あの日

だるま

第1話 あの日

「ああ、またか......」

男の前には頭のない死体が転がっていた。

その日も男は上司に連れられて酒を飲みに行った。上司は酒豪だった。自然と男が飲む酒の量も増える。男は酒に弱く、すぐに酔う。



すると不思議なことに酔いから冷めたときは決まって頭のない死体が転がっている。

そして酔ったときの記憶は当然のことながら失っている。


もう慣れた......。3度目までは本当に怖かった。


だが、4度目、5度目と、死体を見る回数が増えるうちに、死体に対する恐怖はなくなった。


あるのは、「またか......」という感情のみ。いい加減飽きた。


誰がこんな嫌がらせをするのだろうか。こんなことをする人間はろくな人間に違いない。


これはもしかしたら、死体を見せて、怯え狂う様を楽しんでいるのかもしれない。


もしそうならば可哀想なやつだ。こんなくだらないことしか楽しむことがないなんて。


こういうときは何もしないに限る。そうすれば、犯人は俺に飽きるはずだ。

家に帰ろう。




そうだ、冷蔵庫に賞味期限ギリギリの酒があったはずだ。飲んでしまおう。


男は冷蔵庫から青のガラスに入った酒を取り出し、グラスに注ぐ。

男はそれを一気に飲むと、満足げな顔をした。ああ、やっぱり酒はうまいなぁ。


すぐに男の顔が赤くなった。しばらくぐったりしたあと、急に立ち上がった。

鍵のかかった金庫を開け、ところ狭しと並んでいる血まみれの7つの頭をなめまわすように眺めた。


「ああ、幸せだなぁ」



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あの日 だるま @sanufute

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