第9話1.故郷3


(´・ω・`)…。(いきなり本編。)続き頑張って書いてます…。


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決まっていた事だが軍を退役した…。

方々に挨拶の手紙を書き、不機嫌な国王と陽気な王太子との受領式も恙なく終わった。

理由は、国王は来月退位する。

ギリギリでの受領式だった。

国王は俺に領地を渡すのを最後まで嫌がっていた…。

ドラゴンの革の約束は有効なので国王が嫌がっても覆る事は無い。

もう既に国宝のドラゴンの鎧は出来上がっている。

宮廷内の噂では国王は俺が反乱を起こすと思っている…。

娘を二人も嫁に貰ったのに…心外だ…。

らぶらぶちゅっちゅっで孫も沢山作ってやったのに。

俺の子供達全員が三日に一度は王宮に登り、王太子の姫と王子の遊び相手に成っている。

フランとクリザンヌが引率だ。(+ジェーン)

子供達が遊ぶ王宮の庭キンダーガーデンで王太子妃の話し相手もしている。

偶に国王も加わるらしい。

俺の話が出ると機嫌が悪く成るそうだ。

無論フランは怒る。

アヘったクリザンヌ(暗黒落ちEND)とメイド(騎士)のジェーン(調教済み)が国王を窘める。

お陰で会った事も無い国王から随分とヘイトを貯め込んでいる状態だ…。

その為に俺の領地の受領は国王にとって何時かは行わなければ成らないが、一番優先度が低い物に変ったのだ…。

受領式で始めて会った次期国王のとんぬらは随分と…。

喜んでいた。

俺が長い冬で疲弊した王国西方地域を立て直すと疑っていない様子だ。

楽観的な考えだ。

ゲームの通りの性格だ。

ゲームのように夫婦仲は良いのか心不全老メイドメガネとは王宮で顔を合わせたことが無い。

三人目が生まれて忙しいのだ。

王宮に登っている子供クロー達から聞いている。

取り合えず、俺は領地を受領して、ビゴーニュ辺境伯に成った。

無論、未だも無い領地なので名前負けだが、俺は対帝国の防壁になる役目だ。

その為、準備に方々に忙しい。


ついに、懐かしの故郷に戻って来た。

一往、親父ハイデッカー領主にも挨拶が必要なのだ。

屋敷生家の門を潜ると、並ぶ兵の顔…見覚えの有る者ばかりだ。

皆、緊張だ、張りつめている。

玄関馬車ロータリー親父領主の出迎えが在った。

退役中佐とハイデッカー公爵軍司令の紋章を身につけている。

公式の正装だ…。

「ようこそ、我が家へ。ビゴーニュ辺境伯殿。」

敬礼するので返礼する。

俺は国軍将校の制服に退役大佐の階級章だ。

親父は苦々しい顔と笑顔が混じった顔で握手を求めた。

父上ハイデッカー公爵もご健在で何よりでございます。」

父子で硬い握手を行う。

「まさか軍に行った息子全てに階級を抜かされるとは思わなかった…。」

ハイデッカー公爵軍司令中佐の感想だ。

清々しい悔しさだな。

全て軍務による戦果いろいろやらかした結果でございます。」

「素晴らしいな…。俺もそうで有りたかった。我が家へどうぞ。」

他人の家の様に勧める親父。

「うむ、ご無礼する。」

進む親父の後に続く。

勝手知ったる実家だ。

「うんうん、よくやった。兄弟で王国の国土を守ったのだ、我が開祖アルフレート様から続くハイデッカー家が王国の剣で有る事を内外に示した。フランクも中将だ、こんなにめでたい事は無い。」

執事がドアを開けた、応接室に通される。

「はっ、兄上中将殿は未だ軍に残る心算でしょうか?」

「ああ、国軍が楽しいらしい…。いい加減に戻って隠居させてほしいが。帰郷した折に聞かれた…”父上、あと何年身体が動くのだ?”だと!?未だ数年は国軍に居たいそうだ。」

客席を勧められるので座る。

「なるほど…。ソレは仕方が在りませんね…。」

「うむ、お前オットーが先に魔法使いとして大成退役するとは思わなかった…。」

メイド長がお茶を用意している…。

相変わらず無骨なティーセットだ。

嘗ての魔法学園の貴族寮の方が華美に見える。

「ええ、俺は軍人としてはイマイチでしたが…。兄上の様な理解者が居なければ早々に退役していたでしょう。」

だが、軍ではもう用無しだ、帝国と戦う事は俺の世代では起きない。

お茶を受け取る。

俺の国軍軍人としての評価は戦闘指揮官と言うより、学者としての評価が高い。

鳴り物入りの魔法士官(教授)だった為だ。

無論、武勇に対しての評価は在った。

しかし、軍務中に業務日報や戦闘報告書を必ず書いた為、”只の書類魔だ”と影で言われた。

退役までに”平時での戦争準備”や、”士官の資質と兵の役割”等のレポートを大量に書いた。

賛否両論あったが、議論は盛んに行われた。

次世代未来の戦争の為だ…。

その印象が強いため、軍上層部は俺を指揮官では無く軍学者と思われている節が多い。

兄上は今は現場を離れ、軍学校の校長職に付いて後進の教育、戦略や戦術を研究させている。

俺の計画復讐は、帝国の侵攻で全てご破算になったが、”国土防衛基本計画書”は王国軍に影響を及ぼした。

王国軍の首脳部は”平時でも軍事研究を行う部門が必要”と言う認識に成っている。

学術に基いた数学としての戦争論だ。

その為に兄上が軍学校で有能な士官将校団を育てている。

恐らく、プロイセン参謀本部の様なモノが完成するまでやる気だ。

兄上は納得する物が出来るまで軍に残る心算だ…。

「聞けば家に帰るのも遅いという…。結婚したのだから、早く孫の顔を見たいのだが…。」

兄上は結婚した…。

新婚なのに軍務に没頭するのは兄上らしい…。

「軍学校は…。しばらくすれば落ち着くはずです…。」

そうならば引退だ。

「ふむ…全くだ、せっかく孫が多いのに…。成長を楽しめないのは張り合いがない。」

落胆する領主に抗議をする。

「ソレは…。父上がもっと王都に…。」

なお、外孫俺の子は王都に沢山いる…。

外孫で王宮に行かないと会えないが…。

「孫の成長と言うのは…、その過程に置いて責任を取らなくても良いと言う。楽しさがある。」

随分と砕けるぶっちゃける父上…。

父親と言う重圧から逃れた気安さにイラッとする…。

こっちは、子育てと子供たちの成長で日々悩んでいるんだぞ!(子沢山)

「孫はもっと増えるのでご安心ください。」

絶賛製造中だ…。

「そうか…ソレは楽しみだ…。さて。挨拶はここまでにして実務の話をしよう…。」

「はい、入植者を募集しております。後、数年間は、家畜と麦、豆を購入したい。」

書類を渡す…。

「ふむ…。来年、再来年は約束できるが…。その先は解らんな。」

商談モードの親父。

「別に構いません、我々の入植が計画通りに行けば再来年以降は自活できます。」

「ほう、凄いな。」

驚く親父…。

普通、開拓地は10年は収獲が安定しない。

蝗害や、魔物の大発生が起きるのが普通だ…。

「しかし、計画ですからどうなるか判りません。ですので、この様に方々の御領主に頼んで廻っております。」

仰々しく頭を下げる。(光る額)

「ふむ…。まあ。良いだろう…。再来年までは、この額でこの量を売ってやろう。後は解らんぞ?」

今は何処も麦がダブついている…。

俺のご祝儀価格だ。

父上は顔色を変えない。

損はない金額だからだ…。

「俺としては…いつ凶作が起きるとも解らん、相場に任せるより最低価格と確保できる量を先に決めておきたい。」

偉そうに頭を下げる。

「ふむ…。」

強気の親父。

何かを考える仕草だ、余裕を見せる。

昨今のハイデッカー領の穀物生産は鰻登りだ。

いち早く、化学肥料の使用と北の炭鉱の町への食料供給による現金化。

更に広大な牧草地で大量の家畜の育養を扱う様になり。

いまや殆どの農家に塔型サイレージサイロが備わり、牛や馬…プラウを持って農耕馬による広大な耕筰を可能にしている…。

農夫に体力が有り、短期間なら二毛作も可能だろう。(連作害があるので…。)

その為、家畜フンの肥料化施設や大型サイロ。

各種農機ベルトコンベアー等の売り込みで我が北の商会が大変に潤っている…。

放牧だけが頼りの畜産なんて冬が長く成れば全滅だ…。

ソレは判っている。

解っているのでハイデッカーの農家の方々からキムさんの商家への信頼は厚い。

新製品を見せると5件に1件は買ってしまう位だ…。

化学肥料に気を良くしたハイデッカーの農民達はサイレージサイロと堆肥化施設等の農業設備を何の疑いも無く買ってしまっていた…。(大金)

ハイデッカー領内の農家の殆どが俺の商家に借金をしているのだ…。(棒)

「コレから北方でも開拓が活発になります。その為、相場が流動的になります。」

その為、ハイデッカー領内の生産量と懐事情は完全に把握している。

コレから麦は安くなるのだ…。

既に安い麦が南方から王都に届いている…。

王都の物価は統制価格だ、北方の農家から見れば安い。

南方の商人から見れば損は無い金額だ。

麦が行渡れば統制価格は解除される。

南の商人はより高く売れる北を目指すだろう…。

そうなれば競争だ。

暴動が起きないのは皆が飯を喰えているからだ。

だから親父!俺が高い金額で麦を買ってやる!!

「ふむ…。仕方がないな…。五年間だけ、お前の言い値で売ってやろう。」

親父が根を上げた。

頭を下げる。

「ありがとうございます。」

ふう、良かった。

一息つく。

冷や汗が引く。

必要食料の一部が数年間、固定費に成った。

コレでハイデッカー農家の殆どは減価償却が終わる…。

生産装置の減価償却が終われば減価坊無双異次元チートだ…。

生存者利益で何処までも…。

安い外国製品にも勝てるだろう…。

「後は…、お前の領地への入植者だが…。」

言葉を濁す親父…。

「俺は、領民に人気が無いので余り期待していない。」

俺もぶっちゃける。

「そうか…。一往は領内に募集を掛ける。」

長い冬でハイデッカー領の殆どが大規模農業化している。

魔物の出現が何故か少なく成ったのが遠因だ…。

広い農地を兄弟で開拓して一家族で数世帯が集団農業を営む。

数十人で一家を名乗る様な大家族主義に変貌した。

数世代は開拓できる森林が在る。

その為、次男三男が独立する事は無い。(働く子供部屋おじさん)

ハイデッカー領からの入植者は難しい状況だ。

「ありがとうございます…。強制は致しません。希望者に便宜を計って頂ければけっこうです。」

農業の機械化が進んでいないのが実情だ、人海戦術に成っている。

異世界コンバイン・チートは未だ速い…。

「ふむ…。そうだな。希望者の意に沿うように心がけよう。」

よっし!!現領主の言質ゲット!!

コレで、ハイデッカー領から特殊な技能を持った移民を後から兄上がイチャモン付けられなくなる。

「ありがとうございます、受け入れた領民は我が配下として迎え入れる様に取り計らいます。」

書類に目を通しサインする親父…。

「ふむ…。こんな所かな?」

俺は受け取り確認してサインする。

商談成立だ。

「ですな…。領主と言う者は肩がこりますね。父上。」

「ああ、そうだな。お前が領地を貰うのが夢だと聞いた時は何を考えて居るのか解らなかったが…。」

領主に成ってハーレムEND、これゲームの常識。

「若い頃…。子供の夢です。物語に夢見る。何も知らない無垢な心です。ソレを得るには代償が必要でした…。多くの戦友を失いました。」

俺の生際がその証拠だっ!!(光る…。)

「そうか…。では、父として、いや。先人領主としての心得を教えよう…。領主は孤独だ。」

「はあ…?」

「今は解らなくても良い。孤独がお前をどのように変えるのか…。孤独と向き合え。ただ、それだけだ。」

解った様な事を諦めた顔で言う父上。

父子の話し合いは終わった。

正面玄関で別れの挨拶をして…。

この故郷とは縁が切れた。

頭を下げる見知った顔達とは全て他人になったのだ。

馬車に乗る。

窓から手を振るが誰も目を合わせない。

俺は生まれた時から孤独だった。

翔ちゃんという、エア友が居なければゲームの様な虚栄に捕らわれ、貴族の滓の様な何も出来ない者に成っていただろう。

あのゲームのオットー三男だ。

貴族の孤独。

士官の孤独。

中間管理職の孤独。

経営者の孤独。

社会の孤独。

オタクの孤独…は自業自得だな。

人間を数限りないカテゴライズをする限り孤独は存在するのだ。

精神科医は喜んで病名を付けるだろう…。

その内、名称が足りなくなって、火サスかラノベのタイトル並みに長くなるハズだ。

馬車は北の炭鉱の町へ進む。

珍しく、遊び人のキムさんでなく、ビゴーニュ辺境伯としての入城だ。

隠居した、代官代理に会う為だ。

司祭とも挨拶をする必要がある。

入植者を募る為だ。

教会には人材が揃っている。

俺が金を掛けた結果だ。

若い職人が育って居るのだ…。

是非、我が領土に誘いたい。

窓の外を見る。

見慣れた…。

いや、久しぶりの森だ。

特徴を見極める。

「ソコの、小道を進め。右だ。」

御者に指示を出す。

荒れた小道を進む馬車。

突然、森が開け、農地と粗末な一軒家が見えた。

何も変わっていない。

心が躍る。

記憶を取り戻した。

先導の騎兵が警戒して密集隊形を取る…。

何をやっているんだ…。

こんな所で。

「止めろ。」

「はっ!」

馬車が止まる…。

騎兵が警戒する。

「おう、下がれ。」

馬車のダァー☆が開くのも、もどかしく叫ぶ。

「タッポ!新しい森を貰った。猟に出るぞ!」

青春の…、子供の頃の一ページだ。

粗末な家から出てきたのは…在りし日のタッポそのままだ。

「オットー様…。」

少々、歳を取っている。

俺もだ。(光る額…。)

「タッポ。やっと国王から領地を分捕った。俺の森だ。腕の良い猟師が必要だ。森を切り開いて獲物を狩ろう。誰にも…。」

走り寄る俺に…。

家のダァー☆の隙間から若い妊婦と幼い子が覗いていた。

「タッポ、所帯をもったのか?」

「はい、オットー様。」

「ああ、オットーでよい。」

「いえ…。あの…。」

絶句が全てを物語る…。

深い一呼吸で…。

全て理解した。

「タッポ。俺は腕の良い猟師を求めている。俺の領地に来ないか?」

襟を正し、冷たい声で言う。

しかし、鼻の奥は辛い。

「あの…。オットー様。わたくしは猟師頭になりました。配下の猟師もおります。森を出る事ができません。」

そうか…お互い出世し過ぎたな…。

不安そうな細君を見る。

「うむ、ソレは目出度い。解った、タッポ。何か有れば俺を頼って良い。」

お断りされた…!!

翔ちゃんでも…。

凄いお断りされて居たのでこの程度!

たかがメインカメラがやられただけだ!!

「はい、オットー様。」

しかし、心残りが在る。

肝心な猟師の手配を期待しきっていた…。

「あー、タッポ。申し訳ないが、お前の子でも弟子でも良い。腕の良い猟師を寄越してくれ。」

脳内収納リストを眺める…。

あ、肥やしに成ってる、焼き入れ焼き鈍し済みの投げナイフが在った。

収納から20本出して渡す。

「コレを持って我が屋敷に馳せ参じれば、俺が取り立てよう…。」

受取るタッポ、男泣きだ。

「オットー様申し訳ございません。」

「なに、お互いもう既に旗を挙げたのだ。身が重いのは仕方がない。友情は未だ健在だ。何か有れば必ず駆け付けよう。相棒。」

涙顔のタッポ。

男が泣くな。

俺も泣かない。(ズッビッ)

「はい。相棒。」

ダーァ☆の影に隠れる妊婦と幼児に挨拶をする。

「奥方、申し訳なかった。」

頭を下げる(光る…。)

そのまま、馬車に向かう。

乗り込む前にタッポに叫ぶ。

「良い猟師を頼むぞ!」

「はい、オットー様!!」

コレで終わりだ…。

俺の故郷は無く成ったのだ。

領主は孤独なのだ。

解っている。

知っているぞ。

だが、頭が…、状況が咄嗟に判断が出来るのは…。


人世経験とチートが必要だ。


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(´・ω・`)ふう…。(猟期が終わるころまで番外編で引っ張る心算だったのに…。)

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