第134話 情報網

 ウルルスはフェイの情報網で死体愛好家の情報を集めていた。不死の魔女が復活するとしたらその線が一番濃厚だからだ。死体愛好家にも自分で殺した死体を愛する者と単純に死体を性欲を向ける者とに分かれる。前者は人間狩りの報酬として、後者はただの性癖だ。両方が混在している場合もあるのだが……。

「ウルルスは死体愛好家をどう思うの?」

「許されない性癖だろ。死者への冒涜、悪趣味だと思おうがな、俺も少女愛好家だから気持ちは分からんでもないが」

「どういう事?」

「時間的制約かな、少女はいずれ大人になる。死体はいずれ腐る。似てるだろ?」

「でも、私は人が死ぬのが前提の死体愛好家の方が質が悪い気がするけど……」

「人はいずれ死ぬだろ。死んだ後も愛されるなんて果報者かもよ、相手は」

「私が死んでも愛してくれる?」

「墓参りなら月命日には欠かさずしてやるさ。その前にちゃんと子育ての準備もしてほしいかな」

「もう安定期なのだけど……」

「ああ、もうそんなに時間が経ったんだな。毎日が忙しくて曜日感覚も無くなりかけてたよ」

「私の言いたいこと分かる?」

「ああ、今夜は空けといてくれ。俺もすぐに帰れるように頑張るよ」

「やっと、抱いて貰える……」

「逆レイプの罰だと思って欲しいかな、俺としては」

「罰としては長すぎよ……」

 かなり大きくなったフェイのお腹を触る。手の平の向こうで自分の子が育っていると思うと不思議な気分になる。

「おっ、動いた……」

「そりゃ動くわよ。こんなに大きくなったら」

「俺は未だに父親の自覚が無いんだが……」

「母親は徐々に自覚していくけど男性は違うらしいわよ?」

「そうなのか……。ああ、死体愛好家と少女愛好家の違いが分かった気がする」

「死体は子供が作れない?」

「そうだ。死体愛好家と少女愛好家。どちらが無神経で無責任か知らんがな……」

「ウルルスは少なくても初潮がある子しか選ばないんだからどちらかと言うとマシな方じゃない?」

「そういうもんかねぇ……」

 父親は初潮が来ていない子も好きだったという話だから。ハッキリ言って自分がそうならない自信がない。これ以上嫁を増やす気はないのだが……。

「メルティアは……」

「まだ帰って来てないわよ、どんだけ引っ越しに時間かけてるんだか……」

「まあ、別棟が出来る頃には帰って来るだろ。時は金なり、カジノ王からの引継ぎでもあるんだろ」

「金持ちの事情は分かんないわね……」

「その金持ちが不死の魔女の死体を手に入れてない事を祈りたいね」

「不死の魔女の死体は腐らないの?」

「ピチピチだと思う。なんなら子供も作れるかもな」

「死体愛好家、垂涎の死体って訳ね」

「もっと細切れにしとけばいいんだろうけど、海の中で集まるだろうし」

「でも、心臓にはナイフが刺さっているんでしょ?」

「抜かれたら活動し始めるぞ……。だから主だった死体愛好家の情報が欲しい」

「そういう事ね……。不死の魔女が復活したら倒せる?」

「倒すしかないんだよ」

「活性魔法で後どのくらい若さを保てるの?」

「あと十五年くらいかな……。それでも勝てるのは五分五分だがな」

「私の全能力でウルルスを勝たせて見せるわ!」

「頼りにしてる。もう、めんどくさいから火山の火口にでも突き落とそうかな……」

「それで死ぬの?」

「死なんだろうな、不死とはそういうものだ……」

「悲しい存在ね」

「まあ、そうかもな……」

 愛する人が死んだとしても、あとを追う事が出来ない。親しい友人も必ず先に逝く。世界にたった一人の不死者。その孤独は想像もする事も出来ない。人間の心臓を狙うのは新鮮な心臓が一番美味いからかもしれない。心臓の味など知りたくも無いが、猟奇殺人者の考えを理解しろと言われても困るのだ、猟奇殺人者と職業殺人者は全く違うモノだ。本当は簡単に死ぬことの出来る一般人に八つ当たりしているだけかもしれない。



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