幼馴染のメアリー
「ライトニングアロー!」
開始宣言が来るや否やメアリーの手から放たれた雷の矢。
セーラがソレを見てから回避、ぎりぎりのところをすり抜ける雷撃に
すると魔導の矢が方向を変え今度はメアリーの方に突き進んでいく。
「エアロシールドッ!」
自分で放った矢がまさか自分に返ってくるとは思わなかったのだろう。
かなり慌てた様子で反応したメアリーだがぎりぎりで展開された風の盾は雷の矢と相打ちする形で消失する。
術式が崩壊し砕けるように消えたシールドの先、先ほどいたはずの場所を見やるメアリー。
残念、そこにはもういないんだな。
「これでワンキル」
メアリーの背後、耳元で
そのまま背後に蹴りを入れてきたメアリーの足をつかんだセーラは力いっぱいメアリーを放り投げた。
宙を舞ったメアリーはそのまま姿勢をきれいに切り替えて地面に着地する。
こちらは軽くステップを踏むと姿勢を立て直した。
指輪の機能なのか融合の副効果なのかどっちかわからんけど、ステップした足元にアニメ的な星が舞い散り消える。
「やるわね、メアリーちゃん」
そういってセーラが流星祭剣を振るとその先からも小さな星が舞い散り消えていった。
一瞬の間、その後会場に大きな歓声が響いた。
そんな中、実況開設席に座るアカリとケインズさんの声が魔導で作られたスピーカーから聞こえる。
アカリだけじゃなくて元冒険者で沙羅がお世話になってるケインズさんも実況みたいね。
「これはすごい、最初から両者激戦です。戦闘解説のケインズさん、今の戦いどう見ましたか」
「いやぁ、大したものだ。まずもって魔導返しをするスキル自体はいくつかあるがあんな形で剣ではじき返す奴はあることはあるが珍しい。それにもましてアレは瞬歩か、俺でも見切れなかったあの動き、メアリーは良く蹴りを返したな」
「元Bランク冒険者で見切れないってどんだけだよ」
「あの水準は結構いるぞ。ただ魔導士で対応できる奴はまず見ないな」
「そりゃそうです。本来魔導士の適職は技官か文官です。前線に出るのは戦闘職の仕事ですから」
魔導の開祖であるシャルのことを完全に横に置いたアカリの言葉。
それに頷いたケインズさんが言葉を続ける。
「それにしてもあれだけの強さがあって、なんでメアリーは負けたんだ」
そう、メアリーは一昨日に一回敗北し、現在七連戦を再度やり直している。
じりじりとメアリーが間合いを動かす間にも実況二人の解説が続いていく。
「相手が悪かったのもありますけどね。ここ数日見てた感じだと魔導でいうと深度一しか使ってないんですよ、あの子」
「ほう、そういえばあの体さばきも冒険者のタレントに似てるっちゃ似てるな」
「体術系でしたっけ」
「そうだ。タレントは系統ごとに分かれるからな。たしか緊急脱出系でああいうのがあったな。あのメアリー、もしかしたら初期ランクの冒険者のタレントなら何でも使えるってスキルかもしれねぇな」
「なるほど。平均的幼馴染って本人言ってますしそういうスキルなのかもしれませんね」
幼馴染万能論だわね、そりゃ。
だとするなら随分古くて懐かしいアーキタイプだけど、たぶんちょっと違うね。
今日の旧闘技場は満員御礼、マーマンたちも大忙しだ。
『優、なんであいつらまで呼んだ』
必要だと思ったからね。
ふと視線をめぐらすと小さい女の子を膝に乗せた貴族のおっさんがいた。
興奮する娘さん相手に困ったような反応をしているのがほほえましいね。
『ジャクサニアソンや、お前ほんま人と名前覚えんな。それとあれでよかったんか』
多分ね。
あのおっさんは地下闘技にかなり執心してたのもあって何人かに声をかけてクーデターまで計画してた。
なのでとりあえず、計画に乗った奴らは全員神殿に強制集合。
トマスさん合意のもと合法的に神の名のもとに説教を行った。
『水に沈めるのは説教やなくて拷問やとおもうで』
しゃーないじゃない。
あの類は体で覚えんと納得せんからね。
利得で説得出来てる連中は入ってないわけだし。
連中が起こしてた計画で一番問題だったのはリーシャに対する誘拐計画。
普通に私が不愉快なのもあるけど今の怪異付きの覚醒リーシャに手を出して無事でいられるという確証はほぼない。
というかこの夢で死んだ場合、リアルの方で二度と目が覚めないんじゃないかな。
一応、そのまま奈落行きでもよかったんだけどトマスさんがセーラや私に頭下げてまで助命懇願してきた。
まぁ、あのおっさんの意見なんて私は参考にしかしてないんだけど、セーラが助けてあげてもいいんじゃないかしらとか言ってきたからね。
妹に免じて水死寸前で止めることにしたのさ。
ついでにそれぞれがオーナーになってたマーマンを妹転換し最後の日まで面倒を見ることを義務付けた。
そんな感じのことまで込みで訓練の合間を縫ってこの一週間で仕込んだから結構ぎりぎりだったのよ。
予想通り生きた血を受けて契約していたマーマン達は拍子抜けするほどあっさり妹転換に成功した。
そして新闘技場でチャンピオンだった最強のマーマン、サニアは安定のロリ妹化しあのおっさんの膝上で現在進行形できゃっきゃはしゃいでるわけだ。
『あれどうなるんやろうな』
さぁ、なるようになるでしょ。
こちらの目的としては選手として出場できるマーマンの数が減らせればいいわけだし。
ここらはアカリの提案だけど悪くない手だと思う。
おそらく『ママ』は不足する戦力の代わりに予想通りの手を打ってくるだろうしね。
『せやろな』
「二人とも戦闘に集中して」
ういよ。
さて、メアリーはいまだこちらをうかがっている。
次はどう仕掛けて来るかね。
そんな風に観察してるとすっと身をかがめたメアリーが飛び掛かってくると同時に高らかに宣言した。
「一衣帯水」
その両手の間に光る斬撃と化した水の筋をセーラの流星祭剣が受け止めた。
『神技!? んなばかなッ!』
二つの刃の間に水と星が飛びちる。
ひねりを入れて方向を変えたセーラがメアリーに追撃を入れるがメアリーが大きく間をとった。
静まり返る会場。
「「うっそだろっ、おいっ!」」
ハモって響いた実況二人の叫びが号令となって会場に怒号のような歓声が響いた。
レビィ、あれは何を驚いてるんかね。
『ありえんからや。王機由来の能力は連動はあっても両方が一人の上で同時に動作するのは難しいんや。冒険者のタレントは
あー、そりゃ無理だわ。
最悪命取られるか、それに見合うだけの代価がいる。
けどそうは見えないってか、なるほどねぇ。
こりゃ初手から難敵が来たものだわ。
ティリアを煽りすぎちゃったかもね。
「でも負ける気はしてないのでしょう」
もちろん。
私が夢見るこの作品はアメリカで流行したスペースロマンじゃない。
だからあそこにいるメアリーもメアリー・スーではなくて幼馴染のメアリーなのさ。
数回の打ち合いであっちの心の内側には大体共感したからね、大体わかった。
いくよ、セーラ。
「ええ」
「さぁ、楽しい夢もそろそろ終わりの時間よ。おいでメアリー」
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