第45話35.オットー兵団22

「「「ヒャッハー!オブツは消毒だー!」」」

未だ眠るアルカンターラ軍の兵舎を急襲できたのは幸運だった。

敵側は全く対応できなかった。

問題は手元が暗すぎて兵舎の制圧に時間が掛かった事だ。

今は朝日が射して町の中心の小高い丘の上の建物が照らされる。

我々の攻略目標であるアルカンターラ領主の屋敷だ。

血で染まった敵の指揮官室で帝国の書類を読む…。

流石帝国、家具も内装も豪華だ。

モヒカンが入ってくる。

「屯所内の残敵掃討完了しました。現在、城塞上の回廊での戦闘に移行しました。残りの各へ団、怪我人を治療中。」

「了解した…。重傷者は居るか?」(コーホー・コーホー)

「宝石の補充が有ったので、居ません。」

派手に宝石を消費しているらしい。

「そうか…。一度、死んだ奴はココの守備と略奪にあたれ。城塞制圧部隊にはポケットの重いヤツを応援を送ってやれ。残りは広場で整列させろ。」(コーホー・コーホー)

「ヒャッハー!」

モヒカンが下がる、書類からこの様な屯所が未だ二つ有るらしい…。

ココは騎兵の屯所で一番大きな騎兵駐屯地で今は騎兵家主が遠征中で空に近い。

城壁の守備隊が使用中で現在も殲滅中だ。

馬房は空に近い…。

全く無い訳ではないが騎兵用の馬は空だ。

雑役で連絡や馬車を牽く程度は残っている様子だ。

書類類を重厚な机ごと収納する。

序に酒と辞書が詰まったキャビネット敵指令官私物も収納する。

もう、部屋の中の備品を全て収納だ!!

伽藍洞に成った血糊の部屋を出る。

死体は既に片付けた。

馬場に出るともう既に整列したモヒカン軍団の前に立つ。

俺のやる事は兵の士気を高める為に一席ぶっこむ事だ。

マスクを外す。

「諸君、ごらんのとぉ↑ーり。お宝は籠の中だ。ココは帝国でも有数の大貴族の都で”アルカンターラ”という町だ。多くのお宝が俺達を待っている。残念だが今ここの領主は不在と思われる。しかし、親族縁者は捕獲したい。貴族の娘っ子攫う時は留意せよ。警備の兵は少ないが抵抗は激しい事が予想される。」

「「「ヒャッハー!!」」オブツは消毒だー!」

「よろしい、残念だが今日、早くも死んだ奴はココを防衛しろ。への3と8は東の城門と周囲を制圧しろ!への12と14は西方、商業地域の制圧、食糧庫が有るはずだ!抜かるな。残りは俺に続け!!領主の屋敷を制圧する!」

「「「ヒャッハー!!」」女騎士は任せろー!!」

モヒカン達の鼻息が荒くなる。

良いぞ、この都から年頃の娘っ子マブいちゃんねーは居なくなるだろう…。

帝国の人口ピラミッドに深刻なダーメジを与える事が出来る。

俺の息子が又、侵攻収穫する頃には元に戻っているハズだ。

「諸君等は素早く制圧して、手早くお宝を奪う事だ…。そして、マブいちゃんねーをおっぴく事に留意せよ!」

「「「ヒャッハー!!」」お宝ざんまい。」

良い返事だ、マスクを装着して大ハンマーを掲げる。

「では突撃だ!!」(コーホー・コーホー)

「「「ヒャッハー!」」」


都の大通りを進むお上りさんヒャッハー!軍団。

周囲の家からは朝の炊飯の煙が…。

木と土で出来て、庭が無い家が多い。

あまり金と無縁そうな建物だ。

共同井戸に集まる男や女達の姿から…。

どうやら、小さな工房や職人の住居が集まった区画の様子だ。

「ヒャッハー、ご領主様。仕事(略奪)に掛かりますか?」

少し悩む、ココはいわゆる下町だ。

貧民街…と言うほど酷くない。

「いや…。ココは後の連中に任せよう…。」(コーホー・コーホー)

帝国の下層民だ。

マブいちゃんねーは居るだろう。

だが我々の目的はこの先のお宝が狙いだ。

不思議そうに眺める帝国カーストの下層民を無視してモヒカン達は進む。

包囲されているのは知っているのだろうが、我々が敵だとは思わないのか…。

いや、下層民だからこそ、貴族のやる戦争なんて異世界の話なのだろう。

翔ちゃんの世界では…。

上級国民と下級…。そして、原住民大家が居るだけだ。

原住民大家は昔からその地で、宗教氏子農政水路で団結して、自治会という現地組織を支配して地域のライフラインを掌握している。

下級国民に住居を供給して、家賃を取り、地域の行政官吏を支援して。

主にゴミ回収と行政への陳情、宗教のお祭りを支配して居るのだ。

翔ちゃんも家賃を払っている立場の労働者社畜だった…。

その知識が有るから、この世界の支配者階級に立った責務と意味が有るのだ。

俺は領主大家として領民社畜に…。

労働者に住宅と嫁を用意して、将来、社会を構築する子供達に教育を与えなければならない。

宗教と教育で社畜を作るのだ。

専門知識を持った労働者は高度なライフラインを構築する為に必要な要素だ。

強力な国家を作るために…。

街道の終点は広い広場と高い城の門の前だ、広場の横に水が流れる長い石のマスが…。

水量は豊富で溢れている。

まるで小川の様だ、恐らく多くの騎兵が集合できる広場、領主が軍事的な式典を行う場なのかもしれない。

恐らく元は丘の上に作られた城。

領主の屋敷の門は閉じられ、脇には兵の詰め所がある。

塀は高く門扉は頑丈で正に城に近い構造だ。

城を運営するには多くの人手と物資が必要だ。

その資源は目の前にある…。

そう、奪うだけだ。

「”貴様ら何者だ!!”」

数名の兵が門の前に出てきた。

下級民もこの騒ぎを聞きつけ、不思議そうに集まって来た。

お祭りか何かだと思ってやがる。

「”俺はロジーナ王国、ビゴーニュ辺境伯だ!!いい天気だな、身包み剥いでやる覚悟しろ!”」(コーホー・コーホー・プッシュー)

観客が居るならば名乗らなければならない。

持っていた魔法の大ハンマーを大地に立て、休めの姿勢だ。

収納から…。ココは30キロ程度の玄武岩にしよう。

「”な、何を言ってるんだ!!”」

「魔法で門を破壊する!攻撃の後に総員突撃!!お宝を分捕れ!!」(コーホー・コーホー)

「「「ヒャッハー!」」」

距離が近いので魔力チューブは短い。

前方の空気を圧縮して、チューブを構築。

短い加速距離で音速マッハ3越えを目指す。

「”曲者だ!”」「”出会え、出会え!”」

「吹き飛べ!アルカンターラ!!」(コーホー・コーホー)

開放した圧縮空気は衝撃波と共に岩を加速した。

音速を超えた岩は幾つかに割れたが概ね門扉に命中して門を貫いた。

城兵を粉砕して。

門は未だ閉じたままだが、幾つか貫通している。

血の海だ。

おう、意外と頑丈だな…。

もう一回行っとく?

悩んでいると。

「「「「ヒャッハー!!」」」お宝だー!!」

モヒカンが突撃して門を破壊マスターキーでノックし始めた。

そんな装備で…。

「ヒャッハー!!俺達の伝説の始まりだ!」

大斧で破口を広げて人が通れる穴を作ると数人が先行して内部を確保。

「オブツは消毒だー!ここは俺に任せて早く門を開けろ!!」「ヒャッハー!任せろ兄弟!!」

内部では戦闘が行われている様子だ。

穴からモヒカンの侵入は続いている。

内側の閂を外したのか、門が動いた。

流石訓練されたヒャッハーだ。

開き始め、人が通れるほど開いた、未だ門の向こうでは数人の敵兵との戦闘が始まっている。

「仲間を助けろ!!」(コーホー・コーホー)

「「「ヒャッハー!!」」」

モヒカンが開く、雪崩の様にモヒカンが門を潜る。

振り返ると東の方の町で火の手が上がっている。

遠くに笛の音が音が聞こえる。

我々が攻め込んでいるのだ。

「市街戦か…。楽しい時間だな。」(コーホー・コーホー)

一人で呟く。

俺はストラポルタでは10年前にこの光景を防ぐため死力を尽くして戦ったのだ。

今は俺に取っての勝利の光景だ。

「敵の領主の居城だ!全てを持ち帰る!!」(コーホー・コーホー・プッシュー)

「「「ヒャッハー!」」オブツは消毒だー!!」

そうだ、お宝を持ち帰ってこそ完全な勝利なのだ。


翔ちゃん、帰るまでが戦争だ!!

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る