私の処女が欲しいか?ならばくれてやる。このゲームを完成させたらね!〜金髪美女の処女は1億円の価値!?〜
鷹匠
第1話 私の処女欲しくない?(金髪美女)
「洋一……私の処女欲しくない?」
「欲しいです!」
妖艶にほほ笑む美女の口からこぼれる言葉は、悪魔のささやき。
「私の処女が欲しければ納期までにゲームを完成させなさい。もちろん私が納得するクオリティでね」
この悪魔のささやきから、俺はゲームクリエイターとして覚醒するきっかけと、仲間たちを得ることになる。
同人ゲーム制作サークル「プロジェクト・ガイア」
その双葉が南西学院大学に設立したサークルである。
これまで2本の同人ゲームを世に送り出し、同人制作とは思えないクオリティでプロデュースした双葉は、既に業界内でも有名な存在になりつつある。
プロデューサー兼ディレクターを大学三年の「工藤双葉」、前述の2本ではアシスタントディレクターとして参加したのが、大学二年の俺「
いまはノベルタイプの恋愛ゲーム「君のうたごえ」を制作中。年末のコミケで販売することが決まっている。既に販売も予告され反響も上々、これが成功すれば俺と双葉先輩の夢にまた一歩近づくはずであった。
そして「君のうたごえ」制作から俺はディレクターとして現場を任されている。これは双葉からの信頼と、成長を認められた証であった……そのはずだった。
しかしいま最大のピンチを迎えている。
シナリオ、イラスト、音楽、そして演出はそれぞれ完成度は決して低くはない。充分に商業レベルに達している素材なのだ。だが、一部の箇所が想定クオリティに達していないのだ。
これを担保すべきはゲームディレクターたる俺の責任である。
「君のうたごえ」の制作では、双葉はプロデューサーとして予算やスケジュール等、いわゆるヒトモノカネに専念していた。双葉は卒業後に備えて既に動き出しているのだ。
その夢は双葉だけではなく、洋一の夢でもある。世界市場で通用するゲームを世に送りだす。それが二人の夢だ。
その夢のためにも、天才たる双葉の後ではなく、胸を張って横を歩きたい。
明らかに自分だけで処理できる範囲をこのままでは越えてしまう。それが予測できた以上はプライドなど捨てる。俺のプライドなんぞで、このサークルに、いや双葉の顔に泥を塗るなど俺自身が許せないのだから。
「先輩、相談があります」
「来たわね。私の見立て通りなら、今日相談に来ると思ってたわ」
「ここがデッドラインです。判断を誤れば納品デッドにマスターアップが間に合いません。
先輩ならギリギリ立て直せると思いまして、フォローを頂けないでしょうか」
「……洋一、あなたが選んでちょうだい。
一つはここで私が介入して、将来的にも何かあれば私を頼り、ずっと部下ポジとしてやっていく道を選ぶのか。
もう一つは将来的に私のパートナー……あ、ビジネスのね?私の対等な相棒として同じ夢を見てくれるのか。
洋一、あなたはどちらを選ぶ?」
「……もちろん後者と言いたい。しかし俺の選択ミスで、このサークルと先輩の顔に泥を塗りたくないです。俺のディレクションでは、クオリティラインが想定より低い状態での納品が避けられない」
「洋一、あなたはベストを尽くした?あなたはチームにベストを尽くさせた?」
「俺はベストを尽くしたうえで失敗しました。チームは……よくやってます」
「フフフ……洋一、あなた分かってるのよね?クオリティラインを下げずにマスターアップを間に合わせる方法に心当たりがある。違う?」
「可能性ならば。でも無理をすれば、優秀な人材と今後の関係に影響がでます。このタイトルだけならともかく、次のタイトルに……だから」
「あなたにディレクションを任せているのは、あなたなら出来ると分かっているから。ただし、あなたが一皮向けたらの話。……あ、一皮って変な意味じゃないわよ?」
「あなたがいま考えてる方法で正解。あとは必要な人材の説得方法だけ。あなたなら関係を壊さずに説得できるはずよ。
そうね……よし、見事に私の求めるクオリティでマスターアップできればご褒美をあげましょう。なにか希望はあるかしら?」
「…な、なんでも?」
「とりあえず言ってみなさい?」
「で、では……先輩!俺と付き合ってください!」
「……あら?洋一は私と『お付き合い』したいのね?洋一はその辺の有象無象とは違い弁えていると思ってたのにねぇ〜」
「はい。俺はあなたに釣り合う男になるまでは、告白をするつもりはありませんでした。
でも、このミッションをクリアできれば俺は成長できる。あなたの半歩後ぐらいでついていけるぐらいには。
そして、いずれあなたの横に並び、あなたと同じ夢を見たい。あなたの対等なパートナーとして。
どうせ俺の想いなんて知られてるんです。ならば決意表明兼ねて言ってしまえと思いまして」
双葉は笑顔を見せ答えた。
「残念。私は夢を現実とするまで恋愛はしないと決めてるの。まあ、洋一はギリギリ将来的な候補には引っかかってるけどね、ギリギリよ?ギリギリ」
「そんなにギリギリ言わんでも……」
「フフフ……そんなにしょんぼりしないの。
……付き合ってはあげられないわ。いまはまだ……ね?」
指をくちびるに当て少しだけ顔を傾ける絶世の美女
「いいわ。あなたのやる気を極限を超えて引き出してあげるわ。
……これは軽く1億以上の価値があるわよ?」
俺は息を呑む。い、1億以上??
「洋一……私の処女欲しくない?」
「欲しいです!」
何も考えずに即答したぞ俺……
「フフフ……即答したわね?
私の処女が欲しければ納期までにゲームを完成させなさい。もちろん私が納得するクオリティでね」
「俺、悪魔に魂を捧げてでもやりますよ?本当に本気で言ってますか?」
「えぇ、美女に二言はないわ。ではゲーム風にもう一度言ってあげる。
私の処女が欲しいか?ならばくれてやる。このゲームを完成させたらね!」
美女が魔王みたいなセリフをはいた。この瞬間俺は、修羅道に堕ちてもやると決めた。
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