第115話 大暴れ
防犯性に優れた高めの宿で朝食を取る。朝食にあまり期待せていなかったが、カボチャのポタージュスープ。肉を挟んだ黒パン。新鮮なサラダに自家製ドレッシングが掛かっている。ウルルスは結構満足できたが、ロイは黒パンに難色を示した。多分旅の間に食べ飽きたんだろう。
「朝一にカジノで荒稼ぎするぞ」
「まだ稼ぐんですか? カジノ側が可哀想ですよ」
「大丈夫だ。あのカジノの金庫はかなり貯めこんでる。昨日の出費でも痛くもかゆくも無いさ」
「そうですか……」」
黒パンを一口に食べる。独特の酸味が口にひろがり唾液が出てくる。肉の肉汁と唾液が混ざり固いパンが程よく食べやすくなる。サラダとスープで口直して黒パンを食べ進める。
「偶には黒パンもいいな」
「食べ飽きましたよ……」
「肉が挟んであるだけマシだろ?」
黒パンを恨めしそうに見ているロイは旅が余程辛かったようだ。旅の中で料理できない奴は不幸だと思う。ウルルスはその足で次の町まで付いてしまうので旅の間の食事に困った事は無いが、野外料理も一応出来る。
「さっさと食え。時間は有限だぞ?」
「分かりました、師父」
少し涙目になりながら食事を胃に収まていくロイ。ロイは泣き顔が凄く似合うなと心の隅で思う。
「今日は何をやろうかな倍率の高い奴が良いんだけど……」
「昨日と同じくルーレットで良いんじゃないですか?」
「カジノ側も馬鹿じゃない、対策を打って来るさ」
「じゃあ、ブラックジャックとか……」
「金持ち相手の差しの勝負でもいいだけどな」
「それ、恨まれません?」
「めっちゃ、恨まれるな」
「標的はカジノにしましょうよ」
「バカラかポーカーにしとくか。くくく、カジノの金庫を空っぽにしてやるぜ」
「師父が悪い顔に……。でも、カッコいい……」
朝一でもカジノは開いていた。徹夜組が居るからだ。カジノでも食事は出来るが何を混ぜられるかわかったモノではない。酒も同様でカジノで食事をする人間の気が知れない。
「バカラにするか、ロイはポーカーな」
バカラはプレイヤーとバンカーどっちが勝つか当てるゲームだ。変則ブラックジャックとも言える。
「尻の毛までむしり取ってやる……」
「表現が卑猥です、師父」
カジノに入るとバニーガールが近づいてきた。昨日オーナーにならないかと声を掛けた子だ。
「おはようございます、お客様」
「おはよう」
「お客様の戯言も現実味を帯びてきましたね」
「このカジノの金庫を空っぽにしてやるよ」
「……。それでは私の仕事が無くなってしまいます」
「オーナーやれって言ってるじゃん」
「金庫の空っぽのカジノで何をしろと?」
「少しは金の融通してやるぞ?」
「私を金と言う鎖で繋ぎたいと?」
「まあ、そんなとこだ。さてと、今日も稼ぐかな」
「ご武運を」
その言葉に手をひらひらさせて二階に上がる。ロイは神妙な顔で着いて来る。
「これはティアさんに報告しないと、ですね」
「俺が従業員を増やすだけでも報告するのか?」
「傍で聞いてたら口説いてるようにしか聞こえませんでしたよ」
「そうか、それは気を付けよう」
ボーイに翠金貨三枚渡し、ロイは翠金貨一枚渡してバカラとポーカーの席に着く。金貨一枚分のチップを三百枚受け取り、バカラ担当のディーラに笑いかける。
「さあ、今日も行ってみようか!」
その宣言にディーラはこの世の終わりみたいな顔をしていたが、キチンと仕事はした。勿論ディーラは大負けしてウルルスはチップを十万枚に増やし、ロイは四千枚に増やした。
「さて、金庫が空っぽになるまであと何日持つかな?」
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