一章〜旅の始まり

5#‥対話

 あれからリッツとタツキはマインの森を抜けグレイルーズ国に入り、国境近くのサンバの街にいた。


 そしてここは宿屋の部屋の中。


 リッツとタツキは、円いテーブルに寄りかかりながら、向かい合わせで椅子に座っていた。


(ああ。タツキさんと向かい合わせで、それもこんな間近で会話できるなんて……幸せだなぁ)


 そうリッツがタツキを見ながら、ほわ〜んとしていると、


「こんな所に街があったんだな」


「はい。タツキさんは……」


「ん?リッツ。ここに来る途中で言ったよな。さんは付けなくていいって」


「あっ!そうでした。……タ、タツキは……えっと、これは会った時から思ってた事なんだけど」


 そう言いリッツは、オドオドしながらタツキから目を逸らし、


「もしかしてタツキは、別の世界の人なんじゃないかなぁって思ったんだけど」


「リッツ……。よく分かったな」


「やっぱり、そうだったんですね」


 そう言うとリッツは、タツキを見ながら満面の笑みを浮かべた。


「だが、何で分かったんだ?」


「ん〜なんとなくだけど。右目を隠してはいても、微かに見える神秘的な瞳と雰囲気かな?」


「そうか。だがそれだけじゃねぇよな?」


 そう言われリッツは頷き、


「はい。異世界に関する本などを読んでいたので、タツキを見た時にもしかしたらって思いました」


「そういう事か」


「だけど……。誰が何の為に、タツキを召喚したんですか?」


「すまない。その事に関してはまだ言えねぇ」


「そうなんですね。分かりました。言えないという事は……そうなると、異世界人だって事も他の人に知られたらまずいんですよね?」


「ああ。出来れば知られないようにしたい」


「じゃ服装やアクセとか、この世界の物を身につけてみるのはどうかな」


「なるほど、それはいい考えかもな。だが今は手もとにねぇ」


「ん〜僕が持っている物で、一時しのぎになるかな?」


「それは助かるが、いいのか?」


「大丈夫です。ただ合う物があるかですが」


 そう言うとリッツは席を立ち、自分の荷物が置いてあるベットの方へと向かった。


 そしてタツキも席を立ち、リッツの後を追った。

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