと大学三年生の一二月に内定が出ていた。それから、彼女は僕の就活も手伝ってくれた。そして、大学四年生の七月に内定をもらい、晴れて社会人として働き出すことが出来るため、路頭に迷うことはなかった。しかし、内定をもらった直後にバイト先で倒れた。そのため、彼女は心配して時間がある時には家に来て、看病してくれた。


そして、大学卒業と同時に結婚して、彼女も自分も仕事が安定したら子どもが欲しいねと言っていた。


 その話から三年後に待望の第一子となる女の子が生まれた。顔は奥さんに似ているが、パーツはすべて僕にそっくりだった。


 娘を抱っこして、改めて父親としての自覚が芽生えた。こんな可愛い我が子とこれから生活できると思うと楽しみで仕方がなかった。


 康太朗は家に帰って、家の掃除をしたり、ベビーサークルを組み立てたりと万全の準備をして、奥さんと娘を迎えたいと思った。


 そして、奥さんと娘が退院して、家に帰ってくる日がやって来た。わくわくして、病院に向かい、奥さんと娘を乗せて家に帰ってきた。


 そして、初めての家族写真を撮って、リビングに飾った。


 僕の夢はまだいくつかあるが、これからも家族の支えを受けながら頑張って行こうと思う。

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