元旦もくりすます

「元旦だー!」

「クリスマスですね」

「あけましておめでとうございます」

「メリークリスマス」

「やっぱりそれなのか……」

「年中クリスマスですから。クリスマスといえば夜明け、夜明けといえば初日の出」

「なんの繋がりだそれ」

「初日の出見に行きましょうよ初日の出」

「えっどこに」

「屋上です」

「あっこの? このアパートの屋上?」

「ええ」

「山とかじゃないんだ」

「やはり密は避けたいですからね」

「ちゃんとその辺りの配慮もあるんだ」

「当然でしょう。高性能なので」

「っていうか今初日の出出る時間?」

「違いますね」

「そこまで起きてるってこと?」

「寝たいのなら寝ていただいても構いませんよ」

「えっでも寝たら初日の出見られなくなるだろ」

「大丈夫」

「何が大丈夫なんだ」

「録画しておきます」

「録画!? 初日の出を!?」

「僕は高性能なので録画も高品質でできます」

「それはちょっと気になるけどさ……」

「けど?」

「やっぱり自分の目で見るのが一番いいんじゃないのか」

「ふーむ……」

 だが俺はそれからほどなくして寝落ちした。

 そして。

 しゃんしゃんしゃんという音で目を覚ます。

「今何時……って夕方~!」

「おはようございます」

「何だそれ、鈴?」

「鈴ですよ、クリスマスと言えば鈴」

「なんで今?」

「クリスマスを演出するためですよ。素敵でしょう」

「素敵かなー?」

「そんなことより初日の入りを見ましょうよ」

「初日の入り! なんか逆に年末感出る気がするけど……」

「嫌ですか」

「嫌ではないが」

「ないが?」

「まあ行こうか、屋上だろ?」

「ええ」



 屋上。当然のように誰もいない。

 遠くで日が沈もうとしている。

「うーん空気が澄んでる」

「そうですね」

「新年って感じするな……」

「そうでしょう」

「やっぱ見に来てよかったな、屋上だけど」

「ふふふ」

 しゃんしゃんしゃんとまた鈴を鳴らすくりすます。

「クリスマスなんだか正月なんだかわからんな……」

「何を言っているんですか、クリスマスですよ」

「それだけ聞いたらやばい人だよな……人じゃないけど……」

「くりすますです」

「知ってる知ってる」

 今年はクリスマスな一年になりそうだ。

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